レノファ山口:オナイウ阿道が2戦連続弾! 開幕2連勝で首位キープ
J2レノファ山口FCは3月4日、山口市の維新みらいふスタジアム(維新百年記念公園陸上競技場)で愛媛FCと対戦し、1-0で勝利した。決勝点となったのはオナイウ阿道のヘディング弾。この1点を守り抜いて勝ち点3を積み上げ、1位を堅持した。愛媛とは5度目の対戦にして初白星となった。
明治安田生命J2リーグ第2節◇山口1-0愛媛【得点者】山口=オナイウ阿道(前半27分)【入場者数】5095人【会場】維新みらいふスタジアム
劣勢スタートも、攻撃には厚み
試合を見ていくと序盤は愛媛にチャンスが多く、クロスを有田光希が合わせたり、フリーキックからシュートを狙ったりしてゴールを伺う。レノファは前節のロアッソ熊本戦と同じように前線からプレスを掛けるが、「熊本と後ろの形は同じでも、シャドウは違っていて捕まえられなかった」(三幸秀稔)という点や、パスミスでのボールロストが目立ち、自分たちの時間帯を築くことができなかった。
立ち上がりの劣勢は、愛媛の中盤の顔ぶれが変わっていたのも要因に挙げられる。オナイウ阿道、高木大輔、小野瀬康介の前線3人は、前節と同じようにファーストディフェンダーとして相手をチェック。しかしインサイドハーフ周辺の第二段階の守備がはっきりしなかった。それでもアンカーやセンターバックといった第三の砦が状況を見て冷静に判断。中盤の底でバランスを取った佐藤健太郎は、受け渡しの連係はできていたと振り返り、「センターバックとサイドバックと自分とでうまく対応できたと思う。奪われた瞬間の切り替えだったり、どのチームと対戦しても変わらない約束事ははっきりしてきている」と話した。
修正が進んで相手に行っていた流れを食い止め、レノファがボールを動かし始めたタイミングで先制点が決まる。
前半27分、起点となった大崎淳矢から左サイドに展開すると、瀬川和樹がゴール前を横断するサイドチェンジのボールを送る。これを右の高い位置で小野瀬康介が回収。今度は右からの攻撃に転じて相手を揺さぶり、前貴之が「中に味方がいるのが見えた」と正確にボックス内にクロスを放った。合わせたのはオナイウ阿道。「強いボールを枠に飛ばすことを考えていた」と身体を投げ出してヘディングシュートを狙い、言葉通りのシュートはGKの手をはじいてゴールに吸い込まれた。
後半は愛媛が矢継ぎ早の選手交代でボールの動かし方を変える。これに対してレノファも三幸秀稔と大崎淳矢のセカンドディフェンスが前半よりも機能し、高い位置で奪い返せるようになる。最前線のプレーにも余裕が出て、後半21分と同24分にはカウンターなどから小野瀬康介がシュートを狙うなど活性化。途中投入の山下敬大もフィットし、コーナーキック後の反復攻撃からヘディングシュートを放つ。
これらの多くのシュートが枠を捉えたものの、GKの正面に飛ぶなどで追加点には至らず、試合最終盤は1点を守り抜くことに専念。途中からピッチに立った鳥養祐矢が敵陣コーナーアーク付近でボールをキープしたり、相手のクロスを坪井慶介らDF陣が安定して跳ね返したりと手堅いプレーをチーム全体で続け、1-0で勝利を収めた。
勝利を近づける霜田スタイルの「再現性」
この試合の最大の収穫点は、1点を守り抜き無失点で勝利したこと。それにオナイウ阿道の先制場面ではピッチを広く使い、人もボールもボックス内に入っていこうとする新スタイルを表現できた。瀬川和樹のクロスからオナイウまでの一連の動きの中で、常に4人から5人がペナルティエリア内を掻き回して相手DFを誘引。数的優位を築けていたわけではなかったものの、オナイウをノーマークにすることに成功した。
ハーフタイム以降は試合内容で相手を上回り、愛媛の後半のシュートを2本にまで抑え込んだ。それでも前半は愛媛の前線の動きを封じられなかったり、5バックの最終ラインをなかなかこじ開けられず、試合後の記者会見でも霜田監督は硬い表情のまま。「ショートカウンターで取れるチャンスがあったと思う。ファーストタッチ、コントロールなどでクオリティが足りない。1対0で逃げ切ったことは褒めたいが、2点目を取れずゲームを決められなかった部分には課題がある」と指摘する。
開幕からの2試合を振り返ったときに見えてくるのは、トレーニングで積み上げている霜田スタイルの「再現性」が、得点数や失点数、勝敗、ひいては順位といった結果に直結しているということだ。熊本戦はハードワークが4得点の源泉となり、今節は守備意識の徹底が後半45分間の好守を生んだ。その一方で攻撃の質は改善する余地が広く残り、人数は割きながらも1点に留まった攻撃が、良くも悪くも再現性とスコアの相関関係を裏付ける証左となった。
広くサッカー界を見渡せば、選手の能力とスタイルが噛み合わず、信じてやり続けても結果が出ないケースもある。だが今のレノファは、高いレベルで目指すサッカーを再現できれば、確実にスコアに影響を与えられる。前線のハードワークやピッチの横幅を有効に使うパスコンビネーションは、十分に上位相手にも通用するはずだ。
難しい試合になるのは引いてくる相手に対してだろう。霜田監督は「ブロックを作ってリトリートして、ボールを取りに来ないというチームはたくさんある。相手が来なかったときに、時間がありすぎるがゆえに球離れが遅くなる」と懸念を示す。今月はそういう傾向にあるチームとの対戦が組まれ、もしかしたら最初の試練が訪れるかもしれない。ここでスタイルを崩さずに戦えるか。ハードワークで貢献する高木大輔は「まだ40試合ある。難しいゲームもあるし、いいときも悪いときも出てくると思うが、どんなときでもやるサッカーをブレさせないことが大事だ」と強調した。
開幕から2試合が終わり、J2リーグで連勝を飾ったのはレノファのほか、ファジアーノ岡山とFC町田ゼルビアの計3チームのみ。J1から降格したチームが白星を逃すなどJ2は今年も混戦模様。それでも首位で2試合を終えたというのは誇らしい。
次節からはアウェー戦が続き、栃木SC、水戸ホーリーホックと敵地で戦う。次のホーム戦は3月21日午後3時キックオフ。維新みらいふスタジアムにツエーゲン金沢を迎える。
自信を深めつつあるレノファイレブン。順位表の中でも、ピッチの中でも、この高い位置を風を切って走り続けるため、目指すサッカーを汗して磨き、光らせていく。