再開後初勝利! レノファらしさ戻り4得点。琉球に快勝/レノファ山口
J2レノファ山口FCは7月18日、山口市の維新みらいふスタジアム(みらスタ)でFC琉球と対戦し、4得点を挙げて快勝した。Jリーグ再開後初勝利。勝ち点を7に積み上げた。
明治安田生命J2リーグ第6節◇レノファ山口FC 4-1 FC琉球【得点者】山口=イウリ(前半10分)、高井和馬(同42分)、ヘナン(後半12分)、田中陸(同38分)琉球=茂木駿佑(前半7分)【入場者数】1631人【会場】維新みらいふスタジアム
Jリーグの新型コロナウイルス感染症対応ガイドラインに基づく「超厳戒態勢」での開催で、入場者数や応援方法に厳しい制限が設けられたものの、Jリーグ再開後のみらスタでは初めて観客を入れての試合となった。
サイドで優位性。逆転に直結
レノファはイウリと小松蓮の両FWがそろって先発し、ベースとなるフォーメーションを4-4-2に変更。4-3-3に比べれば中央でボールをつなぐ選手が不足するが、試合を通してサイドでの仕掛けが有効に作用し、チャンスを引き寄せた。
フィールドプレーヤーの大半が右サイドに寄った局面では、高井和馬か安在和樹のどちらかが左サイドを張って、ボールを呼び込んだ。昨シーズンの前半戦までならば高木大輔(ガンバ大阪)が担っていたようなポジショニングで、当時は前貴之(横浜F・マリノス)が大きなサイドチェンジを高木に向けて入れていた。今節は川井歩やボランチに入った池上丈二、右のサイドハーフを担った吉濱遼平などがサイドを変える動きを入れ、高井は何度も前を向いた状態でボールを回収。安在とも絡んでチャンスを作っていった。
ピッチの右側5分の3を使いながら、一番左の5分の1で違いを作ったという表現をしてもいいだろう。もちろん逆のパターンもあり、今節はサイドでの仕掛けが良い方向にはまる。
試合の90分間を見ていくと、先制したのは琉球だった。早い時間帯から互いにシュートシーンが多い展開となっていたが、ゴールはCKから。前半7分、琉球は左のCKを得て風間宏希がクロスを入れ、中央で競ったはね返りから茂木駿佑が右足でゴールネットを揺らした。
レノファから見れば4試合連続となるセットプレー絡みの失点。嫌な流れに引きずり込まれそうになったが、今節はずるずると後退せず、すぐに同点ゴールを奪取する。
3分後の前半10分、レノファは自陣からリズム良くボールをつなぎ、敵陣中央から吉濱が右サイドに展開。深い位置でパスを受けた川井がすぐにクロスボールを送り、ぴったりのタイミングで飛び込んだイウリがヘディングシュートをたたき込んだ。
サイドハーフの吉濱が内側に絞り、サイドバックの川井が外を駆け上がるという、オーソドックスながら、相手にとってはつかまえにくい関係性の良さを発揮。イウリは身体能力を生かした。
「右サイドアタッカーについては、選手のキャラクターによって役割が変化してもいいと思う。遼平がいれば中に入ったり、スルーパスが出てくる。川井がオーバーラップできる。いろいろなコンビネーションが生まれる」(霜田正浩監督)
狙い通りの形で同点としたレノファ。その後もピッチの幅を使って組み立て、イウリを中心にゴールに迫った。同42分には高井が逆転弾。相手DFにプレスを掛けてボールを奪い、GKとの1対1を冷静にゴールへと振り抜いた。
若手投入が奏功 流れ渡さず
2-1で迎えた後半も、レノファがサイドの攻防で優位に立ち、相手陣内でプレーしていく。
後半12分には左からのCKにヘナンが合わせて追加点。2点差にリードを拡大する。
ヘナンは2019年5月にアキレス腱断裂の大けがで離脱。半年を掛けて復帰し、ポジションをボランチに転向した。前節は気持ちを前面に押し出してプレーしていたが、今節もハードワークでピンチをはねのけ、得点も奪取。ようやくリハビリや新しいポジションへのチャレンジが結実した。
同20分過ぎからは琉球がボールを動かす時間帯も出てくるようになる。レノファは次なる一手として、ユースに所属する16歳の河野孝汰、今季新加入の田中陸など若手を相次いで投入。一歩間違えばリードを失うリスクがあったが、「若手、ルーキーが出てくる。そうやってチーム力を上げるしか強化する道はない。全員で戦って行く」(霜田監督)とリスク以上のゲインを求めて、若手をピッチに送り出す。
策は奏功。河野はゴールこそなかったものの、決定機に顔を出してシュートに持ち込み、相手を自陣に押しとどめた。田中は後半38分、カウンターのチャンスに前線へと猛進。右サイドからイウリがディフェンスラインとGKの間に絶妙なクロスボールを入れ、受けた田中はためらうことなく左足を振った。
これが田中にとってのJリーグ初得点。試合を決定づけるゴールとなり、「ピッチに入るとき、監督からは守備だけではなく攻撃にも行ってこいと言われていた。結果を出せた良かった」と笑顔を見せた。
最終盤の琉球の猛攻をしのぎ、4-1でレノファが勝利。「超厳戒態勢」のため試合後のラインダンスはお預けになったが、好ゲームで連敗から脱出した。「魂のこもった試合を見に来てくれたサポーターに見せられてほっとしている」(霜田監督)。勝利が求められた試合は、レノファらしさを思い出す試合にもなった。
連敗ストップ 課題と収穫
何より4点を得たことが最大の収穫だ。サイドで優位に立とうとして実際に成功したのは述べた通りだが、前線ではイウリと小松の2トップが厳しくプレッシャーを与え続けた。高井の得点もプレスがはまった成果。全員守備からの全員攻撃はレノファの哲学と呼べるもので、中2日で迎えた試合ながらそれを表現できたのは今後につながる。
一方で、レノファのシュート数が15本であったのに対し、琉球も14本でほぼ同じ。それだけピンチもあった。
レノファのフォーメーションと琉球のフォーメーションは噛み合う部分が多く、マークははっきりしていたが、前線で奪えなかったときにどこでボールを取り切るかははっきりしていないように見えた。
シュートブロックやクロスブロックという紙一重のプレーでしのいだり、今季初出場のGK山田元気のファインセーブで難を逃れた面はあり、組織でどう守っていくかは次戦に向けて修正が求められる。
とはいえ、2月23日の開幕戦以来約5カ月ぶりの勝利は手放しで喜びたい。複数得点差での勝利に限れば昨年9月以来。サポーターの前で、十分に手応えのある熱戦となった。「サポーターが入れる試合で勝利につながる得点になった。いつも以上にうれしく感じる」。今季3点目を手にしたイウリはそう力を込めた。
レノファは次戦はアウェー戦で、7月25日にギラヴァンツ北九州と対戦する。公式戦での対戦は4年ぶりで、「関門海峡ダービー」がミクニワールドスタジアム北九州(北九州市小倉北区)で開催されるのは初めて。ただ、この試合もアウェー席を設けない「超厳戒態勢」で行われる見通し。
次のホームゲームは第8節のV・ファーレン長崎戦で、7月29日午後7時キックオフ。