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アギーレ・ジャパン2連勝でアジア杯へ!

川端康生フリーライター

ドヤ顔こそしていなかったが、語り口はそんな感じだった。

「この試合の目的を果たすことができた。それは勝つこと、そしてサポーターが喜んで家路につけるようにすることだ」

9月、10月の4試合で結果が出なかったことにより吹いた“逆風”。

そんなアゲンストな雰囲気を打ち消すように発した「これまではテストだったが、11月の2試合では勝つことを目的とする」という“公約”を見事に遂行してみせたのだから、胸を張るくらいの権利はある。

「……これで喜んで家に帰れる。そして年末に集合し、タイトルを守る戦い(アジア杯)に臨むことになる。8月に来日したときからアジア杯は勝たなければならない戦いと言ってきた。いまも私も選手もそう思っている」

アギーレ監督の自信に満ちた言葉で、2014年の日本代表は締めくくられた。

ザック回帰か?

その11月シリーズの2連戦。メンバー的にはザッケローニ監督時代に戻った。

ホンジュラス戦は、武藤以外の10人がブラジル・ワールドカップ組。それもほとんどが6月のスタメンそのままだった。

オーストラリア戦も、そのホンジュラス戦のスタメン10人がそのままラインナップに並んだ。負傷の内田に代わり、太田が入っただけである。実質的に固定メンバーで臨んだと言っていい。

このメンバーが「ザッケローニ時代に戻った」と物議を醸しているようだが、僕自身はさほど違和感はない。ワールドカップとアジア杯のスケジュールを考えれば、しかもそれなりの結果を残したければ、「ワールドカップメンバー」主体になるのは当然のことだ。

また「ベテラン回帰」についても、アギーレ監督が最近しばしば口にするように「年齢で選んでいるわけではない。必要な選手を選んでいるだけだ」を支持できる。

もちろん(たとえば遠藤は次のワールドカップ時には38歳になっているわけで)どこかのタイミングで世代交代は必要だが、この時点で無理に入れ換える必要はない。やはりアジア杯で「それなりの結果」を望むのならなおさらである。

そして、そんなメンバーが顔を揃えたホンジュラス戦では、繰り広げられるサッカーもやはりザッケローニ時代のようだった。テンポよくパスが回るサッカーである。

システムは変わったが、やはり遠藤と長谷部を中心にしてボールが落ち着き、パスが展開されていった。

もちろんホンジュラスが力不足だったことは差し引かなければならない。攻め切る力も、日本のミスを生かす力も欠けていた。だからこその6対0ではあった。

それでも、この顔ぶれが並べばこういうサッカーがすぐにできて、この相手にならこれくらいチャンスが作れる――日本サッカーが積み上げてきたものを感じさせる試合だった。

4-3-3か、4-2-3-1か

オーストラリア戦は、前半苦しんだ。空中戦で押し込まれるのは見慣れているが、オーストラリアにあれほどボールを回されて苦しめられたのは初めてではないか。

試合前には、放り込まれた後のセカンドボールをアンカーである長谷部がどれだけ拾えるか、あるいは両CBとともにどれだけ弾き返せるか……というイメージを浮かべていたのだが、現実には長谷部の周りのスペースをパスで使われて劣勢を強いられた。

逆三角形の中盤にできるスペース(つまり長谷部の左右)をどうカバーするか。

日本代表は本田と武藤がその役割を担っていたが、オーストラリアのサイドバックも含めた流動的な攻撃に後手を踏むことになってしまった。

そんな中で行なわれたのがシステム変更である。キックオフから35分くらいが過ぎた頃だった。

4-3-3から4-2-3-1へ。要するにDFラインの前=中盤の底で一人では対応しきれずにいた長谷部の横に、遠藤を下げて、2ボランチにしたのだ。

当然のことながら、これで随分落ち着いた。それどころか変更したシステムのままスタートした後半は、前半とはまったく別の展開に。圧倒的に日本がポゼッションを高め、パスワークで相手を圧倒し、2得点を挙げてしまったのである。

となると関心事は次のステップへと移る。

つまり、4-3-3より4-2-3-1の方が、ディフェンスはもちろん、アタック的に日本に合っているのではないか。

そうなると、メンバー的にも、システム的にも、ザッケローニ時代に完全に戻るということになり……。

もちとん相手にもよる話ではあるが、このオーストラリア戦を経て、アギーレ監督がどう判断するか。気になるのはそこである。

本田! 武藤! 岡崎!

最後に選手について。特に本田の充実ぶりに触れないわけにはいかない。

もともと図抜けていたキープ力とシュート力に加え、スプリント力が格段に上がっている。しかも90分間を通じて運動量が落ちないフィットネスも備えている。

精神的も肉体的にも技術的にも尋常ではないレベルに達していて、惚れ惚れしてしまった。日本代表のダイナモであり、トップガン。存在感は大きい。

そして武藤。体幹の強さとアジリティの高さ。スピードはもちろんだが、倒れない。闘えるスピリッツも持っている。

すでに王様である本田と、フレッシュマンな武藤。この二人がしばらくの間は、日本代表の推進力になると思う。

香川の変貌ぶり(アメリカンフットボールのQBのようなプレーぶりだった)に懐疑的だからこそ、強くそう思う。

さらに岡崎。もともと、すべてにおいて完全な選手ではなかった。どれもみんな80点。でも、それらをうまくまとめて高いパフォーマンスを発揮してしまう人間力の持ち主、そんなタイプだったと思う。

でも、気がつけばいまや点数はかなり上がっている。すべてにおいてレベルアップし、頼もしいストライカーになっている。その伸び率の凄まじさに、今後への期待が膨らむばかりだ。

なお、アギーレ・ジャパンは12月29日に再集合。天皇杯こそ前倒しになったものの、正月返上でアジア杯へと向かう。

フリーライター

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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