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新聞が両社ともにプラス、テレビは博報堂が1割超えのプラス(電通・博報堂売上動向:2017年12月分)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 最近はテレビCMが好調との話も聞くが…(写真:アフロ)

・電通、博報堂ともに新聞は前年同月比でプラス。

・インターネット広告は両社ともプラス。

・毎年12月に限り経年変化を見ると2009年を底に回復基調。

新聞は両社ともプラス、雑誌は両社とも1割超えのマイナス

日本の広告代理店で売上ではツートップとなる電通と博報堂(※)。両社の月次売上で直近分となる2017年12月分が出そろった。その内容を精査する。

まずは両社の主要項目ごとの前年同月比を計算し、グラフ化する。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂DYHD)の2017年12月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂DYHD)の2017年12月分種目別売上高前年同月比

昔ながらの主力メディア、具体的にはテレビ・ラジオ・新聞・雑誌(いわゆる4マス、4大従来型メディア)の動向を確認すると、今回月は新聞が両社ともプラス、ラジオは電通が、テレビは博報堂がプラスとの結果となった。雑誌が両社とも1割超えのマイナスなのが気になるが、4マス全体が不調な昨今においては、比較的健闘した結果ではある。

電通の紙媒体はここしばらくの間軟調さが続いているが、今回月は新聞がわずかながらもプラス。2017年10月における総選挙特需とは異なる、純粋なプラスなだけに、高く評価したい。

インターネットは両社ともにプラス。また前年同月でもその時の前年同月比で大きなプラス幅(電通はプラス19.1%、博報堂は24.2%)計上しており、反動による大きな足かせを振り払い、さらに上昇した実態がうかがえる(2年前同月比を試算すると電通はプラス19.6%、博報堂はプラス36.4%)。博報堂ではこの傾向は数か月継続した動きで、同社におけるインターネット広告の成長ぶりが再確認できる。

一般広告は電通がおおむね軟調、博報堂が大よそ堅調。電通の一般広告でプラスを計上しているのはクリエーティブのみとなっている。

両社の各年12月の売上総額の推移

次のグラフは電通の今世紀(2001年以降)、博報堂の2006年以降における、毎年12月分の売上高総額をグラフにしたもの。年を隔てた上で同月における比較となるので、選挙やオリンピック、FIFAワールドカップのような、広告と深い関係を持ち、売上に大きく影響を与える事象が無い限り、季節による変動を気にせず中期的な動向を確認できる。

↑ 電通月次売上総額推移(各年12月、億円)(~2017年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年12月、億円)(~2017年)
↑ 博報堂DYHD月次売上総額推移(各年12月、億円)(~2017年)
↑ 博報堂DYHD月次売上総額推移(各年12月、億円)(~2017年)

12月の動向に限ると、リーマンショックによる不況で落ち込んだ2009年を底に回復しているのが分かる。しかし電通では2016年を天井に失速している感は否めない。2017年は電通と博報堂で相反する方向性を示しているのが印象的ではある。

今件記事では日本の大手広告代理店として、売上高、取扱い領域の幅広さ、対象地域の広さ、日本国内に与える影響力など、多数の面で最上位陣営となる電通と博報堂2社の動向を精査している(もちろん日本には両社以外にも多数の代理店が存在する)。一方で両社は同程度の規模では無く、売上・取扱広告の取扱範囲には小さからぬ違いがある。

そこで次に両社部門の具体的な売上高を併記したグラフを生成し、その実情を確認する(小数点第一位までの表記)。それぞれの部門の具体的な市場規模や、両社間における違いが、成長度合いでは無く現状の売上の観点で把握できる。

↑ 電通・博報堂DYHDの2017年12月における部門別売上高(億円)
↑ 電通・博報堂DYHDの2017年12月における部門別売上高(億円)

インターネットは毎月目覚ましい成長率を計上しているものの、売上金額=市場規模としては他のメディアと比較すると、どんぐりの背比べレベルでしかない。また、4マスとインターネット以外の一般広告市場が大きな規模を示していること、テレビの広告市場がひときわ巨大であることなどが一目でわかる。電通、博報堂ともに、各社の全売上の4割強もの額面を示している。

一方電通と博報堂との間では、全項目で電通の方が単月売上は上。部門によって得手不得手があるため、マーケティング・プロモーションのようにあまり変わらない部門もあれば、テレビのように大きな差を示す部門もある。

最近では電通の軟調ぶりが気になる。試しに2015年1月以降の4マスとインターネット広告の前年同月比をグラフにすると次の通りとなる。

↑ 月次における4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(電通、2015年1月以降)
↑ 月次における4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(電通、2015年1月以降)

2015年後半に入ってから額面の大きなテレビがプラス圏を大よそ維持し合計額をけん引していたが、直近7か月間にわたりマイナスに沈んだままで焦りを覚える。また新聞や雑誌の軟調さは相変わらず。他方雑誌のプラス圏への顔見せは2015年4月と8月、2017年6月の3か月、新聞は2016年8月と2017年の2月・10月・12月の4か月に限られている。

今後の動向が気になるところだが、電通では今回の2017年12月分を最後に、月次開示を取りやめることになった。理由としては「連結売上総利益に占める海外事業構成比が6割に迫るなど事業構成が大きく変化し、電通単体売上高が電通グループ全体の状況を表す指標として適切では無くなった」とのこと(2017年11月度単体売上高報告書より)。2018年分からは四半期単位での報告を行うとのことだが、残念な話には違いない。

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※グラフなどにおける社名や項目の表現について

項目名は両社で多少表現は異なるが、インタラクティブメディア(電通)=インターネットメディア(博報堂)=インターネット、OOHメディア(電通)=アウトドアメディア(博報堂)である。また「一般広告」とは4マスとインターネット以外の、従来型の広告を意味する。

一部で博報堂について博報堂DYHDと表記しているが、これは博報堂DYホールディングスを指す。博報堂DYホールディングスは「博報堂」「大広」「読売広告社」と「博報堂DYメディアパートナーズ」を完全子会社として傘下に置く広告グループの持株会社で、今記事では公開されている「博報堂」「大広」「読売広告社」の広告代理店子会社3社の売上を合算して各種計算を行い、博報堂(DYHD)の売上としている。また、記事中の表記も原則として「博報堂」は「博報堂DYホールディングス」を意味する。子会社の博報堂単体の動向では無いことに注意。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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