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ローソンとauのアドノマスクって何?

渡辺広明コンビニジャーナリスト/流通アナリスト
ローソン×auのアドノマスク (筆者撮影)

現状、日本で1番多くの人が持っている商品は"アベノマスク"だ。使用しているのを見かける事はあまり無いが、この商品は筆者が生まれて53年間においても、国民の誰もが最も所有した商品ということも間違いないだろう。

従業員用のアドノマスク

コロナ禍当初のマスク欠品騒動も落ち着き、布製のマスクがファッションアイテムとして多数発売されるなどマスクの多様化が進んでいる。

そんな中、ローソンとauは、"アドノマスク"という従業員用のauのキャンペーン広告入りマスクを10月27日にローソン全店に無償配布した。希望する店舗の従業員が活用するようだ。このマスクの狙いは、ローソンで現在実施中のau Payに関連したキャンペーンの認知度向上と、店舗、従業員のマスクの費用負担軽減となる。

47都道府県、1万3666店(2020年9月末時点)の店舗網を持つローソンの店頭は、リアルな広告発信拠点としては、セブン-イレブンやファミリーマートと共に日本でもトップクラスの価値がある媒体となっている。年間約42億人の買い物客があり、買い物をしない顧客も含めると60億人近くが来店すると推察される。auキャンペーンの広告入りマスクの着用は11月30日までとなり、今後はマスクという新たな広告スペースとしての可能性にチャレンジするという。

大手飲料メーカーの関係者に話を聞くと、

「メディアの広告媒体はテレビからネットまで多様化し、それにより広告の効果が薄れてきている。コンビニに新商品を展開する事は顧客に商品を認知させる宣伝場所としても必要不可欠となっている」

と、メーカーにとってはコンビニでの品揃えは売上・利益確保するだけではない場所となっているようだ。

2004年にアドティッシュ

筆者がローソンのバイヤー時代、いち早くコンビニの広告媒体価値に目をつけ、2004年にティッシュの箱を広告媒体とした"アドティッシュ"を王子ネピアと共同開発して展開した。当時の月刊誌の1ページの広告費と同程度の広告費を設定し、30万個限定でティッシュボックスをラッピング広告として販売した。広告費で利益を補填する事により、顧客に高品質で買いやすい価格でティッシュを提供する事が可能となった。

ローソンの過去のアドティッシュラインナップ
ローソンの過去のアドティッシュラインナップ

ティッシュは、コンビニに置かれる商品では大きいほうで、店内の買い物客にも告知出来て、買われた顧客は家庭やオフィスの目立つ場所に1ヶ月以上置かれるため、広告効果が高い。フジボウアパレルのBVDの130周年キャンペーンでは、雑誌からの応募よりもアドティッシュからの応募が多かったという結果にもなった。

第一弾は、歌手のMISIAがデザインしたパンダのキャラクターをデザインしたティッシュでスタートし、普段ティッシュを緊急で買う顧客以外の購買も促し売上がアップした。その後、Panasonic、SMBC日興証券、USJ、花王、ユニリーバ、ライオン、キリンビバレッジ、UCC、日産など大手広告クライアントの出稿があったが、バイヤーの筆者自身が営業していた事もあり、自身の担当が外れた後は、誰でも展開出来るように仕組み化出来ず、現状では不定期での展開となってしまっている。

今回のアドノマスクは、従業員向けの広告媒体企画だが、コンビニはコロナ後にビジネス立地を中心に厳しい売上となっているため、店舗網や店舗によっては立地特性などポテンシャルを活かした広告展開を実施し収益アップを図る施策が今後本格的に始まるのかもしれない。

コンビニジャーナリスト/流通アナリスト

渡辺広明 1967年生まれ、静岡県浜松市出身。コンビニの店長、バイヤーとして22年間、ポーラ・TBCのマーケッターとして7年間従事。商品開発760品の経験を活かし、現在 (株)やらまいかマーケティング 代表取締役として、顧問、商品開発コンサルとして多数参画。報道からバラエティまで幅広くメディアで活動中。フジテレビ「Live News a」レギュラーコメンテーター。 「ホンマでっか⁉︎TV」レギュラー評論家。全国で講演 新著「ニッポン経済の問題点を消費者目線で考えてみた」「コンビニを見たら日本経済が分かる」等も実施中。

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