黒星も手応えあり! ヘナンが今季4点目 サイドバックも躍動/レノファ山口

先制点を決めたヘナン(背番号3)=筆者撮影、この記事の他の写真・図も

 J2レノファ山口FCは9月27日、維新みらいふスタジアム(山口市)でファジアーノ岡山と対戦。ヘナンのゴールで先制したものの、1-2で逆転負けを喫し、後半戦は黒星スタートとなった。

明治安田生命J2リーグ第22節◇レノファ山口FC 1-2 ファジアーノ岡山【得点者】山口=ヘナン(前半24分)岡山=上田康太(前半33分)、山本大貴(後半37分)【入場者数】2345人【会場】維新みらいふスタジアム

 レノファは特別指定選手の橋本健人(慶應義塾大在学中)が2試合連続で左サイドバックで先発した。前節の千葉戦では一列前に入った田中パウロ淳一、森晃太と連係して相手の隙を突き、決定機を創出。「試合の3日くらい前」(橋本)に再合流したという準備期間の短さを感じさせないプレーを見せている。

レノファの先発布陣。4-3-3は慣れたシステムだ
レノファの先発布陣。4-3-3は慣れたシステムだ

 今節はフォーメーションが4-4-2から4-3-3に変わり、田中パウロや森がプレーしていた一列前のポジション(左サイドハーフ)は不在。橋本には左ウイングに入った高井和馬との連係でボールを運ぶという役割が求められた。

 前節から中3日と今回もプレーを合わせる時間は限られたが、左サイドでのコンビネーションは今節も数多くのチャンスを作っていく。

ヘナンが先制点 セットプレーからの一撃

 試合序盤はレノファはやや劣勢で、前半21分に浮田健誠がヘディングシュートを放つまではゴールを脅かせていなかった。ただ、浮田のシュートは得点には至らなかったとはいえ、スムーズな流れで相手ゴールに接近。これがレノファがリズムを作るきっかけになった。

左サイドでボールを運ぶ橋本健人
左サイドでボールを運ぶ橋本健人

 この場面ではセンターバックの眞鍋旭輝が右サイドの深い位置へとボールを飛ばし、小松蓮がゴールライン際で回収。それと同時に左サイドの選手たちもパスを受けやすいポジションへと駆け上がり、橋本はペナルティーエリアの手前でボールを呼び込んだ。さらに橋本は左サイドを張った高井にボールを預けて、自らはペナルティーエリアの中へと侵入。再びパスを引き出してクロスを送り、浮田がヘディングシュートを放った。

 攻撃を広げる眞鍋のアタッキングパス、前線での地上戦でのサイドチェンジ、再現性の高さを目指しているクロスからのシュート――。いずれも近年のレノファらしさを凝縮したようなコンビネーションを見せ、自分たちで流れを引き寄せることに成功。その3分後に先制点を手にする。

 前半24分、レノファはペナルティーエリアの右側で池上丈二が倒され、FKのチャンスを獲得。そのまま池上がセットしてクロスボールをゴール前へと送ると、ニアサイドの競り合いで生じたこぼれ球にすぐにヘナンが反応。コントロールしたシュートを右隅に突き刺した。

 「セットプレーで普段から練習しているところだった。その成果を出せたと思う。ボールが来てしっかりトラップし、右足を振り抜いた」(ヘナン)

 ヘナンの今シーズン4得点目で1-0としたレノファ。ボールはその後も保持し続けるが、リードは10分も続かなかった。最大限に注意を払っていた岡山のアタッカーに振り回されてしまったのだ。

後半は決定機を決めきれず…

 岡山の左サイドハーフでプレーする上門知樹には、戦前から警戒すべき選手として霜田正浩監督が名前を挙げていた。レノファは左サイドの選手たちが攻撃で前掛かりになる一方、右はサイドバックの田中陸やボランチの高宇洋が中心となって、対面する上門ら相手のサイドアタックに対応。上門が自由にボールを持てる時間はそれほど多くはなかった。

 しかし前半33分、一瞬の隙を破られて上門にドリブル突破を許すと、体を寄せた高の足が掛かり、PKを与えてしまう。PKは上田康太が左足で決め、1-1。試合は振り出しに戻った。

