日銀の決定会合終了が遅いとの書き込み
2014年10月31日、13時半を過ぎたあたりからツイッターでは「少し遅いようだが」、「何か揉めているのかな」との書き込みが出てきた。フェースブックと並びSNSの代表格と言えるツイッターは、他のSNSと異なりニュースの速報性に強みがある。これは何を、誰をフォローするかによるが、日経新聞、NHK、ロイター、ブルームバーグなどをフォローするだけでも速報としてニュースが入る。しかし、速報ニュースはむしろ個人の方が速い。2014年9月27日11時52分に噴火した御嶽山についても、NHKが速報を流すよりも早く個人が写真付きでツイートしていた。
金融に関する情報についても、新聞などのメディアよりも個人の方が流すタイミングは速いことが多い。証券会社や銀行などのディーリングルームの端末画面には、ブルームバーグやQUICK、ロイターなどからフラッシュニュースが流れる。これが金融関係のニュースとしては最も早いものとなろうが、ツイッターにもそのニュースはそれほど時を置かずに流れてくる。
金融関係者や金融に関心のある人たちのツイートをみると、ディーリングルームでディーラーなどが会話しているものと似たような会話も出てくる。10月31日の1時半あたりからの「遅い」という書き込みがあったタイミングで、ディーリングルームでも同様の会話があったであろうことは想像に難くない。
それではいったい何が遅かったのか。それはこの日に開かれていた日銀の金融政策決定会合の終了時間であった。日本の金融政策は日銀の金融政策決定会合において、9人の政策委員の多数決によって決められる。
この日銀の金融政策決定会合は通常は毎月一回開催される。しかし、4月と10月だけは展望レポートと呼ばれる「経済・物価情勢の展望」が発表される。これは今年度、来年度、再来年度の実質GDPや消費者物価指数の見通しを数字で示すとともに、その説明をしたものである。二日にわたる会合が一日だけとなるため、通常より少し遅くなるのは致し方ないはず、と私は「遅い」と書かれたツイートに説明しようと13時半過ぎに、ここ数年の4月と10月の二度目の会合の終了時間を調べていた。
日銀のサイトには「金融市場調節方針に関する公表文」がアップされている。これは金融政策決定会合直後に公表され、会合の決定結果が記されている。日銀のサイトにはこの公表文とともにその公表時刻も記されている。
二日にわたる会合の際の二日目の会合終了時間はおおよそ12時前後である。つまり12時前後には金融政策の変更の有無が確認できる。4月と10月の一日だけの会合時は、13時半ぐらいあたりまでには終了していることが多い。2014年、2013年、2012年と見ていたところ、2012年10月は14時46分という遅い時間に公表文が発表されていた。このときには追加緩和が決定されていたのである。これに気が付き、これはもしや展望レポートの内容とかで揉めているのではなく、追加緩和があるのではとツイッターに書き込もうとしたまさにそのとき、すでに多くのツイートが流れていた。そこには「日銀が追加緩和を決定」と書き込まれていたのであった。