J2レノファ山口FCは6月27日、維新みらいふスタジアム(山口市)で大宮アルディージャと対戦し、0-1で敗れた。新旧監督対決として注目を浴びた試合は、大宮の勝利となった。レノファは15位のまま。

明治安田生命J2リーグ第20節◇レノファ山口FC 0-1 大宮アルディージャ【得点者】大宮=黒川淳史(前半32分)【入場者数】2767人【会場】維新みらいふスタジアム

 レノファは今年から渡邉晋監督が指揮を執っている。対する大宮は6月に監督交代に踏み切り、昨シーズンまでレノファを率いた霜田正浩監督が就任した。両チームとも成績は厳しい状況にあり、試合開始前の段階でレノファはリーグ戦で5戦続けて勝利がなく、大宮は14戦連続で白星から遠ざかっていた。

 順位こそレノファは上に立っているが、クラブ規模やチームとしての経験値、個人の実力では明らかに大宮が上回る。渡邉監督は6月24日の練習後、大宮戦に向けて次のように語っていた。

 「クラブ規模などを考えれば、(大宮は)J1にいるべきクラブ。そういうクラブが監督交代という大きなカンフル剤でこれから上がろうとする状況なのであれば、我々は最大限に持てるものを出して襲い掛かっていく。挑戦していかなければ到底倒せない」

 ともに戦術を重視し、攻撃面での主導権掌握を目指す指揮官の対決。レノファはそれに加えて、メンタル的にも「襲い掛かる」ようなサッカーを見せられるかが、勝敗のポイントでもあった――。

序盤は激しい攻防

 試合最序盤は、そのような互いの勝利へのモチベーションが噛み合い、球際に厳しい攻防が続く。レノファは互角以上に渡り合い、「前半の立ち上がりはうまく前線で引っかけることができていた」(池上丈二)というポジティブな内容でゲームに入ることに成功する。

イバをチェックするレノファの守備陣
イバをチェックするレノファの守備陣

 しかし、ゲームが落ち着いてくると、大宮が主体的にボールを動かすようになる。

 試合を俯瞰して見たときに先手を打っていたのは大宮だった。中盤の布陣に手を加え、逆三角形ではなく三角形を採用。石川俊輝を2カ月半ぶりに先発させて三門雄大とボランチを組み、中盤の底からのゲームメークを安定させる。三角形の頂点になるトップ下の小島幹敏はプレーエリアの広さを生かし、自由にボールを引き出した。

 対照的だったのがレノファ。最初の10分こそ前線でボールを奪えていたが、徐々に自陣からボールが出せなくなってしまう。「我々のビルドアップで少し圧を受けているようなところがあった」と渡邉監督。プレッシャーそのものは「今まで対戦してきた相手に比べて特別にすごかったというようには感じなかった」が、自陣でのパスが安定しなかった。

 レノファのボランチは若い田中陸と神垣陸。この二人を中心にゲームを組み立てたかったが、実際にはさらに一列下のセンターバックがボールをさばくような場面が増加する。

 もっともセンターバックが絡むことでのチャンスもあり、前半19分にはセンターバック・楠本卓海のフィードをきっかけに前線にボールを送り、右サイドでシンプルにつないでクロスを入れたり、跳ね返りから池上丈二がシュートを放ったりと瞬間的にはゴールを脅かす。

 だが、全体の流れは不変。30分過ぎにはついに均衡が破れる。

 大宮は前半32分、小島がレノファ陣中央でボールを運ぶと、斜めのパスで左のペナルティーエリア脇に供給。ハイスピードで駆け上がった左サイドバックの翁長聖が追いついてそのままクロスを入れると、GKが飛びついたあとのこぼれ球に黒川淳史が反応し、コンパクトに右足を振ってゴールに流し込んだ。

こぼれ球からゴールを狙った黒川淳史(左から2人目)が先制点
こぼれ球からゴールを狙った黒川淳史(左から2人目)が先制点

 「クロスに入っていくということは意識していた。聖くんが上げたのをGKがはじいて、最後まで詰めることができたのがゴールにつながった」(黒川)

 今シーズン初ゴールとなった黒川がゴールネットを揺らし、大宮が先制する。戻りながらのディフェンスになったレノファは、あっさりとクロスとシュートを許した形になった。

サイド攻撃を狙うが…

 後半に入っても大宮のシュートが多い状況となるが、時間の経過とともに、レノファにチャンスが出てくるようになる。

 転機は後半16分で、左ウイングバックの位置に石川啓人を投入する。石川は一つ前の試合も途中でピッチに立ち、鋭いシュートで神垣のゴールにつながる流れを生み出していた。今節もその特徴を発揮。ボトムサードでブロックを築くようになる相手に対して左から攻め上がり、何度かクロスボールを入れていく。

サイドを駆け上がる石川啓人
サイドを駆け上がる石川啓人

 大宮から見れば一転してレノファの攻撃を受け続けることになるが、自ゴール前のコンパクトさは崩れず、クロスに対しても確実に対応。シュートに持ち込まれてもGK上田智輝のファインセーブが冴(さ)えた。大宮は守備陣の役割が明確だったとも言えるが、勝利への気持ちが出ていたとも言える、鬼気迫るディフェンスだった。

 レノファにとってはクロスボールは入るが得点ができない状況。ゴールが遠く、後半33分にはスピードのある草野侑己とシュートレンジの広い浮田健誠をピッチに送り出し、同40分には守備の枚数を削って高い打点のヘディングシュートがある梅木翼を投入する。

 それらのリスクを負ったパワープレーで好機をゴールに結びつけようとするが、ブロックは堅牢なまま。レノファは最後までゴールをこじ開けることはできなかった。

 互いにいろいろな策を出して戦ったゲームは大宮が勝利した。慣れ親しんだスタジアムに、アウェーチームの監督として乗り込んだ霜田監督が歓喜の輪に包まれていた。

レノファらしい気迫とスタイルを

 リーグ戦で6戦勝ちなしとなったレノファ。佐藤謙介が不在だったとはいえ、田中と神垣のコンビでゲームを作れていた試合はあり、中盤のゲームメークだけに課題が残ったとは言えない。相手がスペースを埋めていたり、ボランチがプレッシャーを感じている時に、誰がどこでボールを受けるのがベストなのか、周りの選手たちも状況を感じ取って動かなければならなかった。

 とはいえ、もっと根本的な部分で、大宮をひっくり返すだけのパワーを持てていたのかは疑問が残る。個人の力で開きがある中で、渡邉監督が必要だと話した「襲い掛かる」サッカーをどれだけ表現できただろうか。もしレノファらしさの一つをそこに求めるなら、目を背けたくなる試合だった。

 今年は4チームが降格するという厳しいレギュレーションが設けられている。レノファは2年を掛けてJ1へ行くという目標を掲げているが、20試合を終えての勝ち点21は上よりも下が気になってしまう数字だ。

 次節で前半戦の戦いは終わり、シーズンは後半戦に入る。ただ、この夏は五輪開催による中断が入るため、チームはどのようにも変わっていける可能性は残す。成績への執着が求められながらも、レノファらしいサッカー、維新公園のスタジアムに期待されるショーは何かという自問自答も求められる試練の夏が始まっている。

 前半戦を締めくくる次戦はレノファはアウェー戦。7月3日に敵地で水戸ホーリーホックと対戦する。次のホーム戦は7月11日午後7時キックオフ。ホームにジュビロ磐田を迎える。