「店の出来たてと遜色ない」までに進化した温麺 セブン‐イレブンの商品開発のすごみとは?
進化していく麺、セブン‐イレブン。ここにきて、一気にアップ
セブン‐イレブンでレンジアップ商品の温麺が始まったのが1998年。ちょうどその年の家庭での電子レンジの普及率を見ると、91.7%と10年前の1988年の64.3%より急激に伸びており(内閣庁「主要耐久消費財等の普及率」参照)、既になくてはならない存在になっていた。
その後、毎年、温麺は改善に改善を重ねたと言われる。
さて2019年10月1日に「レンジ麺」が大きく刷新し、これまでとは違う提案で業界内では話題となっている。
さて実際、試食し、驚いたことは蓋を開けた瞬間に出汁の香りが周辺に放たれることである。
これまで「香り」まで考慮された商品は非常に難しいとされており、工場での製造過程で風味が飛んでしまうからだ。
勿論、麺も外食で頂く出来立てと遜色がないのだ。
そこで今回、発売から早3カ月経ち、発売後の状況、そして開発までのいきさつを
株式会社セブン‐イレブン 商品本部 デイリー部 米飯・麺類 チーフマーチャンダイザー若井祐介(以下若井さん)さんからお話を伺った。
池田「今回の温麺はゼラチンで固めていないことがなんといっても画期的ですが、いつ頃から構想を練られたのでしょうか」
若井さん「2年から3年近くかかっています。より美味しいもの、質の高いものを考えていくうちにスープに余分なものを入れないことからこれまでのゼラチンでつゆを固めることなく液体つゆで提供する方法を考えました」
ゼラチンで固めることで移動に際し、「こぼれない」というメリットはあったものの、今回、本来の液体つゆに戻すことで出汁感、そして香りを出すことも可能にしたのである。
そしてこれまでのゼラチンで固めた商品の多くは、口に残ることが多かった。しかし今回のつゆを飲むとすっきりとした後味でしかも出汁の風味がいかんなく発揮できている。
何といっても蓋を開けた瞬間に、出汁の香りが周辺に放たれるのだ。
つゆはそれぞれ各商品で出汁を変えて工場で製造している。
池田「これ以外に麺についても改良をされたのでしょうか」
若井さん「麺は、セブン‐イレブン専用の切れ刃で麺を切っております。これにより、より角立ちの良い麺の実現が可能となりました」
さて蕎麦麺を試食し、あえてしばらく汁につけたまま4時間放置した。その後、食べてみると、全く麺が伸びていないのだ。
若井さん「これまでだと麺の一部はどうしてもゼラチンで固めたつゆの部分に触れてしまい、それによりしばらくすると伸びやすくなっておりました。従来の方法で茹でた麺を電子レンジで加熱しているなかで再度、茹でることになりそれがさらに伸びることになりがちだったのです」
若井さん「麺とつゆ、スープを分けることで、そういった問題もなくなり、時間が経っても伸びにくいようになっています」
ということで、このような容器となっている。
全国の各工場には麺マイスターが常駐しているとのこと。麺の歴史から製法までかなり高度な教育を受け、クリアしたものが配置されている。
次にラーメン「一風堂監修 博多豚骨ラーメン」460円、税込み496円。
鶏スープでは一般に細麺であり、従来のゼラチンで固めると、細麺であるがゆえに時間とともにスープの水分を麺が吸ってしまう。
若井さん「この容器を手掛けたことで、コシのある細麺でも保たれます。そしてラーメンスープも部位まで決めたこだわりで出汁をとっています。
容器について
さて容器についても伺った。
池田「どこにこだわりを持たれたのでしょうか」
若井さん「実は、この容器の形は白銀比となっております」
池田「?」
調べてみると
1:1+√2の比率である。即ちおよそ1:2.414が日本人にとって美しく感じる比率、これを容器のデザインで採用されたとか。
顧客層が広がる
温麺を刷新したことで顧客の大きな変化として、ラーメンでは若い層をつかみ、年齢層が広がったと言われる。
そして何といっても併買が多いとのこと。
若井さん「麺を2つ購入してくださる、もしくはおにぎりと麺、もしくはサラダと麺で購入して頂くことが多いようです」
つまり昨今、難しいと言われる客単価アップにもつながっているのだ。
時間帯を聞くと、ランチはもちろんのこと、夕食にも購入されるとか。
外食では夜需要が苦戦しているなか、夜でも購入されているのだ。
若井さん「温麺は年間を通じて販売可能であることもわかりました」
お客様が求めているものを突き詰めると・・・
和の麺、中華麺の開発によってこれまでのお客様のストレスを解消することに努めた。
例えば
・人気があるがゆえ、ラーメンの有名店は行列に並ばないと食べられない。
・かき揚げも家では揚げることは難しい。
といったことだ。
これらを解消しつつ家で食べられるように仕上げるだけではなく、さらに美味しさを追求した開発をやり続けるには相当の苦労がある。
当然、ここまで突き詰めると出来上がった商品はお客様にも支持され、社内のモチベーションにもつながると思った。
若井さん「大変ですがお客様にもより良い商品を提供でき、社内でもモチベーションが上がりました」
とにこやかにお返事を頂いた。
地道に諦めずに、より良い品質をめざして開発する。言葉でいうのは簡単ではある。しかしなかなかそれをやり続けることは難しい。
改めてセブン‐イレブンの商品開発の凄みを見せつけられたというのが率直な感想でした。
お忙しいなか、貴重なお話、本当にありがとうございました。