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4・50代の男女497人が回答した「高齢になる前に知っておきたい知識」は何か?

斉藤徹超高齢未来観測所
高年期に備えるために知っておきたい知識(写真:イメージマート)

「人生100年時代」と言われる昨今ですが、長生きは喜ばしいことである一方で、若者層や中高年層に、「先行きの見えない未来」として映っている側面もあります。いわゆる「長生き不安」です。

しかし、老いを不安がるのではなく、中高年期から高齢期に必要な知識を備え、事前に準備を行うことで、不安をかかえることなく乗り切ることもあるはずです。

では、実際に現在の中高年層(40・50代)の方々が、「高齢期に備えるために知っておきたい情報は何か」について聞いてみました。回答いただいた497人の中から、知りたい情報ベスト5として紹介してみたいと思います。

第5位 高齢期の暮らしについて

第5位 高齢期の暮らしについて
第5位 高齢期の暮らしについて写真:イメージマート

第5位にあがったのは、高齢期における暮らしに関する知識でした。

高齢者の賃貸住宅状況はどうなのか」(57歳・男性)、「高齢でも住みやすい地域はどこか」(42歳・男性)など、高齢期における住まい・暮らしに関することや、「高齢期にどんなサポートが受けられるか」(45歳・男性)などの、高齢福祉サポートに関する情報ニーズがありました。

また、「未来予想図。年金や高齢者の仕事はどうなるか、高齢者の居場所・病院・介護体制はあるか」(59歳・男性)など、将来における高齢者を取り巻く環境を知りたいという方もいらっしゃいました。

こうした高齢期の暮らし全般に関する未来像を描くことは、なかなか簡単なことではありませんが、一方で現状の公的高齢者支援の状況について把握することは可能です。高齢期の暮らしに関するサポートとしてどのようなものがあるのかについては、地元自治体の高齢者福祉課に問い合わせれば、高齢者サポートに関するさまざまな情報を提供してくれます。自治体によっては、そうした情報をインターネットを通じて提供しています。

第4位 介護について

第4位 介護について
第4位 介護について提供:イメージマート

第4位は、介護に関する情報・知識でした。

最近では、日常的にデイサービスの送迎の様子や老人ホーム施設を見かける機会も多いでしょうが、そうした施設の中で、どのような介護サポートやサービスが提供されているのか、どのようにすれば利用できるのかは、実際の利用者でなければ、なかなか分かりづらいものです。

介護が必要になったときの情報」(47歳・女性)や「介護サービスを受ける場合の費用」(56歳・男性)、「年金とか介護サポートとか、困ったときにどこに頼ればいいか」(42歳・女性)など、介護に関する基本情報を知りたいという意見が多数ありました。

40歳以上であれば、皆介護保険料を支払っているのですから、その保険料がどのような仕組みで使われているのかは、本来、最低限知っておきたいところです。

公的介護保険は、介護度に応じて受けられる介護サービスも異なりますし、本人及び世帯の年収によって自己負担金額の割合も異なります。相談窓口も、地域包括支援センター、自治体、社会福祉協議会など、提供サービスによっても異なります。いざという時に、たらい回しにされ、あわてないためにも、基本的な介護制度の知識は知っておいたほうが良いでしょう。介護保険の情報は、地元自治体の介護保険課に問い合わせれば、基本的な情報を提供してくれます。

第3位 健康について

提供:イメージマート

第3位は健康に関する情報です。

健康に問題が出た時の公的機関サポート」(47歳・女性)。「健康を維持するのには、どうしたらいいか」(55歳・女性)、「健康寿命を延ばすこと」(45歳・女性)、「健康に関して今やるべきこと」(41歳・男性)など、中高年段階から健康状態を保ち続けたいニーズを抱えている方が多くいらっしゃることがわかりました。

