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祝!『HUNTER×HUNTER』連載再開! 気になるクラピカの「絶対時間」リスクを考える!

柳田理科雄空想科学研究所主任研究員
イラスト/近藤ゆたか

こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。

マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。

さて、今回の研究レポートは……。

10月24日発売の「週刊少年ジャンプ」47号で、ついに『HUNTER×HUNTER』の連載が再開した!

2018年11月からずっと休載していたので、実に3年11ヵ月ぶりだ!

11月にはコミックス第37巻も出るというからスバラシイ。

王位継承戦や、ヒソカvs幻影旅団など気になることはたくさんあるが、なかでも気がかりなのはクラピカである。

そこで本稿では、クラピカの今後に大きな影響を与えそうな“絶対時間(エンペラータイム)”について考えたい。

少し復習しておくと、『HUNTER×HUNTER』世界の礎である念(ネン)能力には、「強化系」「変化系」「具現化系」「特質系」「操作系」「放出系」がある。

どの型になるかは、生まれ持つオーラの質によって決まっており、他のもある程度は修得できるが、限界がある。特質系だけは、生来特質系でなければ修得できない。

だが、“絶対時間”を発動すると、特質系になれると同時に、すべての系の力を100%発動できる!

それだけに、リスクも大きい。“絶対時間”を発動すると、寿命が大幅に縮むというのだ!

◆あまりに衝撃的な制約

“絶対時間”はクラピカの生い立ちと関係がある。

クラピカは、「幻影旅団」に皆殺しにされたクルタ族の生き残り。

クルタ族の瞳は普段は茶色に近いが、感情が激しく昂ると燃えるような緋色に変わり、その状態で死ぬと、瞳が緋色のままとなり、「緋の眼」として高値で取引きされる。

幻影旅団がクルタ族を惨殺したのも、緋の眼を狙ってのものだった。

クラピカは幻影旅団に復讐し、同胞の目を取り戻すためにハンターを目指した。

――ここまでコミックス第1巻で明らかになっていた。

第3巻で、クラピカの瞳が初めて緋色に変わる。

巨漢の相手を横殴りのパンチで一回転させ、拳を当てたまま頭部を床に叩きつけた。

相手の体重を120kgと仮定すると、体重59kgのクラピカは時速900kmのパンチを放った計算になる!

このときはまだ念能力を身につけていなかったから、目が緋色になるだけでも、かなり強くなるようだ。

これに加えて“絶対時間”である。

第9巻、幻影旅団で体力最強のウボォーギンを圧倒!

決め手は“束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)”で相手の念を封じたこと。

だがこれにはリスクが必要で「幻影旅団以外の相手を鎖で攻撃すると自分が死ぬ」という“制約”と“誓約”を自らに課していたのだ。

第14巻以降、クラピカは表舞台から姿を消す。

重すぎるリスクを背負いながらも頑張っているんだろうなあ……と思っていたら、第33巻で再登場し、第35巻でもう一つのリスクが明らかになったのだ。

そのシーンは衝撃的だった。

クラピカは“絶対時間”が強制的に続く事態に陥る。

解除できるのは1週間後。

ここでクラピカは不可解なことを口にする。

「1時間で150日…24時間で10年…1週間で…現実的ではないな……」

そして、次のページでナレーション。

「“絶対時間の制約”発動時 一秒につき一時間!! 寿命が縮む…!!」

なんと、“絶対時間”を1秒発動すると、寿命が1時間縮む!

1時間=60分=3600秒だから、3600倍のスピードで死が迫るということだ。

なんというキビシイ制約か……!

◆時間は限られている

クラピカはいったいどうなってしまうのだろうか。

コミックス第35巻が発売された2018年、18歳男性の平均余命は63.57歳だった。

ここから、クラピカもあと63.57年生きるはずだったとしよう。

“絶対時間”を発動すると、その時間の3600倍だけ死期が早まるから、発動し続けた場合、63.57年の「3600分の1」で寿命が尽きる。

それは、6日と10時間48分後!

クラピカが「1週間で…」の計算を途中でやめたのも当然である。

イラスト/近藤ゆたか
イラスト/近藤ゆたか

これはもう、考え方を根底から改めたほうがいいだろう。

“絶対時間”は生涯トータル6日10時間48分=154時間48分=9288分しか使えないワザなのだと!

そう肚を括れば、クラピカの人生設計も見えてくる。

たとえば、1回の戦いで5分発動するとしたら、生涯に1857回しか使えない。

そういうワザを1週間に1回、5分ずつ発動したら、35年後に享年53歳で人生が終わる。

1日に1回だったりしたら、たった5年後に23歳で早逝してしまう……!

う~む、考え方を変えてもやはり心配だ。

クラピカはどうなってしまうのか!?

その運命は、これからの連載でハッキリと描かれるだろう。

ドキドキしながらも、見守り続けたいと思います。

まずは、祝・連載再開!

空想科学研究所主任研究員

鹿児島県種子島生まれ。東京大学中退。アニメやマンガや昔話などの世界を科学的に検証する「空想科学研究所」の主任研究員。これまでの検証事例は1000を超える。主な著作に『空想科学読本』『ジュニア空想科学読本』『ポケモン空想科学読本』などのシリーズがある。2007年に始めた、全国の学校図書館向け「空想科学 図書館通信」の週1無料配信は、現在も継続中。YouTube「KUSOLAB」でも積極的に情報発信し、また明治大学理工学部の兼任講師も務める。2023年9月から、教育プラットフォーム「スコラボ」において、アニメやゲームを題材に理科の知識と思考を学ぶオンライン授業「空想科学教室」を開催。

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