レノファ山口:収穫なき大量失点。「連動型攻守」、どこへ?

サポーターの前に立つ選手たち=1日、山口市(筆者撮影。この記事の他の写真も)

 J2レノファ山口FCは9月1日、維新みらいふスタジアム(山口市)でジェフユナイテッド千葉と対戦し、0-4で大敗を喫した。2戦連続での4失点となり、得失点差はマイナスに転落した。

明治安田生命J2リーグ第31節◇山口0-4千葉【得点者】千葉=船山貴之(前半48分)、町田也真人(後半11分)、指宿洋史(同32分)、矢田旭(同51分)【入場者数】4499人【会場】維新みらいふスタジアム

高井和馬(後列右端)が2試合ぶりに先発した
高井和馬(後列右端)が2試合ぶりに先発した

繰り返された「鬼門」での失点

 ハイプレスを仕掛ける千葉に対して、自陣で受けるプレッシャーをいかに外し、相手陣に効果的に送り出せるかがレノファにとってはポイントだった。

 トレーニングから繰り返した成果が生き、前半は「自分たちの流れが多く、思ったようにゲームに入れた。自分たちの時間を長く作りながらのいい展開だった」(三幸秀稔)。2戦連続の先発となった高木大輔が左サイドの高い位置で、タイミング良く動き出してサイドチェンジのボールを回収。前半17分にはジュリーニョのパスを受けてドリブルで運び、シュートまで持ち込んだ。

サイドチェンジの受け手となった高木大輔
サイドチェンジの受け手となった高木大輔

 このシーンではJリーグ初先発となった千葉のGK大野哲煥の手中に収まるものの、レノファは高木をサイドチェンジの受け手にしていくつかのチャンスを作る。前半終盤は押し込んだ状態でゲームを進め、CKが連続。そのうちの1本ではこぼれ球からジュリーニョが強烈なミドルシュートを放ち、相手の選手に当たったボールはクロスバーをたたいた。ゴールまであと一歩という状態で、前半の2分のアディショナルタイムに入っていく。

 2節前の京都戦で後半46分、前節の大宮戦で前半47分と後半49分に失点していたレノファ。鬼門のアディショナルタイムで、ため息が漏れるまでには時間は掛からなかった。

 目標時間の2分経過まであと10秒ほどを残していたタイミングで、レノファはマイボールを失い、千葉にスローインを与えてしまう。これを跳ね返せれば前半をしのぎきるホイッスルが鳴ったのだろうが、そのまま千葉につながれて船山貴之に先制点を被弾。2節前から数えて4ハーフ連続でアディショナルタイムでの失点を許してしまった。

 イレブンは少なくないショックを受けて、ハーフタイムに入っていった。

連鎖するミス。反撃できず

 15分のインターバルで、霜田正浩監督は「逆サイドに展開したあともっと落ち着いてプレーしよう」「どんどん仕掛けてアグレッシブに行こう」と指示する。それは前半でできていたことの再確認とも言えたが、迎えた後半はピッチの幅を使うサッカーが質を落としていく。

 後半の立ち上がりこそ高木のポストプレーからオナイウ阿道がゴールを狙ったり、ジュリーニョのセンタリングに高井和馬が合わせたりと単発ながらもチャンスメークする。しかし後半11分、千葉にするするとボールを運ばれ、3カ月半ぶりの先発出場となった町田也真人にあっさりと追加点を決められてしまう。

ボールをコントロールする岸田和人
ボールをコントロールする岸田和人

 「今のチーム状況は、チャンスは作れるけれどなかなか決められず、崩されているわけではないがつまらない失点をしてしまう。失点すると追いかけるのにパワーが必要になる。いろいろなパワーを使うために、またミスが起きる。そういう悪循環の試合が続いている」(霜田監督)。この状況を打破するため、すでに投入していた池上丈二に加え、霜田監督はクロッサーとしての精度も上がってきていた岸田和人をピッチへ送り出し、点差縮小に向けた「パワー」の再点火を試みる。

 後半28分にはセンターバックのヘナンを下げて、3枚目の交代カードとして大崎淳矢を投入。攻撃色の強い顔ぶれとして、前掛かりにゴールを目指した。だが、攻め急ぎがゆえか、メンタルの落ち込みがゆえか、相手のプレッシャーの継続がゆえか、レノファはチャンスを引き寄せられないまま、イージーミスを散発。最終盤こそレノファが相手陣内へとボールを運ぶが、アタックはペナルティーエリアのラインをなぞるように進むだけで、ゴールに向かうものではなかった。

 パスミスからショートカウンターを受け同32分に指宿洋史に3点目を献上。さらには再びアディショナルタイムの同51分、GK大野のロングフィードから矢田旭に決められ、レノファは0-4で力尽きた。詰めなければならない点数差が時間とともに開いていき、負の連鎖はついに断ち切れなかった。