ただ、どのようにして健康を維持していくかについては、その人の現在の生活状態や生活態度、運動習慣、食生活状況などによって異なってくるでしょう。また、同じアドバイスを受けたからといって、皆がそれを守れるというものでもありません。それぞれの人の特性にあったアドバイスを、医師や管理栄養士、健康や運動に関するアドバイザーなどに相談していくことをおすすめいたします。

第2位 老後のお金・資金について

第2位 老後のお金・資金について
第2位 老後のお金・資金について提供:イメージマート

第2位は、老後のお金、老後資金について知りたいというものでした。

老後資金はいくら必要か」(56歳・女性)、「老後に必要なお金について」(45歳・男性)、「老後資金の準備方法」(42歳・女性)、「老後2000万円が必要と言われるが、本当にそうなのか」(52歳・女性)など、現役引退後の生活設計に関する情報を知りたいという意見が多数寄せられました。数年前の老後2000万円問題をきっかけに、いくら老後にお金を準備しておけばよいのか、関心が高まっています。

その人が老後にどのような生活を望むかによって、必要金額は異なるでしょうが、単純に言えば、必要な生活資金+備えのための必要資金=公的年金+自己資金 が釣り合えば問題ないわけです。しかし、実際にいくら必要か、不足金額をどのように補っていくかなど、自分ひとりでプラニングする方は一部に留まるでしょう。

老後生活のための生活資金シミュレーションは、ファイナンシャル・プランナーの相談分野です。お近くのファイナンシャル・プランナーに相談すれば、シミュレーションシートに基づきながら、資金計画などのアドバイスを提供してくれるはずです。

第1位 年金の仕組みについて

第1位 年金の仕組みについて
第1位 年金の仕組みについて提供:イメージマート

そして第1位は、年金の仕組みについてでした。

年金をいくらもらえるのか」(42歳・女性)、「年金のもらえる額と年齢」(45歳・男性)など、基本的な日本の老齢年金の仕組みを知らない方が多数いらっしゃいました。これは40代だけでなく、「年金はいつからいくら貰えるのか」(57歳・女性)など、50歳を過ぎ保険受給年齢が近くなってもご存知ない方もいらっしゃるようです。

年金の納付金額などに関する情報は、毎年「ねんきん定期便」が送られているはずですし、日本年金機構「ねんきんネット」にアクセスすれば、自身の年金記録の確認や将来の年金見込み額の試算なども可能なのですが、あまり理解されず、こうした情報はスルーされているのかもしれません。

年金の基本情報を知りたい場合、まずはお近くの年金事務所に相談してみるのが一番です。そこでは、あなたの知りたい情報をしっかりと教えてくれるはずです。

以上、40代、50代の方が「将来高齢期に備えるために知りたい情報」の結果内容についてランキングに沿って説明いたしました。ランキングに見られたように、「健康」、「介護」、「年金」、「生活資金」など、高齢期を過ごしていくための基本情報でした。これらの情報は言い換えれば、高齢期のための「基礎必須情報」であるとも言えます。こうした知識は、歳を重ねてからではなく、若いうちから知っておいた方が役立つ情報も多々あります。もし、40代、50代の方々のご両親がご存命であれば、彼ら彼女らの健康サポート、介護サポートにもこうした情報は有効に働くことでしょう。高齢期に必要な知識を予習していくことが、自分自身、そして両親のQOLの向上に働くはずです。

超高齢未来観測所

超高齢社会と未来研究をテーマに執筆、講演、リサーチなどの活動を行なう。元電通シニアプロジェクト代表、電通未来予測支援ラボファウンダー。国際長寿センター客員研究員、早稲田Life Redesign College(LRC)講師、宣伝会議講師。社会福祉士。著書に『超高齢社会の「困った」を減らす課題解決ビジネスの作り方』(翔泳社)『ショッピングモールの社会史』(彩流社)『超高齢社会マーケティング』(ダイヤモンド社)『団塊マーケティング』(電通)など多数。

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