レノファ山口:岸田和人、今季2度目のハットトリック。8千人超の後押し、山口が快勝

出場23試合で24得点――。岸田和人が圧巻のハットトリックでJ3の得点ランキングを独走し、チームも前節の悔しいドローを振り払って快勝した。明治安田生命J3リーグは8月15日に1試合が行われ、レノファ山口FCがFC琉球を5-0で下した。AC長野パルセイロ-Jアンダー22選抜戦など他の5試合は8月16日に行われる。

J3第26節:山口5-0琉球▽得点者=前半7分岸田和人(山口)、同12分岸田和人(同)、同42分小塚和季(同)、後半15分宮城雅史(同)、同27分岸田和人(同)▽8474人=維新公園陸

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魅せた山口らしさ。主役は岸田

敵陣に人数を割いてリズム良くボールを動かし、守備は身体を張ってピンチを跳ね返す。山口らしい試合を今季最多となる8474人が詰めかけた維新公園で見せつけた。5-0。圧勝の主役は今宵もやはりあの男だった。

ヒーローインタビューの岸田和人。「最高です」とゴールの瞬間を振り返った
ヒーローインタビューの岸田和人。「最高です」とゴールの瞬間を振り返った

「前節での自分のプレーの重みが分かっていたので、自分のプレーで取り返したかった。ホームの皆さんの後押しもあって3点取ることができました」

岸田和人が精悍な顔つきでフラッシュライトを浴びていた。前節のガイナーレ鳥取戦では2本あったPKのうち1本を外して結果的には1-1。自分のプレーへの悔しさが岸田を再びゴールへと向かわせていた。「(サッカー以外の)仕事をしている選手もいる。(疲れを)言い訳にしていた部分もあって、自分の甘さもあった。言い訳をしないでサッカーに集中してやっていかないといけない」。岸田はこの日、運動量を落とすことなくボールを追いかけ続けた。

岸田のゴール後にゆりかごダンス。鳥養祐矢に息子が生まれ、全員で祝福した
岸田のゴール後にゆりかごダンス。鳥養祐矢に息子が生まれ、全員で祝福した

ゲームの立ち上がりこそ琉球が縦パスを入れて山口ゴールに迫りCKのチャンスも得ていたが、守備から攻撃への切り替えやそこからのビルドアップで時間が掛かってしまう。前半7分、その琉球のもろさを山口が突いてショートカウンター。MF庄司悦大からMF小塚和季と渡ったボールを最後は岸田がゴールへと送り込んで先制する。直後の同12分にも山口は敵陣内から再構築。最後はMF島屋八徳のパスを岸田が受けてコースを狙い、リードを広げた。

早い時間の山口の2得点で『維新劇場』開幕となった一方、「自分たちのミスから取られたことが全てを台無しにしてしまった。自分たちで(失点の流れを)作り出してしまったことは少し反省しないといけない」とは琉球・薩川了洋監督。悔しさの滲むオープニングの2失点が琉球には重くのしかかった。

小塚和季がGKの動きを見ながら追加点
小塚和季がGKの動きを見ながら追加点

山口は前半42分にも小塚が抜け出すと、前に出てきたGKの動きを見ながらふわり浮かせたシュートでゴールイン。リードを3点として前半を折り返す。

後半も「入りが少し悪かった」と上野展裕監督。前半と同じように琉球に攻め込まれる時間帯も続くが、一森純のファインセーブをはじめ、代健司と宮城雅史のセンターバックがしっかりと身体を張ってシュートコースを切っていく。もっとも、「攻め残りがある中で(山口の選手も)上がってしまうので、リスク管理はしっかりしていかないといけない。後ろは失点ゼロでいきたい」と宮城。中盤やサイドバックの戻りが遅れると少人数で耐えなければならず、この試合でもギリギリのディフェンスが続くことにはなった。

宮城雅史がFKをしずめ、リードを広げていく
宮城雅史がFKをしずめ、リードを広げていく

ただ、押し込まれる状態で始まった後半を山口のリズムに戻したのもまた宮城だった。後半15分、左サイド深い位置からのFKにニアサイドで合わせたのが宮城。マークを振り払って強いヘディングシュートを突き刺し、4-0とした。

J2へ導く圧巻の『岸田劇場』

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主導権を掴んで押せ押せのムードが漂い出す中、もちろんスタジアムが期待したのは岸田のハットトリックだった。歓喜の瞬間は後半27分。DF黒木恭平のシュートから起きたゴール前でのスクランブルからためらうことなく振り抜いた。「取れるときはああいうところにいれる」と岸田。「いつどこで点を取ってもうれしいが、3点目はハットトリックという名前が出てくるので、ホームでもっと取れるようにやっていきたい」と嬉しさを噛みしめるこの日3点目、そして試合出場数を超えるゴール数をマークする、岸田ここにありと言わんばかりのゴールだった。

岸田の今季目標は「30ゴール」と高いが、「目標を言わなかったら、できなくても言い訳にできる。口に出してテレビの前で言って、やる。取ることがチームが勝つことにもなると思う。1試合1得点と思っているがチームのためにやっていきたい」と強い信念でゴールを狙っている。

試合後、鳥養祐矢はバク宙のパフォーマンス
試合後、鳥養祐矢はバク宙のパフォーマンス

岸田の活躍が光り5-0で山口が勝利。上野監督は「鳥取の試合を選手たちが不甲斐なかったと思って一週間練習してくれた成果だ。本当に良くやってくれたと思う」と選手たちを讃えていた。

ただ、山口は試合を通して21本のシュートを放っているが、琉球も15本。後半に限れば山口12本、琉球10本の拮抗した数で、2分に1本はシュートが生まれるという展開になった。リスクを負って攻めてくる琉球に対して、山口も時間稼ぎをせずにスペースを突いていく。その清々しい攻撃がシュート数に現れた格好だが、昇格圏内確定に向けて全てのゲームが重要な意味を帯びてくる第3クールに向けて、うまくボールを保持しながら試合を進める強かさも必要かもしれない。ケガや累積警告を避けながら勝ち切ることも重要だ。

もっとも、岸田和人に出された後半36分のイエローカードはペナルティエリア内で故意に倒れたシミュレーションの判定だったが、すでに岸田はハットトリックを達成し、チームも5点をリードしており、シミュレーションをする理由が全くない。ドリブル突破を狙った岸田と相手DFの足が交錯しただけのように見え、岸田には酷な判定となった。とはいえ意図しなかったプレーがイエローカードに繋がることもあり、無駄なラフプレーや必要以上の異議は個人個人が注意しながら減らしていきたい。

3回戦総当たりのJ3リーグ。このゲームで2巡目が終わったことになる。第2クールは下関でFC町田ゼルビアに惜敗した試合と、前節の鳥取とのドローを除けば全て白星。勝ち点も61となり、全Jリーグクラブをフラットに俯瞰するならばJ2トップの大宮アルディージャ(勝ち点67)に次いで2番目で60点台に乗せた。

J3のリーグ戦は天皇杯を経て9月5、6日に再開する。残り12試合。「まだ波があるチーム。J2に向けては第3クールでいかに波をなくし、自分たちのサッカーをしてなおかつ得点ができるか――」。そう話す岸田の言葉には自分たちを律する厳しさがあった。山口らしい攻守のアグレッシブさを失わず、より良いサッカーをしてJ2を掴み取る。維新劇場、岸田劇場は第3幕も熱を帯びていく。