【ハッケン!土浦まち歩き】土浦城の縄張りを歩くその2~亀城公園に点在する記念碑は不思議だらけ!?
土浦駅から徒歩で約17分。「土浦城址」の別名でも知られる亀城公園は、かつて土浦城があった場所の一部を整備した自然豊かな公園です。広々とした園内を隅々まで歩いてみると、「あれ、これ何?」と気になる記念碑が点在しています。それらの記念碑にはどういった背景があるのでしょうか? 土浦市立博物館の西口さんと一緒に記念碑巡りを楽しみます。
江戸時代の世界地理学のパイオニア「山村才助贈位紀恩の碑」
裁判所側の門から入って最も奥まった場所、ひょうたん池の近くに「山村才助贈位紀恩の碑」があります。「ここです」と西口さんに連れてきてもらったものの、碑のようなものは見当たらず…
ありました! 先ほどの写真の右側、松の木に隠れるように石碑がありました。
西口さん:この篆額(石碑の上部に篆書で書かれた題字)は、土屋正直(つちやまさなお)が記したものです。正直は、土浦藩主を務めていた土屋家の第12代当主です。土浦藩士であった山村才助の没後になりますが、大正時代に才助の功績を讃えて官位が与えられました。それを記念して山村才助の子孫にあたる山村慶次がこの碑を立てた時に与えられた書だそうです。
記念碑には、篆額を記した土屋正直の名が確かに記されています。
山村才助は、江戸時代後期に名を馳せた現代でいう地理学者。主にはオランダなどからもたらされる洋書を翻訳して知識を深めた人物です。幼い頃から地理学を好み、『解体新書』で知られる杉田玄白の弟子にあたる大槻玄沢に入門。そこで世界地理を研究し、当時の地理学に多大なる功績をもたらしたそうです。
才助の没後、従五位(じゅごい)を贈られ、その記念碑が土浦に立てられました。
茨城県初の国務大臣を務めた「原脩次郎」の銅像
山村才助贈位紀恩の碑を背にして少し右に歩いたところに「原脩次郎(はら しゅうじろう)銅像」が立っています。
西口さん:原脩次郎は、若槻礼次郞(わかつき れいじろう)が第25代の内閣総理大臣を務めていた時に拓務大臣と鉄道大臣を兼職した人物です。京都出身ですが、夫人の出身地である土浦に住んでいました。政界に進出するにあたっても茨城県から出馬、当選したことから茨城が「第二のふるさと」に。茨城県初の国務大臣として尽力したことに敬意を表して銅像が立てられたそうです。
現在は上半身だけの胸像として公園内に置かれていますが、1935年(昭和10年)に竣工された当初は全身像だったそうです。戦時中に公布された金属類回収令によって供出されてしまいましたが、残っていた型を使って復元されたのが現在の胸像です。
説明板などもなく、これまで気に留めることのなかった銅像ですが、今後はこの銅像を見るたびに、日本に大きく貢献した氏の活躍を偲ぶことになりそうです。
500年以上の時を見つめてきた、巨大なシイの木
次にご紹介する記念碑は、この巨大なシイの木のすぐそばに。
シイの木のたもとには案内板があり「県指定天然記念物 亀城のシイ」と記されています。環境庁「日本の巨樹・巨木林 関東版」によると、このシイの木の推定樹齢は500年にも及びます。
高さは約16m、幹の太さは約7mの巨木は、1956年に茨城県の天然記念物に指定されています。
雨にも負けず、風にも負けず、火災の多い城下町にありながら難を逃れ生き続けてきた木。歳月を重ねてゆっくりと枝葉を伸ばしたであろうその姿には神秘すら感じられます。
土浦出身の随筆家の代表作を記した「ぶらりひょうたんの碑」
シイの木の根もとに大きな石があります。
この石の表面をじっくりと眺めると、文字が刻まれていることに気がつきます。
西口さん:明治から昭和にかけて劇作家、随筆家として活躍した土浦出身の高田保(たかだたもつ)さんの記念碑で、「あのはなも このはなも みな はるのかぜ」という保の詠んだ句が刻まれています。
高田保氏は1895年(明治28年)、茨城県新治郡土浦町(現在の土浦市)生まれ。中学時代に演劇に興味を持ち、早稲田大学英文科へと進学します。卒業後に新劇や新国劇の演出や劇作家として活躍しますが、その内容がプロレタリア文学に傾倒していると検挙され、商業作家へと転身。
保の代表作「ぶらりひょうたん」は、戦後に東京日日新聞で連載された随筆で、その連載をまとめた書籍は2ページほどの短文を寄せ集めたいわばエッセイ集です。
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亀城公園は桜の名所で、近年ではフォトスポットとしても人気のある観光地ですが、敷地に配された記念碑に目を向けると、時代の先駆者として日本や社会をけん引してきた偉人の功績や文学の香りにふれることができます。
しかし、「なぜそうした記念碑がこの亀城公園に?」という謎は解けぬままですが、その不思議さも含めて楽しめるはずです。
ゆっくりと時間をかけて散策してみてくださいね。
<亀城公園>
住所:茨城県土浦市中央1-13 MAP
次回は、「土浦城の縄張りを歩く」をテーマに城址を出て町中へ。土塁や城を守る門の跡地を巡りながら、江戸時代の町に想いを馳せていきます。