レノファ山口:金沢に0-1 顕在化する不調和。同じゴール目指す集団を作れ

試合後に頭を下げる選手たち =29日、維新公園(筆者撮影。以下同)

 レノファ山口FCは10月29日、維新百年記念公園陸上競技場(山口市)でツエーゲン金沢と対戦し、試合終了間際に決勝点を許して0-1で敗れた。Jリーグでの金沢との対戦成績は4戦4敗。残留圏(20位以上)との勝ち点差も再び広がった。

明治安田生命J2リーグ第39節◇山口0-1金沢【得点者】山口=なし、金沢=垣田裕暉(後半47分)【入場者数】4823人【会場】維新百年記念公園陸上競技場

 選手個人が持つエネルギーの使い方が統一されず、レノファのピッチ上はいくつものベクトルが入り乱れた。一方の金沢は最終盤、リスクを冒すのではなくドローも覚悟した方向にシフトチェンジ。攻撃の狙いどころを絞り、無理なら突っ込まずにボールを回すようにする。結果を引き寄せたのは策を鮮明にしたチームのほうだった。

前節のメンバーを踏襲。ただ戦い方は同じにはできなかった
前節のメンバーを踏襲。ただ戦い方は同じにはできなかった

序盤は優勢。徐々に「エラー」が広がる

 試合の序盤戦はレノファのペースで進む。右ウイングバックのMF小野瀬康介がボールを受け、縦に鋭くランニング。小野瀬が放ったシュートの跳ね返りやクロスからチャンスを作り、ミドルレンジからはMF小塚和季などがゴールを脅かすが、立ち上がりの15分頃までに作った決定機はことごとく枠に嫌われてしまう。

 時間の経過とともに小塚へのマークが厳しくなってきたり、前線の運動量が十分には上がらず、FW岸田和人とFWレオナルド・ラモスにはボールが入らなくなる。セットプレーでは前半38分、小塚をキッカーとしたCKからゴールを狙うも、枠に収めることはできなかった。「前半は押し込めていい形で入れたが、相手に上手い具合にペースを握られた。相手は引き分けで良かったと思うが、その空気に飲まれた」(岸田)。主導権が相手に行き、試合は次第に重苦しいものになる。

小塚和季は厳しいマークに遭う中、シュートを放った
小塚和季は厳しいマークに遭う中、シュートを放った

 この日のレノファも前節・水戸ホーリーホック戦で見せたような攻撃をするべきだった。つまり高い位置で数的優位を作り、システムのギャップを生かしてボールを動かせれば、シュートチャンスは増やせた可能性が高い。しかし、勢いのあった時間が過ぎると、共通理解の不足から動きのちぐはぐさが露呈。徐々に金沢のカウンターを食らうようになり、攻撃の起点も低くなった。

 試合に向けた一週間のトレーニング期間中、カルロス・マジョール監督は後ろ向きのパスを減らし、前へのパススピードを上げられるよう制限の多い練習メニューを組んだ。ただ、前方向への速いパスは、ボールを受けようと動き回ることが必要で、なおかつ出し手と受け手の息を合わせていないと成り立たない。

 例えば、相手DFの裏に抜けてパスを貰おうとする受け手と、DFを背負ってボールを繋いで欲しいと思っている出し手では、同じ前方向のパスが絡むとはいえ質は異なる。もし彼らが己の意のままにパスをすれば呼吸が合わないのは自明の理。監督などが強烈に方向性を示せれば多少の浸透はできたかもしれないが、選手間の共通理解は浅いまま。ミスも目立ち、レノファの3-5-2と金沢の4-4-2で必然的に生じるスペースも使えなかった。確かにボールを下げる場面は減ったかもしれない。しかし動きがぎくしゃくして前に動かせないのであれば状況は変わらない。

 後半途中からはMF加藤大樹を投入してスピードアップを狙うが、これらのエラーは残置され、岸田が話した「空気」も打破できなかった。レノファは1点も挙げられずに終盤へ。「一戦必勝でずっとやっているし、その気持ちを見せて戦おうとみんなで言っていた」(MF佐藤健太郎)という気概は空回りしてしまう。

