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今夜放送『ミニオンズ』。黄色くて小さいミニオンたちは、いったいどんな生き物か?

柳田理科雄空想科学研究所主任研究員
イラスト/近藤ゆたか

こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。

マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。

さて、今回の研究レポートは……。

10月6日の「金曜ロードショー」では、『怪盗グルーのミニオン大脱走』が放送されたが、続く13日には、『ミニオンズ』が本編ノーカット放送!

今回の主役は、もちろんミニオンたち。

この黄色い不思議な生き物は、「怪盗グルー」シリーズの第1作『怪盗グルーの月泥棒』から登場し、あまりの人気に作られたスピンオフ作品が『ミニオンズ』だ。

本作では、ミニオンたちがグルーに出会うまでの経緯が描かれている。

驚くべき事実のてんこ盛りであり、まことに楽しい。

また、科学的にも興味津々なので、ここでぜひとも考えてみたい。

◆恐るべきミニオンズの歴史

『ミニオンズ』の物語は、海のなかのシーンから始まる。

海中を漂う単細胞生物のなかに、黄色い3個体がおり、おお、それはまさにミニオンズ。

小さな単細胞生物を大きな単細胞生物が攻撃し、それをもっと大きな単細胞生物が丸呑みにすると、ミニオンズにピョコッと目ができて、その巨大単細胞生物についていく。ナレーションの説明によれば、ミニオンズは「人類より前から地球に存在」しており、彼らの目的は「世界一凶悪なボスの仲間になること」。

オドロキである。

地球最初の生物は細菌で、40億年前に生まれたが、ミニオンズはその頃から存在していた! 

人類誕生は500万年前だから、つまりわれわれの800倍もの歴史を有する大先輩なのだ。

映画では、巨大な単細胞生物が多細胞生物に食われると、それを見たミニオンズに尻尾が生える。

脊椎動物に進化したのだ!

地球史では5億年前のことである。

やがて魚も出現し(4億年前)、捕食→被食が繰り返される。

そのたびに強大な者についていったミニオンズは、数を増やし、現在と同じ姿&サイズになって、肢を持つ両生類につき従って陸地に上がる(4~3億年前)。

ここはちょっと評価の分かれるところかもしれない。

両生類は他の魚との生存競争を避け、天敵のいない陸地に活路を求めた生き物。

つまり、海では弱かった生物が両生類になったともいえる。

そっちについていくとは、強いボスを求めるミニオンズらしからぬ気もするが……。

たが、おかげでティラノサウルス→原始人→エジプトのファラオ→ドラキュラ→ナポレオン→スカーレット(女盗賊)と次々に強いボスに出会っていったのだから、賢明な判断だったともいえよう。

イラスト/近藤ゆたか
イラスト/近藤ゆたか

◆みんな3億歳!?

ミニオンズの驚くべき点は、陸地に上がったときから同じ姿をしていることだ。

カメやゴキブリも2億年前から姿が変わっていないが、これは進化の必要がなかったということで、それだけ完成された生物といえる。

ミニオンズはもっと前から同じなのだから、めちゃくちゃ完成度が高い生物なのだろう。

さらに驚くべきことがある。

陸地に上がったとき、ナレーションはミニオンズの名前を紹介した。

「デイブ、カール、ポール、マイク。そしてこいつはノーバート、間抜けなヤツ」。

時は流れて1968年、ケビンがスカーレットに「ナカマ」と言って見せた写真にノーバートが映っている。

3億年前と同じく赤いヒトデをブラジャーにして!

このヒトタチ、姿が変わっていないどころか、3億年前と同一人物なのか!?

ということは、全員3億歳!?

◆1日にバナナ4千本!

筆者が気になるのは、そんな生物の食事である。

ミニオンズの好物は、なんとバナナ!

彼らはバナナをどれほど食べるのだろう?

彼らはカプセルのような体に短い手足がついている。劇中の描写から彼らの体重を推定すると、ケビン31kg、スチュアート38kg、ボブ32kg。

平均34kgということになる。

体重70kgのよく運動する20代男性は、1日に3133kcalを消費する。

ここから計算すると、体重34kgのミニオンたちは1515kcal。

これだけのエネルギーをバナナから摂るには、可食部90gのバナナが20本必要だ。

ミニオンズは目測200人ほどいたから、すると1日4千本!

近所のスーパーでバナナを買ってくると、5本で298円だった。

するとミニオンズの食費は1日24万円、1ヵ月720万円、年間8700万円!

これだけの食費を出しているのは誰か?

やはりミニオンたちがボスと慕う怪盗グルーでしょうなあ。

強い悪党についていくのも納得の、ミニオンズの生きざまである。

空想科学研究所主任研究員

鹿児島県種子島生まれ。東京大学中退。アニメやマンガや昔話などの世界を科学的に検証する「空想科学研究所」の主任研究員。これまでの検証事例は1000を超える。主な著作に『空想科学読本』『ジュニア空想科学読本』『ポケモン空想科学読本』などのシリーズがある。2007年に始めた、全国の学校図書館向け「空想科学 図書館通信」の週1無料配信は、現在も継続中。YouTube「KUSOLAB」でも積極的に情報発信し、また明治大学理工学部の兼任講師も務める。2023年9月から、教育プラットフォーム「スコラボ」において、アニメやゲームを題材に理科の知識と思考を学ぶオンライン授業「空想科学教室」を開催。

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