「金与正も国民虐待の主犯なのに」南北首脳会談に失望の声
27日の南北首脳会談で発表された「板門店宣言」に世界の注目が集まる中、同宣言が北朝鮮の人権問題に言及していないことに対し、失望の声が上がっている。
米国の人権団体、北朝鮮人権委員会(HRNK)のグレッグ・スカラチュー事務総長は同日、ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し、韓国は今回の会談で北朝鮮国民の人権状況を改善する機会を逃したと指摘し、次のように語った。
「もちろん、宣言で離散家族の再会問題を取り上げた部分は肯定的にとらえているが、人権状況について何も言っていないのは残念だ。文在寅政権はすでに人権問題をほぼあきらめた状態で、北朝鮮との交渉で、一方的に無条件の譲歩をしてしまったのではないかと思っている」
だが、続いて予定されている米朝首脳会談では、北朝鮮の人権問題が取り上げられる可能性が高い。米国政府は、人権問題を理由に独自の対北制裁を行うほど、対北圧迫で人権問題を重視してきたからだ。
北朝鮮の人権侵害は、公開処刑の場面が衛星写真に捉えられるなどしており、すでに疑惑の段階を過ぎていると言える。
(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認)
「北朝鮮国民に対する人権弾圧の主犯として、米国政府の制裁対象となった金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長と金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長兼統一戦線部長が、制裁を猶予される形で平昌冬季五輪に参加した後、南北首脳会談など国際舞台に引き続き出てくることも理解できないことだ」(スカラチュー氏)
(参考記事:謎に包まれた北朝鮮「公開処刑」の実態…元執行人が証言「死刑囚は鬼の形相で息絶えた」)
金与正氏と金英哲氏を受け入れているのは韓国政府であり、スカラチュー氏のこの言葉は暗に韓国を批判したものだと言える。
「北朝鮮が21世紀の国際社会に参加するためには、人権犯罪の温床である政治犯収容所を運用してはならない」(同)
一方、米国ニューヨークに本部を置く国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのジョン・シフトン(John Sifton)アジア局長はRFAに対し、北朝鮮の核問題を巡って多国間協議が行われるなら、その場では北朝鮮の人権問題を必ず取り上げなければならないと強調している。
「北朝鮮が介入して作成された南北首脳会談の宣言文に、北朝鮮の人権問題が全く取り上げられていないことは驚きに値しない。しかし国際社会は今後、核問題解決のため米国、韓国、日本、欧州連合などの多国間協議で、必ず北朝鮮の人権問題を議論する必要がある」(シフトン氏)
同氏はまた、米国と国連の対北朝鮮制裁は、たとえ核問題が解決されても、人権状況の改善なしに解除されることはないという点を、北朝鮮との対話で明らかにしなければならないと指摘した。
北朝鮮の人権侵害を巡っては、金正恩氏が直接的な加害者になったであろうと思われるケースがいくつもある。だからこそ、北朝鮮は人権問題を議題にすまいと必死なのだろうが、そう簡単に、彼らの思惑通りことが運ぶこともないだろう。