TikTok運営の中国ByteDance、有料音楽ストリーミングを年内に開始へ
TikTokを運営する中国のByteDanceが、年内に独自のサブスクリプション型音楽ストリーミングサービスをリリースするとして、アプリ開発を進めていると報じられた。
ブルームバーグは関係者情報として、SpotifyやApple Musicなどと音楽市場で競争するためのアプリを早ければ今秋にローンチすると伝えている。ByteDanceが目指すサブスクリプション型音楽サービスのターゲットは音楽新興市場で、すでにインドのレコード会社大手であるT-SeriesやTimes Musicとライセンス契約を締結している。
参照:TikTok Owner to Challenge Spotify and Apple With Music Service (Bloomberg)
ByteDanceが音楽サービスに参入する背景には、膨大なTikTokユーザーによるサブスクリプション利用を促進する狙いがある。
TikTokと、同じくByteDanceが中国内で運営するアプリのDouyinは共に、投稿される動画と音楽コンテンツとの親和性が高いことはすでに証明済みだが、今年に入り全米ビルボードチャート1位を獲得したLil Nas Xの「Old Town Road」は、TikTokで人気に火が付き、音楽ストリーミングでの再生、音楽チャートでの成功につながっていることなどから、音楽業界も新曲をブレイクさせるプラットフォームとして無視できない存在感を示している。
今後は、音楽業界とByteDanceがどのようなライセンス契約を結ぶのかに注目が集まる。
ByteDanceはユニバーサルミュージック、ソニーミュージック、ワーナーミュージックの世界大手レコード会社との楽曲利用に関するライセンス契約が4月で切れ、更新の交渉が進んでいないことがウォール・ストリート・ジャーナルによって報じられた。
TikTokがアプリ内で音楽を使える背景はこうだ。以前に買収したショート音楽動画アプリ「Musical.ly」がレコード会社と交わしたライセンス契約を買収後もByteDanceが引き継ぎ今日に至ると言われている。2017年の買収当時、Musical.lyのユーザーはわずか500万人規模だった。現在TikTokのダウンロード数は10億を超えるほど巨大なプラットフォームへ成長しているため、契約交渉が複雑化していることが予想される。
海外の音楽市場を見渡すと、東南アジアやインド、中国などで人気のある音楽サービスはグローバルで人気のSpotifyやApple Musicよりもローカルサービスであり、多くのローカルユーザーを抱えているのが現状だ。中国のTencent Musicが運営するQQ MusicやKugou、Jooxなどは基本フリーで利用できることが人気の理由の一つで、YouTubeもフリーアプリとしてアジア圏ではユーザーを集めている。
参照:中国テンセントがユニバーサルミュージック買収候補に(All Digital Music)
サブスクリプション型音楽サービスをグローバル規模で推進したいメジャーレコード会社や音楽業界にとって、新興市場での売上増加は魅力的な提案となる。しかし、すでにフリーアプリが浸透している国では、音楽サブスクリプションの普及に時間がかかるという現実的課題もあるため、ByteDanceがどの国で音楽サービスを提供するかは音楽業界にとって注目すべきポイントの一つとなる。
source:
TikTok Owner to Challenge Spotify and Apple With Music Service (Bloomberg)
Music Deals for Bytedance’s TikTok and Douyin Are Close to Expiring(The Wall Street Journal)
Record Labels Said to Demand More Money for Songs on TikTok App (Bloomberg)
(この記事は、音楽ビジネスメディア「All Digital Music」に掲載された記事に加筆しています)