フィギュア?フェンシング?アクション映画?いえ、足技のボクシングです
【サバットが日本であまり知られていない理由】
連休さなかの4月30日、5月1日の両日、海外からも選手を招きサバットの交流大会および国際大会が行われた。
「サバット」と聞いてピンと来る人は、親仏家や格闘技好きを除いてあまりいないかもしれない。「ボックス・フランセーズ(フランス式ボクシング)」という正式名称の通り、フランス発祥の格闘技で、ヨーロッパを中心に人気がある。
特に本家フランスでは、「ボクシングをやっている」というと「フレンチ(フランス式)? ブリティッシュ(イギリス式=通常のボクシング)?」と必ず聞かれるほど浸透している。
日本での知名度が低い理由について、ジャパン・サバット・クラブ(JSC)の窪田隆一代表は「競技人口の少なさ」をあげる。
「JSCは国際サバット連盟に認可・認定されたアジア地域初のクラブですが、このクラブでの定期練習と、東京大学のスポーツ施設内で開催しているクラス以外、サバットに触れる機会がなかなかないのが現状です。国内の競技人口は数十名ほど。子どもから熟年世代まで幅広く楽しめる競技なので、ぜひチャレンジしていただきたいのですが」
【KOを狙うコンバ、華麗な技を競うアソー】
他の打撃系格闘技と一線を画すサバットの最大の特徴は、靴を履いて行うことと、足先での蹴り技がパンチより有効とされること。サバットが「足技のボクシング」と呼ばれるのはこのためだ。
「サバットの中にも、KOを狙うフルコンタクトの『コンバ』と、相手に大きなダメージを与えず技の正確さや華麗さを競う『アソー』の2種目があります。スネやヒザでの蹴りが禁止されているので、ピンと伸びた足技の応酬はダイナミックですし、回転技の連続には華やかさもあります。格闘技を見たことがない人も、打ちあいの面白さや技の華麗さを楽しめる競技だと思います」(窪田代表)
4月30日の交流大会で、私も初めてサバット・アソー種目の試合を観戦したが、まっすぐ伸び切った足で相手を突く様はフェンシングを、洗練された回転技はフィギュアスケートをそれぞれ想像させ、アクションシーンを見ているようなワクワク感もあった。
【世界選手権で活躍する日本人選手たち】
試合に出場した選手に話を聞いてみた。
フランス在住の41歳の女性は、子育てがひと段落した6年ほど前からサバットを始めたという。
「日本にいた時はサバットのことを全く知らず、フランスに移住して初めて『こんな競技があったのか』と。ヒジやスネが禁止なので距離感がとても難しいですが、ボクシングよりイメージ的に優しく、見ていても美しい。エクササイズ感覚で始めたのに、今ではかなりのめり込んでいます(笑)」
女子格闘家のルミナ・K(センチャイジム)はムエタイやキックと並行して、この競技を8年続けている。
「もともとアクションが好きだったことが、サバットを始めたきっかけです。回ったり飛んだり、私には無理そうだと思っていたけど、やってみたら意外に『できるぞ!』と(笑)。世界大会に行くと、国境を越えて会場がひとつになる。その一体感も魅力ですし、K-1などの格闘技を見た時に『あの選手、サバットの経験者だな』というのも分かってきて、観戦がより面白くなりますね」
9月にはクロアチアで、アソー種目の世界選手権が開催される。日本は競技人口こそ少ないものの、優勝はじめ上位入賞者を輩出しており、この大会でも活躍が期待される。
年齢や性別を問わず安全に楽しめ、勝負の緊張感も得られるサバット。今後、フィットネスジムのクラスに採り入れるなど普及が進めば、競技人口が急増する可能性も高いのではないだろうか。
◆7月にサバット・セミナー(特別編)開催予定
問合せ:ジャパン・サバット・クラブ
http://www.savatejapan.com/