植田ショックか。日本国債が大きく売られ、円高も急速に進行
日銀による出口政策がいよいよ現実味を帯びてきたことで、ややタイムラグもありながら市場が動意を示してきた。
そのきっかけとなったのは、6日の氷見野日銀副総裁の講演であった。個人的には氷見野日銀副総裁の動向がかなり気になっていた。
実質的に現在の日銀の金融政策におけるキーパーソンは内田副総裁だとみている。内田氏はリフレ派ではないものの、金融政策の正常化についてはかなり慎重となっていた。
ただし総裁は植田氏であり、そんな内田氏と総裁の意見がかみ合わないこともあった。そのなかにあって財務省出身で金融庁長官でもあった氷見野日銀副総裁の存在は気になるところとなっていた。
その氷見野日銀副総裁が講演で、物価動向の説明とともに出口を意識させる発言をしてきたのである。
審議委員の発言も本来であれば確認すべきところではあるが、いまの日銀は執行部の影響力が大きくなっていると窺える。金融政策は多数決で決定されるが、全員一致ばかり演出されては審議委員への注目度も当然落ちてしまう。
その氷見野日銀副総裁の講演があった6日当日は、市場への影響は限られた。しかし、それが7日の債券先物の寄り付き後に影響を見せ始めた。
さらに7日には植田総裁が参院財政金融委員会で発言しており、そこで年末から来年にかけて「一段とチャレンジングになる」と述べたと伝わった。
「年末から」との部分から、12月18、19日の金融政策決定会合で正常化に向けた動きがあるのではとの見方も浮上。さらに30年国債の入札が低調な結果となったこともあり、国債価格が急落、つまり国債利回りが急上昇した。
この円債の動きをみてか、外為市場でも日銀の早期の政策修正が意識されて、円高が進行し、ドル円が145円台を付けてきた。
外為市場などでは12月19日にもマイナス金利解除があるとの見方も出ているようだが、これについては可能性はゼロではないものの、これまで慎重すぎるほどであった日銀がそう簡単に動くことは考えづらい。
7日は首相と日銀総裁が会ったようだが、このあたりについても確認していた可能性がある。政府の意向も当然ながら日銀は意識せざるを得ない。政府としてもそのタイミングをみている可能性はある。
いずれにしても日本の債券市場も外為市場も短期的なショックとも呼べるような動きであり、ミニ植田ショックといった格好となった。