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コンビニのレジ袋有料化がスタート 7月1日0時からの取材で分かった「実情」と「課題」

渡辺広明コンビニジャーナリスト/流通アナリスト
マイバックを推奨するセブンイレブンの店頭幕 著者撮影

7月1日より、プラスチック製レジ袋の有料化が、全小売業で義務化された。繰り返し使用できる厚いもの、一部環境に配慮したものを除き、袋は有料となるから、顧客・店ともに購買環境は変化することになる。「もっとも身近な小売」であるコンビニはどうなるか。7月1日0時からの取材に基づくレポートである。

◆有料ですが…

まずは0時、自宅近所のコンビニへ。ペットボトル飲料とボールペンの替え芯をレジに持っていった。レジに立つ外国人男性店員は、ポイント処理など普段通りのオペレーションを、つつがなくすませていく。が、スキャンを終えた商品は、レジカウンターに置かれたまま。「袋いりますか?」の、いつもの流れにならない。

そこでこちらから「袋はありますか?」と聞いてみると、レジに貼られたポップを指差し、レジ袋が有料化された旨を説明してくれた(本来のマニュアル通りであれば、店員の方から要不要を尋ねるのだろうが……そこは有料化の初日ということで大目に見たい。そのためチェーン名は伏せる)。エコバックを出すと、無言でレジ袋に商品を詰めてくれた。余談ながら出身地を聞いてみると、ネパールからの留学生とのことだった。

つぎは始発が始まる時間帯、駅の近くのコンビニへ。ゼリー飲料とお菓子をレジへ持っていくと、こちらの外国女性店員はまず「袋にお入れしますか?」と聞いてきた。「お願いします」と答えると、「有料ですが大丈夫ですか?」。では結構ですと答え、やはりエコバックを出すと、こちらは自分で袋詰をしてほしいとのこと。

チェーン方針や店舗により、ばらつきのある対応になっているようだ。こうした試行錯誤が繰り返されながら、新しい買い物スタイルの「定型」がカタチ作られていくのだろう。それはエコバックを出すことに慣れない、私を含めた客側も同様だ。

◆袋購買、男女の違い

7月1日より早くレジ袋が有料化された食品ミニスーパー、そしてコンビニ各社の事前実験では、レジ袋を購入する顧客は3〜4割程度だったという。上記の視察の後、個人的なツテのある店舗を取材したが、オーナーや従業員の話を聞くかぎり「マイバックや自前の鞄を利用する人がおよそ8割」との答えが返ってきた。これは朝の時間帯の買い物が、ペットボトル1本やおにぎり、あるいはタバコなど1〜2品の購買が多いためだろう。夜にかけ、有料レジ袋を利用する割合はもう少し増えると思われる。

1時間半ほど観察させてもらったある店舗では、予想されていたようなレジ対応の混乱を全く見ることがなかった。国を挙げての施策という事もあり、お客の理解度も高い。予想したよりもスムーズに移行しているように感じられた。

ただし顧客の「性別」による違いも見受けられた。日常的にスーパーマーケットを利用することが多いためか、女性客はマイバックを持参している割合が高いのだ。使用する「バッグ」が男性のそれより小ぶりなのも理由だろうか。ヒアリングした限りでは、レジ袋購買者のうち女性は1〜2割程度と低かった。

レジ袋とエコバッグになるハンカチ 著者撮影
レジ袋とエコバッグになるハンカチ 著者撮影

一方、レジ袋購入の7〜8割は男性客が占める。マイバックを持ち歩く習慣がないのだ。コンビニのレジ袋有料化が始まったことで、今後数ヶ月かけ、男性の袋の持ち歩き率はこれから一気に増えると思われる。セブン-イレブンでは今年1月から「エコバッグになるハンカチ」という商品を発売していたが、ターゲットはこうした男性客ではないだろうか。ハンカチの形から、袋持参を「啓蒙する」ということだ。

◆バッグにお入れしますか?の混乱

少し混乱を招きそうなのが、マイバックを持参した顧客への「お手持ちのバッグにお入れしますか?」の対応だ。先行する食品ミニスーパーの事例、コンビニ店舗の実験結果では、9割強が「店員に入れて欲しい」と答えるという。

かねてよりのコロナ禍もあり、エコバックや再利用のレジ袋で店員が作業することには、衛生面での問題が指摘されている。とはいえ、レジスペースに余裕のあるスーパーとちがい、コンビニには顧客が商品をマイバックに詰める場所の余裕がないことも多い。先述した視察の2店舗目は顧客が袋詰めすることになっていたが、いずれは店員が作業する接客が、レギュレーションになってくる気がする。もっとも、買い上げ点数が少ない場合は、お客が自分でマイバックに入れるほうが効率的だ。ケースバイケースという、従業員にとってはもっとも悩ましいオペレーションがしばらく続くのかもしれない。

オペレーションという点では、袋の有無を尋ねるやり取りや、場合によって生じるマイバックへのサッカー(袋詰め)作業などで、1人あたりのレジ接客時間は従来から5〜15秒ほどプラスとなりそうだ。仮に1日の来店が900人の店舗で平均10秒、接客時間が延びたとすると、1日の接客時間は2時間半ほど増える。かねてより人手不足が懸念されるコンビニ業界、セルフレジの活用促進が今まで以上に重要になってくる。

なお「袋は結構です」という顧客のうち、いわゆるエコバッグの利用者は約6割、レジ袋の再利用は約3割、単品買いなど1割は手持ちのカバンに入れるといったところだった。

経済産業省によると、国内の廃プラスチック量に対して、小売業で使われるレジ袋使用量は2%前後。決して高い割合ではないものの、年間累計175億人弱が利用するといわれるコンビニでのレジ袋が有料化されることは、脱プラスチックを中心とした日本人のエコ意識を大きく変えるするキッカケになりそうだ。今後は割り箸やスプーン、ストロー、お手拭きなども、有料化していく可能性もある。便利を意味する「コンビニエンス」ではじまったレジ袋の有料化は、日常における不便との共生の入口になっていくのかもしれない。

コンビニジャーナリスト/流通アナリスト

渡辺広明 1967年生まれ、静岡県浜松市出身。コンビニの店長、バイヤーとして22年間、ポーラ・TBCのマーケッターとして7年間従事。商品開発760品の経験を活かし、現在 (株)やらまいかマーケティング 代表取締役として、顧問、商品開発コンサルとして多数参画。報道からバラエティまで幅広くメディアで活動中。フジテレビ「Live News a」レギュラーコメンテーター。 「ホンマでっか⁉︎TV」レギュラー評論家。全国で講演 新著「ニッポン経済の問題点を消費者目線で考えてみた」「コンビニを見たら日本経済が分かる」等も実施中。

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