レノファ山口:4試合ぶり勝利! 前線のコンビネーション開花。雨の下関を制す
レノファ山口FCは10月21日、下関市営下関陸上競技場で水戸ホーリーホックと対戦。前半を無失点で折り返すと、後半は主導権を掌握し1-0で勝利した。順位こそ変わらないが残留に向け一歩前進。連敗が3で止まったほか、下関では15年10月のJ3第32節SC相模原戦以来、2年ぶりの白星となった。
明治安田生命J2リーグ第38節◇山口1-0水戸【得点者】山口=レオナルド・ラモス(後半9分)【入場者数】3538人【会場】下関市営下関陸上競技場
粘り強い守備。前田大然らを制限
試合を前に河村孝社長がサポーターが集まるバックスタンドまで行き、「一戦一戦戦っていく。みなさんの声援で後押しをお願いいたします」と頭を下げ、一丸となった戦いを目指した。
試合開始前時点で残留圏20位のカマタマーレ讃岐とは勝ち点7の差があり、詰めるのは簡単ではないが、レノファは今週のトレーニングで攻守両面にきめ細かく修正。J2の中でも誇るべき熱い声援を背に、万全のイレブンがピッチに出て行った。
前半のレノファは守備からゲームに入るという狙い通り、ディフェンスに重心を置いてゲームを進める。前回対戦でゴールを決められているFW前田大然(水戸)に対してDF渡辺広大とDF廣木雄磨のどちらかが必ず身体を寄せ、振り切られてもコースを切って対応。「二人でチャレンジ・アンド・カバーしようと話していた」(渡辺)という共通認識をもとに前田が枠内に飛ばす機会を削った。
また、両サイドでもウイングバックに入ったMF星雄次とMF小野瀬康介がハードマークで相手にクロスを供給源させず、うまく外へと追い出していく。セットプレーのセカンドボールなどから何度かはピンチを招いてしまうが、身体を張ったディフェンスでゴールは割らせなかった。
攻撃では同サイドから同サイドへの縦の展開で敵陣に入っていく。前半こそシュートまではなかなか持ち込めなかったものの、この試行がサイド勝負で崩せるのではないかという感触を生み、カルロス・マジョール監督は「自分たちが相手との差を作れるとしたら小野瀬の右サイド。前半の動きを見る限りでは、サイドの(相手の)戻りが遅いように見えていた」という『確信』を得る。
小野瀬康介を生かして前進。先制に成功
後半はサイドでの攻防をより鮮明にし、左サイドでは星が攻守にバランスを取ってポジションを取り、右サイドではMF鳥養祐矢がケアをして小野瀬を前に押し出す。
後半9分、その小野瀬がサイドを突破してグラウンダーのクロスを送ると、FW岸田和人がニアサイドで受けてスルーパス。これをFWレオナルド・ラモスが落ち着いて左足で振り抜き、レノファが先制点を挙げた。「キシ(岸田)が右から斜めに入ってきて、出てきたボールに触るだけだった。キシとも試合を重ねるたびに分かり合えてきている」(ラモス)。個人の技量とチームワークが融合したゴールシーンとなった。
ただ、その前の長崎戦では先制したあとに2失点し敗れていた。DF渡辺広大は「前節のことはよぎった」と明かし、集中した守備が続くようチームを引き締め直した。「ボランチや後ろの選手を含め、隙は前よりも減らせたのかなと思う。後ろだけではなく、前の選手も走ってくれた」。渡辺や廣木、それにサイドのプレーヤーが中心となってボールホルダーに食いつき、水戸攻撃陣の動きを制限。対する水戸はMF伊藤涼太郎やFW林陵平を入れて前線の枚数を増やしたが、レノファのディフェンスのほうが勝った。
水戸とのシステムギャップを生かしたのもレノファだった。先制点を挙げたあとも守備一辺倒に傾くのではなく、ボランチが敵陣に入ってボールを受け、縦に送り出したり、サイドに展開したりと重要な役割を担った。また、「うまく数的優位を作ればサイドで崩せる。後ろからいいポジションを取って、数的優位の中で前線に出せば崩せる」と話すDF廣木も意欲的にパス供給。チーム全体の前へ進もうとする意識が高く、攻撃の中心選手といえるMF小塚和季が孤立するのも阻止できた。
これまでの試合では小塚、岸田、ラモスの前線のトライアングルが孤立していたが、小塚の近い位置に選手が入れていたのは好材料。レノファらしい人数を割いた攻撃のベースを作り、終盤に入ってもレノファが主導権を握る。そして4分のアディショナルタイムの末に白星のホイッスルが響き、4試合ぶりの勝利を掴んだ。
残り4戦を「決勝戦の気持ちで」
現時点で残留争いに関係するチームの勝敗はまだ出ていないが、20位以上のチームとは未だ1試合ではひっくり返せない差があるのははっきりしている。残り4試合を全て勝つほどの勢いがレノファには引き続き求められている。
カルロス・マジョール監督は試合後すぐにロッカールームで選手たちをたたえ、「今日のこの勢い、姿勢で戦っていかなければいけない」と強調。「残り4試合、一試合一試合を決勝戦の気持ちで、全力で挑んできたい」と次戦に目を向けた。決勝点のFWレオナルド・ラモスも「自分たちがやるべきことは一つでも上の順位で終えることだ。練習からチームのために戦うことができれば、いい結果が出てくる」と話した。
勝利後の恒例行事となっているラインダンスで笑顔がはじけたのはGK村上昌謙。好守で勝利に貢献し、クリーンシート(無失点)に自信を深めた。ただ勝利を続けていく必要があり、「勝ったがやることは変わらない。まずはゼロ。無失点で抑えることを目標にやっていきたい」と力が入った。
スピードのある選手を生かして攻撃を組み立て、フィニッシュに近いところではグラウンダーのショートパスがリズム良く繋がる。主導権を握ることで守備回数を減らし、仮にボールを持たれても焦れずに付いていく厳しいディフェンスでしのぎきる。新旧監督が指導してきた良さのベストミックスのような試合だった。
歴史の海を見下ろす下関のスタジアムで、レノファは今季9勝目を手にした。シーズンは残り4試合。レノファの持っている多彩なオプション、あるいはパズルのピースを適切に填め込み、つなぎ合わせ、4戦4勝を目指す。
次節は維新百年記念公園陸上競技場(山口市)でツエーゲン金沢と対戦する。10月29日午後3時キックオフ。志士の歴史がそうであったように、荒波に進んで出て行った者たちに光が差し、苦難から這い上がる道を見つけ出す。