高井和馬はボールを失う場面が少なく、落ち着いて動かした
高井和馬はボールを失う場面が少なく、落ち着いて動かした

 レノファは前半の終了間際にも高井と橋本の連係からクロスを上げ、浮田が連続してシュートを放つ。だがGKポープ・ウィリアムの好セーブに阻まれ、前半をタイスコアで折り返す。

 後半に入っても大きな流れは変わらず、レノファは立ち上がりから優勢に試合を進める。右に左にと散らしながらチャンスメークし、後半の2分過ぎまでに2度の決定的なシュートを放った。だが、高井のヘディングシュートはクロスバー、浮田の鋭いミドルシュートは左のポストを叩き、快音こそ響けど、ゴールネットを揺らす乾いた音を聞くことはなかった。

 連動性を生かしたチャンスは後半の45分間を通じて何度も作っていくが、追加点はゼロ。チャンスとピンチは表裏一体で、決めきれないと、流れは必然と相手に渡ってしまう。

 「シュートがバーやポストに嫌われるという運もあるが、それでも取られてはいけない時に取られる。簡単にPKを与える。そういうところが僕らの足りないところだ」(霜田監督)

 試合を決めたゴールは後半37分。レノファではなくアウェーチームがネットを揺らした。カウンターから上門が緩急を付けたドリブルで左サイドを突破すると、サイドバックの徳元悠平が上門を追い越すロングスプリントでボックス内に侵入。スルーパスを引き出してクロスを送り、最後は途中出場の山本大貴が飛び込んだ。

 これで勝負が決し、レノファの連勝は2でストップ。岡山は2連勝となった。

サイドバックが見せたレノファらしさ

 結果だけを問えば、どれほどの大敗でも、今節のような1-2の試合でも、黒星であることに変わりはない。ただ、内容面では充実していた。明るい話題を探さなければ見つからないような今シーズン序盤戦とは大きく異なる90分間だ。警戒していた選手にブロックを破られたのは反省点とはいえ、攻撃の内容面では手応えがあった。

後半12分、田中陸(右)はスルーパスからゴール前へと飛び出した
後半12分、田中陸(右)はスルーパスからゴール前へと飛び出した

 得点場面ではないが、後半12分頃の攻撃が「手応え」の部分を象徴する。守備からの素早い切り替えで攻撃へと転じ、敵陣中央で浮田が左の高井に展開。高井は相手を引きつけてから中央を走る橋本に横パスを送ると、橋本はすぐさまスルーパスを差し込んだ。ここに走り込んだのが右サイドバックの田中陸で、ディフェンスラインの背後を取ってゴールに迫った。

 残念ながら相手のブロックが間に合ってしまい、シュートこそ打ち切れなかったが、手元のスコアブックに背番号を記録するだけでも精一杯なほどのリズミカルなボール回しだった。個々の選手の判断も冴えていた。橋本には高井の外を回るという選択肢もあったが、高井がうまく相手選手を引き寄せたことで、よりゴールに近いエリアにスペースを作った。前半はリスクコントロールに回っていた田中陸もチャンスを見てゴール前まで突破し、あと一歩まで接近。その一方で後方ではヘナンや高がカウンターに備えたリスク管理をしていた。

 サイドバックが積極的に攻撃参加するだけでなく、最善の判断をしてボールを失うことなくフィニッシュまで近づいた。試合序盤からクロスからのシュートという形は見せていたが、足元でボールをつなぎながらチャンスを広げるという伝統的なレノファらしさも、ここで述べたシーンのように何度も披露する試合となった。見応えもあれば、手応えも十分にある90分間だったと言っていいだろう。

チームトップの6得点を挙げている浮田健誠。FW陣の活躍が後半戦のカギを握る
チームトップの6得点を挙げている浮田健誠。FW陣の活躍が後半戦のカギを握る

 あとは決めるだけだ――。それは多くの人が抱いた感想ではないだろうか。もちろん決定力を付けるというのは、サッカーの最も難しい部分だ。しかし、「あとは決めるだけ」と言えるまでに攻め方が浸透してきたのは間違いがなく、その言葉はレノファの現在地を的確に示している。すなわち決定機数の割に得点の少なかった試合は成長の証であり、成長の余地でもある。まだ道半ば。霜田監督は「決定的なシーンは作れている。何とか決めきる力を付けていかなければならない」と前を向いた。

 レノファは次戦もホームゲーム。9月30日午後7時から、維新みらいふスタジアムでジュビロ磐田と対戦する。