テレビ各局は「ジャニーズ事務所を公取委が注意」をどう報じたか

(写真:西村尚己/アフロ)

7月17日、大きなニュースが飛び込んできました。

それは、SMAPの元メンバーである稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾について、ジャニーズ事務所がテレビ局に対し出演させないよう圧力をかけた疑いがあり、それが独占禁止法違反につながるおそれがあるとして公正取引委員会が「注意」したというもの。

最初にそれを報じたのはNHKのニュースでした。

まず『首都圏ニュース845』(※関東の場合)放送中の20時59分にニュース速報テロップが流れました。

元SMAP3人のTV出演に圧力の疑い

ジャニーズ事務所を注意 公正取引委

その直後に始まった『ニュースウォッチ9』ではトップニュースとして報じられました。

以前、3人が「GQ Men of the Year 2017」を受賞した際の各局の報道の仕方をまとめ「テレビ各局(在京キー局)は「新しい地図」をどう報じたか」という記事にしましたが、それと同様に在京キー局がこのニュースをどのように扱ったかを見ていきたいと思います。(以下、()内は筆者の補足)

■NHK『ニュースウォッチ9』(21:00~22:00)

前述のようにトップニュースとして約6分にわたり放送。

「今入ってきたニュースをお伝えします」と桑子真帆アナがニュースを読み上げる。

「国民的アイドルグループSMAPの元メンバー稲垣吾郎さん、草なぎ剛さん、香取慎吾さんの3人。ジャニーズ事務所が民放テレビ局に対し、事務所から独立した3人を出演させないよう圧力をかけていた疑いがあることが関係者への取材でわかりました。公正取引委員会は独占禁止法へつながるおそれがあるとして今日までにジャニーズ事務所を注意しました」

その後VTRでは、以下のような内容を解説

・おととし9月ジャニーズ事務所から独立。元担当マネージャーが新たに設立した事務所(新しい地図)に所属して芸能活動を続けている。3人はテレビのドラマやバラエティに数多く出演し国民的な人気を集めていたが、独立後、出演していた民放テレビ局のレギュラー番組が次々に打ち切られ、現在、民放テレビ局の番組出演がなくなっている。

・今年4月のインターネット番組(『7.2 新しい別の窓』)での草なぎ剛の「よくわからない大人の事情とかもあるのか、みんなが望む場所に到達できていない面もある」という発言を紹介。

・芸能人の移籍トラブルをめぐり、独占禁止法違反につながるおそれがあるとして芸能事務所が注意を受けるのは初めて。

・「かわいそう」「やっぱり芸能界は裏があるんだな」などという街頭インタビューを紹介。 

スタジオでは、社会部の山田宏茂記者が次のように解説。

・競争関係にある会社の活動を不当に妨害する行為を「取引妨害」として禁止している。圧力が「取引妨害」につながるおそれがある。

・大勢の人気アイドルを抱えるジャニーズ事務所なので芸能界への影響は大きいと思う。

・事務所側が認めなければ独立や移籍ができなかったり、事務所をやめたあとの活動を制限する契約になっていたり、独立や移籍をめぐるトラブルが相次いでいる。このため公正取引委員会は芸能人などに調査を行い、去年2月に「独占禁止法に違反するかどうかは様々な要素を総合的に考慮し判断する」という報告書をまとめていた。

最後に「ジャニーズ事務所はコメントを出していない」(※放送時)と締めくくった。

なお、NHKでは23時25分からの『ニュースきょう一日』でもほぼ同様の内容をトップニュースで伝えた。

■TBS『NEWS23』(23:00~23:56)

「速報」としてトップニュースで約4分半にわたり放送。

「アイドルグループSMAPのメンバーだった3人についてジャニーズ事務所が一部の民放テレビ局に対し、番組に出演させないよう圧力をかけていた疑いがあることがわかりました。公正取引委員会は独占禁止法違反につながるおそれがあるとしてジャニーズ事務所を注意しました」

「一部の民放テレビ局」と表現。

VTRでは「おととし9月独立。新しい事務所『新しい地図』を立ち上げ芸能活動を続けている」「ジャニーズ事務所や3人の所属事務所に聞き取り調査を行った」「事務所は今のところコメントを出していない」(※放送時)などと解説し、街頭インタビューを紹介。

若狭勝弁護士が「テレビ局が誰を出演させるかは本来は自由であるべきはず。圧力をかけるのは公正なものではなく不当。独占禁止法は不当な圧力をかけての取引を禁止している」と解説。

スタジオでは星浩が「公正取引委員会は従来は慣行とされてきた取引にもメスを入れ始めた傾向がある。この問題が事実だとすれば不公正な取引そのもの。芸能界ではよくあることでは済まない。TBSも調査にしっかり協力してほしい」とコメント。

番組エンディングに再びこのニュースに触れ、ジャニーズ事務所のコメントが入ってきたとして、「弊社が公正取引委員会より独占禁止法違反につながるおそれがあるとして注意を受けたとされる報道につきましてご報告申し上げます。弊社がテレビ局に圧力などをかけた事実はなく、公正取引委員会からも独占禁止法違反行為があったとして行政処分や警告を受けたものでもありません。とはいえ、このような当局からの調査を受けたことは重く受け止め、今後は誤解を受けないように留意したいと思います」と全文を読み上げた。

