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茨城代表は霞ヶ浦、4年ぶり2回目の甲子園へ――高校野球・茨城大会

川端康生フリーライター

投打で圧倒。完勝だった

 霞ヶ浦の完勝だった。

 15安打を放ったバッティングも見事だったし、6回途中まで常磐大高打線をノーヒットに抑えた鈴木寛のピッチングも素晴らしかった。

 5回を終わった時点で14対0。前半で試合を決めて、優勝を勝ち取った。

 春の県大会では初戦敗退。今大会でも(試合後にマイクを向けられた芳賀主将が「いつ負けてもおかしくなかった」と言っていた通り)、4回戦の藤代、準々決勝の石岡一高と延長にもつれ込む厳しいゲームの連続だった。

 しかし、それでも負けずに勝ち続けた。

 決してビッグチームではない。この試合でもヒットはほとんどが単打。しかし、つなぐ。

 4回の勝利を決定的にした一挙7点も、四球でランナーを出した後、センター前、ライト線2塁打、ライト前、センター前、ライト前と5連打。さらにスクイズ、プッシュバントと攻め立てた。

 鋭いスイングでボールを叩き、ライナーで弾き返す。取れる得点は確実にモノにし、相手に息をつかせない。競り勝ち続けたチームの底力が見えるような攻撃だった。

 そして、やはり鈴木投手。立ち上がりから140キロ台の速球とスライダーで相手打線を抑え込んだ。スピードだけでなく、ボールに勢いがあった。だから常磐大高の強力打線も少しずつ差し込まれ、押し込まれていた。噂通り、超高校級。球速表示以上の球威も感じるボールだった。

 そんなピッチングがゲームの流れを生み出し、味方打線の爆発を呼んだ。エースの役割を果たす快投だった。

 一方、常磐大高。思いがけない大敗で、初めての甲子園には届かなかった。

 初回、先制を許した後に続いた満塁のピンチ。センター前に抜けそうな打球をセカンド服部が飛びついて好捕し、失点を止めたときには「1点を争うゲーム」になると思った。培ってきたチーム力が伝わってくるようなプレーだったからだ。

 しかし鈴木投手を打てなかった。打ち勝ってきたチームが、それを上回る好投手とぶつかり、打ち崩すことができなかった。それどころかヒット一本に抑え込まれたのだ。清々しい敗戦とは言わない。だが、決して後味の悪い負け方ではなかったのではないか。

 ゲームセットの後、ネクストバッターも、サードコーチもグランドに突っ伏して泣いていた。甲子園は目前だった。あと1勝。でも、その1勝が――。

4年ぶり2度目の甲子園

 霞ヶ浦は(茨城の高校野球ファンならご存じの通り)「あと1勝」に泣いてきたチームだ。あと1勝どころか、あと1アウト、あと1ストライク、そんな経験を何度もして、ようやく2015年、初めての甲子園をつかんだ。

 そして、また4年……。

 今日のスタンドにもいつものようにOBたちの姿があった。見たこともない決勝戦だったはずだ。「あと1勝」を勝てなかったたくさんの先輩たちの前で堂々の決勝戦。茨城県代表を悠々と勝ち取った。

 霞ヶ浦、2度目の甲子園だ。

フリーライター

1965年生まれ。早稲田大学中退後、『週刊宝石』にて経済を中心に社会、芸能、スポーツなどを取材。1990年以後はスポーツ誌を中心に一般誌、ビジネス誌などで執筆。著書に『冒険者たち』(学研)、『星屑たち』(双葉社)、『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)、『東京マラソンの舞台裏』(枻出版)など。

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