金利とドル円の関係を探る
ドル円やユーロ円など外為の動きと金利の動きの相関関係について考えてみたい。
ドル円などの水準がどのように決められるのか。たとえば購買力平価説というものがある。為替レートは自国通貨と外国通貨の購買力の比率によって決定されるという説である。よく使われるのがマクドナルドのビッグマックの価格となる。しかし、これは当然絶対的なものではない。
それでは金利はどうであろう。長期金利の形成式としては下記のものがある。
名目長期金利=実質長期金利+期待インフレ率+リスクプレミアム
そもそも正確な実質長期金利や期待インフレ率そのものを算出する手立てがない。リスクプレミアムは日々、いや瞬時に変化するものであり、プレミアムを算出するのは至難の業となる。
例えば新型コロナウイルスの世界的感染の前とか、ロシアによるウクライナ侵攻前には、当然ながらそれによるリスクプレミアムは発生していない。新たなイベントが起きたときに長期金利がどう反応するかによってリスクプレミアムはあとから算出するようなものとなろう。
つまり為替も金利もそれを適切に導く方程式のようなものは存在しない。ドル円は外為市場、長期金利は債券市場で形成されるものであり、短期金利については中央銀行の金融政策による影響が大きい。
中央銀行はどのようにして政策金利を決めているのか。2022年あたりからの世界的な物価上昇に対して、欧米の中央銀行は積極的な金融引き締めを行った。日本でも物価は上昇したが、日銀は何故か異次元緩和の解除すら行わなかった。
市場は結局、この中央銀行の対応の違いを材料に動くことになる。いわゆる金利差である。
ドルなどの動きを決定する要因のひとつに金利差がある。同程度の信用度であれば、お金は金利が低いところから高いところに向かう。つまり日銀が何もせず、FRBが利上げをすれば、ドルが買われ、円が売られる。
最近のドル円の動きと金利の関係についてみてみたい。米国では雇用統計などを受けて、景気そのものがしっかりしていることや、賃金も上昇していることから、物価が大きく低下することは目先考えづらくなった。
市場は期待が先行し過ぎる場合がある。FRBは3月にも利下げを行うとの期待が先行していたのが、パウエル議長の発言などを通じ、早期利下げ観測は後退した。
これに対して、日銀はマイナス金利政策の解除を視野に入れてきているように窺えるが、慎重な姿勢であることにも変化はない。
ドル円が今後どちらに向かうのか。これはビッグマックの価格などより、いまは米国の長期金利の行方と、日銀が正常化に動けるのかといったところに焦点があたっているように思われるのである。