天体衝突と巨大カルデラ噴火、どちらが怖い?

(写真:アフロ)

5月31日放送のNHKクローズアップ現代「人類のピンチ!?天体衝突を回避せよ」は実に迫力があった。最新の研究によると地球への衝突が懸念される天体が1万6千もあり、天体衝突をSF世界の話だと思ってはいけないのだ。

確かに天体衝突(馴染み深い言い方だと「隕石落下」)は不可避の現象だ。実際地球表面には数多くの衝突の跡「クレーター」が残っている。最大クラスでは、その直径はなんと300~400kmにも達する。1億年以上も生物界の頂点に君臨した恐竜を、6500万年前に絶滅へと追いやったのも天体衝突だった。直径10kmの隕石がメキシコのユカタン半島に落下したのだ。衝突で発生した多量のガスが成層圏でPM2.5に似た硫酸エアロゾルとなって「衝突の冬」と呼ばれる寒冷化を起こし、また酸性雨を降らせた。こんな環境の激変が食物連鎖を破壊し、プランクトン、植物、そして恐竜に至る「大量絶滅」を引き起こしたのだ。

ではこのような破局的な天体衝突は、どれくらいの確率で起きるのだろうか?

天体衝突の発生確率とそのリスク

図をご覧いただこう。

Hughes(2003)、Chapman (2007)などのデータに基づく。
Hughes(2003)、Chapman (2007)などのデータに基づく。

横軸は衝突のエネルギー、縦軸は今後100年間の発生確率および平均的な発生間隔を示す。直径数十mの小天体はしばしば地球へ突入するが、多くは大気中で燃え尽きてしまう。ところが直径100mを超えるとおよそ1万年に1度は(100年発生確率1%で)地上へ落下し、直径1kmのクレーターを作る。さらに大きい1kmクラスの天体衝突は約1万年に1度起こり、直径10kmのクレーターの形成とグローバルな寒冷化を起こす可能性がある。大量絶滅を引き起こすような巨大衝突は、1億年に1度程度の頻度だ。

地球規模の寒冷化をもたらす天体衝突の100年発生確率は、約0.01%。一方で同程度の寒冷化は火山の大噴火によっても起きる。「火山の冬」と呼ばれる現象だ。地球のどこかでこのような大噴火が起きる100年確率は数十%にもおよび、天体衝突よりはるかに切迫度は高い。

日本列島の面積は地球表面の1%にも満たないので、天体がこの列島を直撃する可能性はさらに小さくなる(図)。例えば、直径100mクラスの天体が日本列島を直撃して1kmのクレーターを作る100年確率は0.01%程度だ。

このように、天体衝突の確率はそれほど高くはない。また巨大衝突でなければ被害は限定的である。ある見積もり(Chapman, 2007; Comet/Asteroid Impacts and Human Society)によると、天体衝突の危険値(=想定死亡者数×発生確率)は全世界でおおよそ年間100人程度である。したがって、日本に限るとその危険値は小数点下の値となる。

誤解なきように言っておくが、私は決して天体衝突を軽んじているのではない。「地球人」として、そして「宇宙立国」を標榜する日本人として、天体衝突に備えることは当然だろう。

巨大カルデラ噴火の発生確率とそのリスク

一方で私たち日本人が、天体衝突と同様に、いやそれ以上に取り組みを急がねばならないのが、火山噴火、特に「巨大カルデラ噴火」だ(最悪の場合、日本喪失を招く巨大カルデラ噴火)。何故ならば、世界一の火山大国日本における巨大カルデラ噴火の発生確率は、天体衝突よりはるかに高い(図)。さらに、ひとたびこの噴火が起これば最悪の場合1億人が犠牲となり、日本喪失を招く可能性がある。日本における巨大カルデラ噴火の危険値は年間3000人を超え、交通事故とほぼ同程度、そして首都直下地震や富士山大噴火よりはるかに高い(日本喪失を防げるか?ギャンブルの還元率から巨大カルデラ噴火を考える)。

それにもかかわらず、この切迫した課題に対するの取り組みはほとんど行われていない。噴火の予測に向けた研究はようやく始まった(鬼界海底カルデラに巨大溶岩ドームが存在:超巨大噴火との関係は?)。しかし何より大切なことは、行政も含めて「火山大国の民」が巨大カルデラ噴火の危険性をしっかりと認識することだ。