 「点を取りたい状態で前掛かりになっていたが、時間を掛けて守らなければならないところで、簡単に飛び込んだのが失点の原因だった」(藤嶋栄介)。失点シーンはあまりにもお粗末で、一歩の寄せ、数秒の守備へのスプリントがチームとしてできず、ほとんどプレッシャーを与えられないままシュートまで放たれた。藤嶋が指摘するように時間を使わせるディフェンスには全くならなかった。

スタイルを取り戻せ

個の力では突出した存在のジュリーニョ。どう生かすかがポイントだ
個の力では突出した存在のジュリーニョ。どう生かすかがポイントだ

 攻撃は前半は一定のクオリティーを保っていた。シュートがポストをたたいたシーンもあり、目には見えない「決定力」のわずかな不足でスコアを動かせなかったのかもしれない。

 ただ、後半は褒めるべきポイントが見つからない。後半途中からはジュリーニョが右の高い位置でパスを受けるようになるが、ジュリーニョはボールを持ったままマイナス方向に走る場面が見られた。このとき瞬間的にはバランスが崩れ中央は混雑、右サイドはブランクになって、次のパスコースが消滅。ジュリーニョの特徴をまだ周りに発信しきれていないのが一因だろうが、丸岡とも、ガンバ大阪に移籍した小野瀬康介とも違う動きに、周りが対応できていなかった。

 本来なら攻撃の起点になるべき池上もボールになかなか触ることができず、千葉が続けた厳しいマークは岸田のシュートチャンスも奪い去った。

 攻撃と守備を切り離すことなく連続させるのが、霜田スタイル。したがって無得点と4失点を別の問題で片付けてはならない。

 もし仮にジュリーニョの得点力だけに着目するなら、チームが彼の持つ個の力をどこまで引き出せるかが鍵を握る。ただ、前線で引っかけてショートカウンターに転じたり、球離れが良いリズミカルなパスワークで好機を広げたりする従前のスタイルからは離れていくだろう。個を生かそうとするあまり、全員守備・全員攻撃の路線とトレードオフになるのであれば、レノファは己のカラーを失うかもしれない。

 レノファは積み上げてきたサッカーがあるチームだ。ジュリーニョやオナイウ阿道に前を向かせる必要はあるが、ピッチ上に特別なプレーヤーを作るのではなく、11人で攻め、11人で守ることで、彼らのシュートチャンスを広げたい。

険しい表情でサポーターの前へと向かう選手たち
険しい表情でサポーターの前へと向かう選手たち

 もちろん、リーグ戦で11試合勝ちなしという現実は確かに重い。敗戦濃厚となった試合終盤、サポーターは鳴り物の応援を最小限にとどめ、一つのチャント(応援歌)だけを繰り返した。それでも簡単な失点が続く一方で、ゴールは遠いという状況が続き、0-4で大敗。サポーターからは温かな声も、厳しい声も飛んだ。霜田監督は「僕らはいつも応援してもらっている身。(サポーターが)怒るのはこういうゲームをした以上は仕方がなく、彼らにまた応援したいと思わせるようなプレーを僕らはしないといけない。僕らにとっての怒りの矛先は、それぞれ僕も含めて自分自身だ」と重苦しさに向き合った。

 キャプテンの三幸秀稔は「せっかくホームでこれだけのサポーターが集まってくれているのに、こういうゲームをしてしまう。申し訳ないという気持ちしかない」と声を絞り出し、累積警告のために次戦が出場できないことから、勝利を仲間に託しつつ、「1週間準備できる時間があるので、自分なりに自分のできることをしたい。『今日のレノファは違うね、みんな11人で集中しているね』というのを90分、続けられるようにしていかないと勝てない。上手い下手ではなく、次の試合、必ずそれを見せられるようにしていく」とチームとしての奮闘を誓った。

 レノファは次節もホーム戦となり、9月9日午後7時から、維新みらいふスタジアムでモンテディオ山形と対戦する。アンカーで出場してきた三幸が出られないため、ボールの動かし方や布陣にどのような変化が出るのかが注目点の一つ。ただ、どのような顔ぶれになろうとも、築いてきたスタイルで三幸の穴を埋め、勝利を近づけたい。

 なお、快勝の千葉はJリーグ初出場だったGK大野が安定してゴールを守り、6月30日の栃木SC戦以来2カ月ぶりの完封勝利を呼び込んだ。大野は4得点目の場面では矢田に直接ボールを配給しており、攻守で初出場とは思えぬ活躍。レノファにとっては苦い90分となったものの、新たなJリーガーの台頭を見た試合になった。千葉は次節は敵地でファジアーノ岡山と対戦する。