見直しされる防衛大綱とは?
8月3日の内閣改造により就任した小野寺五典防衛相が、防衛大綱の見直しに着手することを明らかにしました。
就任にあたり、安倍総理から防衛大綱の見直し検討するよう指示を受けており、今後、防衛大綱の見直しに向けての動きが活発化するでしょう。
ところで、この見直しされる防衛大綱。聞いたことある方は多いと思いますが、その具体的な内容については、少々心許ない方もいらっしゃると思います。
中長期の防衛計画の指針
防衛大綱とは、正確には「防衛計画の大綱」と呼ばれるもので、防衛省では「我が国の防衛の基本方針・防衛力の意義や役割、自衛隊の具体的な体制・主要装備の整備目標の水準といった今後の防衛力の基本的指針」と説明しています。この防衛大綱は、公式な説明では概ね10年毎に見直す中長期的なものとしています。
ところが、防衛大綱の見直しについては、昭和51年(1976年)に閣議決定された「昭和52年度以降に係る防衛計画の大綱について(51大綱)」以降、平成7年(1995年)、平成16年(2004年)、平成22年(2010年)、平成25年(2013年)に大綱は見直されており、近年は数年ごとに見直すのが常態化しており、今回も前回の見直しから5年経たないでの見直しとなります。
防衛大綱は日本の防衛にあたってのビジョンを示す役割を持っており、平成22年の大綱(22大綱)では「動的防衛力」、平成25年の大綱(25大綱)では「統合機動防衛力」といった、防衛力整備の基本概念が示されています。その他にも、冷戦後初の見直しとなった平成8年(08大綱)では、大規模災害や国際平和協力といった分野での自衛隊の活用なども謳われており、いわば「自衛隊をどう使うのか?」といったビジョンの提示となっています。
防衛力の基本的指針を示す防衛大綱の下には、「中期防衛力整備計画(中期防)」と呼ばれる、中期的な部隊の整備計画や、防衛装備品の整備を定めたものがあります。これは5年毎の整備計画となっており、今後5年間での部隊の整備と、それに必要な装備の調達についての計画が示され、計画の実施に必要となる5年間の総額についても明示されています。こちらも5年計画とはなっているものの、大綱の見直し等により5年経たずに見直されることもありました。
今回なぜ見直し?
我が国の防衛にとっての重要な指針である防衛大綱ですが、なぜ今見直しされるのでしょうか。小野寺防衛相は記者会見で、安倍総理から「厳しさを増すわが国の安全保障環境を踏まえ、防衛力を強化し、国民の安全確保に万全を期すため、防衛大綱の見直しや次期中期防衛力整備計画の検討を行う」という指示を受けたと話しています。
「厳しさを増すわが国の安全保障環境」が原因のようですが、具体的にはなんでしょうか? 同様の表現は現行の25大綱が定められた時にも用いられていましたが、その際は北朝鮮と中国が念頭に置かれていました。小野寺防衛相の会見における次のやり取りを見ると、今回の見直しでは、北朝鮮を念頭に置いている節が窺えます(強調部編者)。
北朝鮮はアメリカ本土を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を急ピッチで進めており、ミサイルの性能・信頼性向上を伺わせる実験を繰り返しています。当の小野寺防衛相が、今年3月に自民党内の検討チームでとりまとめた「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言」でも、北朝鮮を念頭に置いたミサイル防衛力強化を提言しており、見直される防衛大綱では北朝鮮の核・ミサイルを強く意識したものになると思われます。