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人生100年時代、定年で「終わった人」にならないために

斉藤徹超高齢未来観測所
映画「終わった人」より、画像提供:c2018「終わった人」製作委員会

「人生100年時代」の後半部分をいかに過ごすか

ここ最近、「人生100年時代」テーマに注目が集まっています。言うまでもなく、平均寿命の伸びがその遠因ですが、人生100年時代の理想的な過ごし方についてはなかなか正答がないのも現状と言えるでしょう。

平成28年より首相官邸で開かれている「人生100年時代構想会議」も、タイトルからは100年における人生設計をテーマにするものかと思われました。ベストセラー『ライフ・シフト』の著者、リンダ・グラットン教授を招いたことで話題にもなりました。しかし、現在のところ、そこで議論に上がっているのは。「幼児、高等教育の無償化」「壮年を対象とするリカレント教育」「大学改革」など、いずれも働き方改革や生産性向上に繋がる議題・テーマが中心で、高齢期のあり方については今のところ議論される気配はありません。

人生後半をいかに生きるべきか

「人生100年時代」を前半と後半に分けると、「人生100年時代構想会議」は人生前半の話が中心であり、後半の人生いかに過ごすべきかはすっぽり抜け落ちているのです。

人生後半をいかに生きるべきか。それは男性にしてみれば、ほぼ「定年」以降の人生をいかに過ごすかということと同義と言えるでしょう。

年金支給開始年齢の引き上げとともに、同じ会社に65歳まで働きつづける人の割合は増えたものの、それが望ましい後半人生の働き方かどうかも議論が残るところです。

定年後の人生をいかに生きるべきか、というテーマは常に多くの当事者の関心事ではあります。しかし、そこに正答があるわけではありません。ひとりひとりが考えて、回答を見つけて行くテーマなのです。

最近、まさにそのことを考えさせられるような、定年後の人生の右往左往をテーマとする映画を試写する機会がありました。内館牧子原作、中田秀夫監督の「終わった人」(2018年6月公開予定)です。

定年って生前葬−「終わった人」

主役の田代壮介(舘ひろし)は、超一流メガバンクに就職、出世街道を歩んでいましたが、途中で出世コースから外れ、出向させられた子会社の役員として定年を迎えることになります。

定年後、仕事一筋だった壮介は、やることが見つからず、ありあまる時間をいかに過ごすか、悩める日々を送ることになります。再就職にチャレンジする、カルチャースクールに通ってみる、スポーツクラブや公園で時間をつぶす。しかし、なかなか満足のある実感を得ることができません。

以前われわれが行った調査でも、定年後に自分のやりたいことを見つけられるまで、何年かさまざまな趣味にチャレンジしてはあまり続かず、再び新しい趣味にチャレンジする「趣味ホッパーするリタイア層」の存在を確認しましたが、まさに壮介の動きはその調査結果と一致しています。そして、上手くいかないことを愚痴る姿に妻の千草は愛想をつかします。

定年当日、ハイヤーに乗せられて、部下たちから見送られる自分の姿を、まるで霊柩車に乗せられて出棺したように感じた壮介は、「定年って生前葬だな」とぽつりとつぶやきます。

「定年レジリエンス力」を高めるためには

定年を生前葬と感じることなく、いかに張り合いを持って後半人生を歩んでいくか。そのためには、40代後半、遅くとも50代から、定年後に備える力、すなわち自分自身の「定年レジリエンス力」を高めておくことが重要です。レジリエンスとは抵抗力とか復元力という意味です。ベストセラーになった『定年後』(中公新書)の著者である楠木新氏も触れていますが、定年後に備えて意識的に、「副業にトライする」、「パラレルキャリアを築いてみる」といったことにチャレンジしてみることも重要であると思います。

「副業」「パラレルキャリア」といったキーワードは、現在新しい働き方を求める若者中心に語られているものですが、実は若者分野ではなく、定年退職前後の中高年社員の働き方にこそ、導入すべき考え方と言えるでしょう。

単一の会社に働き続け、やや頭が固くなってしまった中高年社員が、後半の人生を再び活力を持って働き続けるためのリ・チューニング期間として役職定年期間を位置づけ、新たにトライしたい分野に「パラレルキャリア」、「セカンド・ジョブ」制度を活用し、チャレンジしてもらう。企業にとっても、超高齢社会が進む中、働き続けることに高いモチベーションを維持し続ける高齢者を増やすことは必須テーマであり、そのための制度構築が求められていると言えるのです。

そして、リフレッシュした形で、定年後も企業に再雇用され、かつ副業を続けるも良し、きっぱりと古い会社に別れをつげ、新しい分野にチャレンジするもよし。

若手社員の間では就業の流動化が進んでいますが、一方、高齢期になるとなかなか新しい分野で前向きな気持ちで働くのは難しいとも言えます。「人生100年時代」と言いながらも、前半人生だけを語るのではなく、後半人生の就業流動化を進めるための施策がより推進されていくべきです。

超高齢未来観測所

超高齢社会と未来研究をテーマに執筆、講演、リサーチなどの活動を行なう。元電通シニアプロジェクト代表、電通未来予測支援ラボファウンダー。国際長寿センター客員研究員、早稲田Life Redesign College(LRC)講師、宣伝会議講師。社会福祉士。著書に『超高齢社会の「困った」を減らす課題解決ビジネスの作り方』(翔泳社)『ショッピングモールの社会史』(彩流社)『超高齢社会マーケティング』(ダイヤモンド社)『団塊マーケティング』(電通)など多数。

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