芸能人の「一日警察署長」に逮捕権限ある?事件発生時の捜査はどうなるか #専門家のまとめ
9月21日から始まる秋の全国交通安全運動にあわせ、この時期は各地の警察署で芸能人らが「一日警察署長」を務め、市民に事故防止などを呼びかけるのが恒例行事となっています。もしそのタイミングで刑事事件が発生した場合、彼らは署員を指揮して捜査したり、逮捕状を請求したりできるでしょうか。「一日警察署長」の権限や活動内容などについて、参考となる記事をまとめました。
ココがポイント
【一日署長】アイドルグループ「私立恵比寿中学」が交通安全を呼びかけ 「曲がり角で自転車に…」ヒヤり体験語る 東京・新宿区|TBS NEWS DIG
エキスパートの補足・見解
刑事訴訟法の規定により、通常逮捕に関して裁判官に逮捕状の発付を請求できるのは「検察官」か「司法警察員」に限られます。また、後者が警察官の場合、公安委員会の指定する「警部以上の者」に限るとされています。
警察官の階級は警察法に規定されており、上から順に警視総監、警視監、警視長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長、巡査です。したがって、警視総監から警部までの警察官だけが逮捕状を請求できるということになります。
ただ、所轄の警察署の場合、署長に報告を上げてその指揮を受けた上で、警部の階級にある課長らの名義で請求するのが通例であり、警視正や警視の階級にある署長が自ら請求するということはまずありません。しかも、「一日警察署長」はPR大使などと同じく単なる広報活動用のネーミングにすぎず、本物の警察官ですらないので、犯罪の捜査や逮捕状の請求などできません。
「一日警察署長」に選ばれるのはアイドル歌手や俳優、お笑いタレント、アスリート、アナウンサーなどが多いのですが、市民の注目を集めるのが目的なので、著名なマスコットキャラクターや人気者の動物に委嘱することもあります。(了)