守備でも統一感なく、終盤に決勝点被弾

ゲームメイクを担った佐藤健太郎(右)。「残り3試合、全部を出し尽くし、何としてでも自力で残れるように頑張りたい」と語った
ゲームメイクを担った佐藤健太郎(右)。「残り3試合、全部を出し尽くし、何としてでも自力で残れるように頑張りたい」と語った

 ちぐはぐな現象はバックライン周辺でも起きた。

 後半12分、金沢は右サイド(レノファの左サイド)を崩してクロスを入れ、こぼれ球をMF大橋尚志が狙う。この場面はGK村上昌謙のセーブで難を逃れるが、レノファは左右で守備重心が大きく異なり、特にDFアベル・ルシアッティの前後を使われてしまう。MF星雄次もケアのためにポジションを下げざるを得ず、攻撃時に数的優位を作り出すのがさらに困難になった。

 金沢は後半39分、先発していたFW佐藤洸一からFW垣田裕暉へと長身FW同士を入れ替える。柳下正明監督は「お互いにカウンター(の応酬)になってスペースがある。上手く(スペースを)見つけて運び、ゴールを目指そう」と指示し、佐藤洸一がしていたのと同じようにサイドからのクロスに垣田を競らせた。

 迎えたアディショナルタイム。この時間帯までリスクを背負わなかった金沢だったが、右サイドの高い位置でスローインを入れると、DF石田崚真が緩く放物線を描くクロスボールを供給。垣田がDF廣木雄磨に競り勝ち、タイミング良く頭で突き刺した。レノファは廣木とDF渡辺広大が役割を分担して決定機を阻止していたが、同12分以降に受け続けた同じようなジャブをチームとして修正できず、簡単に入れられたクロスには為す術がなかった。

 多種多様な局面で起きた不調和が放置されたまま、0-1でホイッスル。金沢がJ2残留を確定させた一方、レノファは残留圏20位(ロアッソ熊本)との勝ち点差が6に広がった。

チームを束ねられるか。指揮官の手腕が問われる

 レノファは残り3試合で残留圏までの浮上を懸ける。J3リーグの状況次第では21位でも残留できる可能性はあるものの、他力の前に自分たちがまずは全勝を目指して戦っていきたい。

試合中に手で指示を送るカルロス・マジョール監督
試合中に手で指示を送るカルロス・マジョール監督

 試合を壊した最大の要因は、選手たちの「頑張りのベクトル」があちこちに向いてしまったことだ。本稿冒頭では前線での呼吸が合わない例を挙げたが、ビルドアップでは飛ばすのか繋ぐのかも判断が分かれているし、守備でもどこまで相手選手に付いていくのかは意思がばらばら。さらに悪いことに、選手がそれぞれのメソッドで思い切りよくプレーしているため、皮肉にも頑張っている分だけちぐはぐさが強調されてしまっている。

 カルロス・マジョール監督は「前半はいいプレーができていたが、少なくとも1点は取らなければいけなかった。後半は拮抗した。最終的な結果は負け試合ではなかったと思う」と前を向いたが、勝ち点3が求められたゲームの結果は「負け」である。膿を出す作業をこれ以上続ける必要はなく、残り3試合を全て結果で返さねばならない。

 ベクトルを同じ方向に差し向けるのは決して難しい作業ではなく、監督をはじめコーチングスタッフが中心となってルールを徹底させ、同じゴールを目指せる11人で戦わねばならない。言葉の壁はあっても、チームを同じ向きに走らせるべきだ。

険しい表情で引き上げる選手たち
険しい表情で引き上げる選手たち

 試合後の取材エリアに笑みは一つもなく、選手たちは一様に肩を落としてロッカールームから出てきた。サポーターへのメッセージがあればとマイクを向けられたMF星雄次は「こういう状況で応援してくださいと軽く言うことはできない」と沈痛な表情を浮かべ、「自分たちはもう勝つしかない。そこだけを求めてやっていく。気持ちも大事だし、チームが一つになることも大事だ」と自らの言葉を噛みしめるように語った。

 レノファの根底に流れるのは、全員守備、全員攻撃のトータルフットボール。チーム全員が一点を目指して走る時、レノファは奇跡のような勝利やゴールを重ねてきた。このチームには底力も地力もまだ宿っている。応援も鳴り止まないだろう。心一つ、ゴールへと走らせるため、現指揮官の手腕が問われる残り3試合となる。