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緊急事態宣言も海外ビジネス往来一転継続!? もうさすがに擁護できないという宿泊施設の声

瀧澤信秋ホテル評論家
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

往来継続のニュース-驚きと共にホテルから連絡が

緊急事態宣言の再発令が囁かれていた年末年始より、様々な宿泊施設へ緊急事態宣言についての意見を集約していたが、ホテル施設内の飲食店の時短営業についてや、営業自粛要請の有無への関心と共に、やるならとにかく徹底して短期間で成果が出るように(解除されるように)願うしかないし協力してくしかないという意見も目立った。

そんな宿泊施設の声を纏め記事化しようと目下作業していたところ、緊急事態宣言が発令されたわけであるが驚きの(付帯)ニュースが飛び込んできた。中国や韓国など11カ国・地域との間で合意しているビジネス関係者の往来については継続する方向というのだ。一時全面停止を検討していた事柄であるが、相手国との交渉も必要なため一律に止めるのは困難というのも理由のひとつとされる。

ビジネス往来、一転継続へ(共同通信)

そもそも、1月4日の時点ではビジネス目的も入国禁止が検討されていた。それまでは例外的な扱いとされてきた中国や韓国など11カ国・地域のビジネス関係者の往来についても緊急事態宣言下では入国停止とのことで、至極真っ当というか当然のニュースとして伝えられた。これは、変異ウイスルの感染確認などにかかわらず一律の入国停止ということでもあったが、一転、5日には変異ウイルスの市中感染が確認された国・地域ごとに停止という対応に変わったという。

自身も家族も緊急事態宣言下の生活について(我慢を続ける生活について)ある程度の覚悟を固めつつあった中での報道に驚いた。このニュースについても、海外からの渡航客がゲストになりうるホテルから緊急に意見を聞かなくてはと思っていたところ、従前から緊急事態宣言についての話を聞いていたホテルの関係者の方からいち早く連絡があった。ところが、海外からのビジネス往来客についての現場対応如何といった話ではなく、「二階さんや菅さんはある意味で観光業の立場からするとありがたい存在ではあるが、これはいただけない-」という落胆の声であった。

他の宿泊施設の方々からも同様の声が

「いち早いGoTo再開を願う立場からしても、緊急事態宣言についてはとにかく耐え忍ぶしかないと覚悟していたが…チグハグというか、緊急事態宣言に対する国民の士気を下げるようなことは、宿泊業という立場を超えて個人的に…菅さんを応援してきましたがもう擁護できない

「春節を睨んでのものかもしれないですね。ここ数年確かにインバウンドはありがたかったですが、コロナ禍で日本人のお客様の大切さが身にしみてきました。日本人のお客様に出掛けるなとガマンを強いる中で、ビジネスとはいえ海外のお客様を心から歓迎する気分にはなれない-」

等々、経営者、支配人、現場スタッフから否定的な意見が多く寄せられた(一部筆者にて修正/太字筆者)。ビジネス往来には技能実習生のような人々も想定しているというが、ビジネス(の定義の問題もあるが)であれば往来できることには変わりない。

写真:アフロ

二分から総スカンへ

GoToトラベル停止の際は世論が分かれた。すなわち、経済を回すという見地からもGoToトラベルは継続する必要がある(感染拡大とGoToトラベルの因果関係はない)という主張と、感染拡大傾向にある以上GoToトラベルは止めなくてはならない(感染拡大の原因にもなっている)という主張だ。

GoToトラベル停止については宿泊施設関係者でも反応が分かれた。ただし感染拡大というアプローチではなく“経営(マネージメント)層”と“現場スタッフ”の温度差とも言い換えられるものだ。GoToトラベルは関連業者が多岐にわたる宿泊業という観点から経済を回すためにも(自社が生き残るためにも)必須という意見と、トラブル続きで現場が振り回されてきたGoToはもう勘弁してほしい(停止にホッとしている)という意見だった。

このように意見や主張が二分されたGoToトラベル停止関連のニュースであったが、さすがに今回の緊急事態宣言再発令からの往来継続ニュースに対しては、世論はもとより緊急取材した宿泊施設からも総スカンという状況になっているようだ。

以上、取り急ぎ緊急事態宣言からのビジネス往来継続について宿泊施設の声を纏めてみたが、GoToトラベル停止、緊急事態宣言再発令等に関する宿泊施設の現場については引き続き取材をすすめていく。

ところで、筆者のホテル評論家としての評論スタンスは、ホテルの現場取材に基づく宿泊施設の評価(おすすめホテル)、レポート、宿泊施設にかかわる社会問題などが主体となる。ゆえに、宿泊施設関連とはいえど政治的なテーマを含む論評は控えているが、今回は記事の内容からも菅氏の写真を記事のサムネイル画像とした。

かようなスタンスであるが、過去の執筆記事を振り返ってみると政治家のサムネイル画像にしたことが一度だけある。そのときも菅氏(官房長官時代)の写真であった。当時の菅官房長官が、世界トップクラスのホテルを全国に50カ所程度新設するという考えを示したことについて、宿泊業界全体の人手不足問題という見地から指摘した内容である。

高級ホテルを!と菅官房長官 それどころではないホテルのヒト問題(Yahoo!ニュース(個人))

今回のビジネス関係者の往来継続について自民党関係者は、首相官邸の幹部は理解を示していたが首相が固かった、首相は入国継続に強い思いがあると話したというが、そんな強い思いと、今昔の感すらある高級ホテルを全国に50カ所程度新設というニュースにある種の一貫性を感じるのは筆者だけだろうか。

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

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忌憚なきホテル批評で知られる筆者が、日々のホテル取材で出合ったリアルな現場から発信する辛口コラム。時にとっておきのホテル情報も織り交ぜながらホテルを斬っていく。

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