中国人民解放軍が中朝国境の配備を強化 北朝鮮の「Xデー」を予感か
北朝鮮情勢が、不穏さを増している。
この春、米韓合同軍事演習が行われた際には、北朝鮮がとくに過激な挑発行動に出ることはなかった。また、近いうちに核実験や長距離弾道ミサイル実験が行われる徴候も見られない。
しかしその一方で、北朝鮮の体制内部にきしみが出ている可能性があるのだ。
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、中国人民解放軍が中朝国境の部隊配備を強化しているという。もし、これが事実なら、考えられる理由はふたつある。
ひとつは、単純に国境警備を強化するためだ。
中朝国境では最近、北朝鮮からの脱走兵による事件が多発している。4月24日には、中国吉林省延辺朝鮮族自治州の和龍市龍城鎮石人村で、朝鮮人民軍兵士らが凶器で住民3人を刺殺する事件が発生した。
同様の事件は昨年末にも起きており、その背景には、食糧の配給すらまともに受けられない、朝鮮人民軍の下級兵士たちの困窮事情がある。
中国人民解放軍の配備強化が、こうした事件を未然に防止するためであれば、とくに驚くには当たらない。
しかし仮に、中国が北朝鮮国内での「有事」を想定しているとすれば、話は違ってくる。
韓国の朴槿恵大統領は、11日付の米紙ワシントン・ポストとのインタビューで、「最近、朝鮮労働党の高級幹部が脱北し、韓国入りした」と明かしている。
この高級幹部の素性を巡っては、「党中央委員会の副部長ではないか」との情報が、一部で取り沙汰されている。
党中央委の副部長といえば、日本の中央省庁の審議官から官房長クラスに匹敵し、権力中枢の深部にまで通じているはずだ。ほかにも、朝鮮人民軍の大物軍人や、党統一戦線部や国家安全保衛部など特殊機関からの脱北が相次いでいるとする噂もある。
こうした情報が出るのも、金正恩氏が残虐極まりない方法で、側近たちを相次ぎ処刑しているからに他ならない。北朝鮮の幹部も人の子であり、身に危険が迫れば「逃げよう」と考えるのは当然だろう。
そんなことが続けば、北朝鮮の体制が機能不全に陥り、いずれ有事発生の「Xデー」が訪れるのは避けられない。中国はもしかしたら、その日が遠からず訪れると予感しているのではないか。
今後も中朝関係の動向、そして中朝国境の動きから目が離せない。