■フジテレビ『FNN Live News α』(23:40~24:25)

23:46頃から約1分半放送。

「アイドルグループSMAP元メンバー3人のテレビ番組出演をめぐって公正取引委員会はジャニーズ事務所に口頭で注意しました」

「口頭で注意」と表現。

VTRでは「独占禁止法に違反する事実は認められなかったとして、行政処分は見送り、口頭での注意にとどめた」と解説した上で、ジャニーズ事務所からのコメント全文を読み上げた。

■日本テレビ『news zero』(23:00~23:59)

番組エンディングの23:55頃に約1分半放送。

「解散したアイドルグループSMAP元メンバーの稲垣吾郎さん、草なぎ剛さん、香取慎吾さんの3人をテレビ番組などに出演させないようジャニーズ事務所が民放テレビ局などに対して圧力をかけていた疑いがあるとして公正取引委員会が今日までにジャニーズ事務所を注意していたことがわかりました」

VTRでは「調査の結果、違反行為はただちには認められなかったが、独占禁止法に違反する行為につながるおそれが認められたため未然防止の観点から注意した」と解説。スタジオで「先程、ジャニーズ事務所からコメントが発表されました」と全文を読み上げる。

翌18日

■テレビ朝日『グッド!モーニング』(4:55~8:00)

当日21:54~23:15の『報道ステーション』では間に合わなかったのか、放送されなかったテレビ朝日。

翌朝、5時台のトップニュースとして約1分半放送。

「ジャニーズ事務所が公正取引委員会から注意を受けていたことがわかりました。SMAPの元メンバー3人を出演させないよう民放テレビ局などに圧力をかけていた疑いがあるということです」

VTRでは、ジャニーズ事務所コメント全文を読み上げた。

続く、5時43分頃には、上記に加え、公正取引委員会が動いたきっかけ朝日新聞の記事を紹介。 

「事務所が圧力をかけているという情報があり、公取委が聞き取り調査などを実施。しかし、違反行為を認定するには至らなかったという」

7時直前および、7時46分頃にも取り上げ、昨年2月の公正取引委員会の報告書発表の件を言及。

また先月には実業団の陸上選手を統括する団体の「他チームへ移籍する場合、現所属チームの了承がないと移籍先で選手登録ができない」という規制に対し、公取委が規定改正を要請したことを紹介。「芸能界では事務所との契約解消後も一定期間芸能活動ができなかったり芸名が使えない契約が多い」ことから法曹関係者が「業界では事務所優位、タレント不利の契約が蔓延している」と問題視されていることを解説。2月の有識者会議では「事務所が強い立場を利用して芸能人と不当な契約を結ぶ」ことや「過度な移籍制限をする」ことに対し「関係団体に自主的な改善を呼びかけていた」と紹介。

その後の『モーニングショー』(8:00~9:55)では上記トップニュース同様の内容に加え「関係者から事情を聴いたほか、ジャニーズ事務所からテレビ局へ送信されたメールなどを分析」と調査方法を紹介。

昼の『ワイドスクランブル』、夕方の『スーパーJチャンネル』でもトップニュース同様に報じた。

■TBS

早朝の『はやドキ!』、朝の『あさチャン!』で同局の第一報とほぼ同様に報道。

■フジテレビ

早朝の『めざましTV全部見せ』、朝の『めざましテレビ』、午前の『とくダネ!』でやはり同様に報道。

■テレビ東京

17~18日まで番組の特性なのか、このニュースに関するものは報じられていない。

■日本テレビ

早朝の『Oha!4NEWS LIVE』、朝の『ZIP』では、同様に報道。

午前放送の『スッキリ』では「NEWSミウライン」というコーナーで報じられ、それを受けMCの加藤浩次がコメント。

「これにかんして今回の場合は違法性はなかったと公正取引委員会は注意にとどまったということなんですけど、僕はね、ジャニーズ事務所に限らず、みなさん周知なんですよ。大手の事務所を独立したタレントは何年かテレビに出られなくなるっていうのは、テレビを見ている方も気づいている方はいると思う。僕らもこういう仕事をさせてもらっていれば、そういうのが暗黙にあるっていうのはわかっている。じゃあ、何十年か前から決まってきた芸能界の歴史、テレビの歴史の中で、当たり前のように扱っているんだけど、今の時代で考えたらちょっとおかしいんじゃないかっていう部分も実際ある。その部分っていうのはテレビ局もそうですし、事務所関係、この業界全体がこれから新しく変わっていく、次に向かっていくんだっていうきっかけになればいいなと僕は思っています」

午後放送の『ミヤネ屋』(よみうりテレビ制作)では、同様の報道のあと、出演している弁護士の本村健太郎が「注意」にとどまった理由を聞かれ、「証拠がなかったということ。メールなどにハッキリ『出演させるな』とか書いてある証拠までは発見できなかった。ただ証言などからその疑いがありそうだということで注意にとどめたということのよう」と解説。その後、司会の宮根誠司、芸能リポーターの城下尊之、外交ジャーナリスト・手嶋龍一、医師・おおたわ史絵ら出演者たちがコメント。

城下「3人が事務所を退所した後、ジャニーズ事務所の幹部がレギュラーを持っている局に『続けてあげてくださいね』とお願いはしていた。それを聴いていたので半年はあるだろうなと。そしたら半年たった頃から五月雨式に終わっていった。これがテレビ番組の事情なのか、なんなのか、そのへんはちょっとわからない」

宮根「昔、僕らが子供の頃、有名な歌手の人達が突然テレビに出なくなるわけですよ。その時、あ、大きな事務所をやめたんだってみんな中学、高校のときでもわかってた。それが圧力なのかテレビ局の忖度なのかわからないですけど、2~3年くらいテレビに出ないって方はいらっしゃいましたね」

城下「そういう時は、そういう力が働いていたと感じましたけど、ジャニーズ事務所の取材で『僕らはこれをやりたいんだけど』って言って『NO』って言われたことはない。『また圧力をかけたって言われちゃうからさ』って逆に言われるんです」

宮根「僕の見解をハッキリ言うと、テレビ局の忖度ですよ。完全に。今の時代、『出さないでね』とか、そういうことは聞かないですよ」

城下「だってCM出てますもん」

宮根「映画とかも出てらっしゃる。これはテレビ局の異常な忖度だと思います」

手嶋「それだけ逆に言うとジャニーズ事務所っていうのは大きな存在で、アメリカにも公正取引委員会っていうのはあるんですけど、圧倒的な力で市場をコントロールしてはいけない。それを取り締まる役所なんです」

おおたわ「公正取引委員会が動いたっていうのは長く続いた古い体質の芸能界っていうのに一個メスを入れたっていう意味があると思う。事務所をやめた、会社が変わったというだけで、デメリットが生じるっていう状況っていうのは大きなマイナス。やっぱりクリーンにしていくべき」

18日の夜のニュースでは、民放各局はこのニュースを取り扱わなかったが、NHKでは「続報」を報道。

■NHK夜のニュース

『ニュース7』では、民放テレビ局の関係者が「ジャニーズ事務所に所属タレントの出演を依頼した際、事務所の幹部から『元メンバーが関わっている場合、所属タレントは出演させられない』と圧力をかけられた」という実態が明らかになったと報じ、元ジャニーズ事務所所属の赤西仁のツイートを紹介。

また、日本エンターテイナーライツ協会・佐藤大和弁護士が「事務所が強い立場という構図があったが、これが改善する大きなきっかけになるのでは」などとコメント。

続く『ニュース9』でも同様に報じた上で、3月に番組で香取慎吾を取材したVTRを紹介。

香取「ネガティブなことに対しても、なんかそういうのって生きてるといろいろあるし、小さいことから大きなことまで絶対にあるから、その一つひとつにひるんでいたら生きていけない」

さらに「圧力を過去に感じた」という、かつて雑誌編集をしていた小菅宏がコメント。掲載したタレントについてジャニーズ事務所から“質問”を受けたという。

その時の雑誌は、カラーグラビアのトップがジャニーズ事務所所属のグループを掲載し、モノクロページにほかの事務所所属の少年グループを掲載。これに対し、事務所幹部から「うちの子が載っている本にほかの事務所のグループの子たちが載っているのはどういう企画意図ですか」という“質問”。

「それはひとつのプレッシャーだったと思う。そういう質問があったのはジャニーズ事務所からだけ」

最後に再び佐藤大和弁護士のコメントを紹介。

「今回の件で注意ではあったが、独占禁止法に明らかに違反しているケースはたくさんある。それだけ忖度が多い業界でもある」

「テレビ業界に対しても過剰な忖度はせず、芸能人が自由に競争できる環境を芸能事務所側と協力して作っていく環境づくりをしてほしい」

それを受けスタジオで司会の有馬嘉男、桑子真帆がそれぞれコメントを寄せた。

有馬「今の(佐藤弁護士の)言葉、重く受け止めなければなりませんよね。どんな世界にも忖度はあるんだと思います。しかしそれをしむけるようなことはあってはならないと改めて思いました」

桑子「以前番組で香取さんを取材させていただいた時、アイドルという仕事も、アーティストという仕事も心から愛して誇りを持って取り組む姿、とても印象的でした。そんな活動をみんなで後押しできるような環境にしていかないといけないと思います」

今回、上記のようにNHKが積極的に報じているのに対し、民放各局はほぼ同等のスタンスでした。

この件に関してテレビ局は、「圧力」を受けた“被害者”であるにしろ、「忖度」をしたある種の“共犯者”、あるいは“加害者”である可能性もあります。つまり“当事者”だというのは間違いありません。けれど、いずれの報道でも自局に対しての「圧力」の有無や対応を言及することはありませんでした。