大打撃を受け続けるホテル!現場ではいま何が起こっているのか?

既に経営危機に瀕している施設も増加している(写真:アフロ)

深刻な状況

あらゆる産業に深刻な影響を与え続けている新型コロナウイルス。インバウンドビジネスへの直接的な影響が指摘されてきたが、国内においても外出自粛要請がなされ観光業界全体への影響は計り知れない。旅のベースとして私たちに親しみのあるホテルであるが、施設によっては、存亡の危機に直面しているといった悲痛な叫びも聞かれる。先の見えないコロナショックにオリンピックの延期。「春休みは諦めたとしてもゴールデンウィークが同じような状況であれば経営破綻が続出するのではないか」といった関係者の声も聞かれる。

事実、既に経営破綻した宿泊施設や運営会社もあるが、新型コロナウイルスが直接的な影響という前提はあるものの、従前から経営基盤の弱かった施設、独立系や小規模施設、そもそも体力がなかった経営・運営会社という共通点が指摘できる。また、近年の訪日外国人旅行者需要に喚起され“インバウンドありき”でスタートした施設では、これからさらに厳しい戦いを強いられるのは想像に難くない。

確かに業界全体でみると予断を許さない状況であり、最盛期の数パーセントしか予約が入らない、とりあえず休業するしかないといったような、“宿泊業界お先真っ暗”といった声が趨勢を占めるが、こうした現況にあっても集客を維持している施設がある。「これまで予約がとれなかった施設も今なら行けるかもと調べたら見事に満室だった」とは友人の弁であるが、もちろん少数派ではあるものの顧客の圧倒的支持のもと集客を続けている施設は存在する。

集客を続けるホテル

まず、各国で渡航の制限がなされているような状況下では当然ではあるが「従前よりインバウンド率をコントロールしてきた施設」という点が指摘できる。星野リゾートの星野佳路代表も「インバウンドの比率が高くなかったところは、意外に維持できている印象」(日経ビジネス2020年3月13日)というが、都市型ホテルと観光地の施設といった条件の違いなどはあるものの、いま集客できている施設は(日本人客の)ターゲティングを明確にして提供価値を高めることを続けてきたという点が際立っている。

筆者がプライベートで時々訪れる地方都市のビジネスホテルがある。ビジネスホテルではあるものの快適なステイができるので、用事が無くとも出向くことすらある。ホテルには、ゲストが求めるものをこれでもかと揃えた充実設備のスイートルームを設けており、その客室目当てというゲストも多くいる。そのスイートルームは決して安くはないが(設備からいえば相当安い)空室カレンダーを見ると常に1/3くらいは埋まっている印象であった。

いまこのような状況下でどうなのだろうと再度チェックしてみると、驚いたことに半分以上が埋まっているのだ。全国からファンの押し寄せるホテルでありスイートルーム指定のゲストも多いというが、他の客室タイプの予約状況を見てもそれなりに奮闘している。改めて支配人へ取材する機会を得たいと思うが、ここでもやはり以前から外国人客の姿はあまり見かけなかった印象がある。

いまホテルで何が起きているか

思えば近年インバウンド需要の高まりもあって多くのホテルは高稼働、本当に忙しかったと振り返る関係者は多い。ホテルとはいっても所有・経営・運営などそれぞれの立場があり一概には論ぜないが、訪日外国人旅行者の激増を商機と捉えてきたことは業界関係者多くの共通する認識だったと思う。一方、市民の間では“観光公害”と言われるように、オーバーツーリズムが市民生活へ悪影響を与えてきた例は枚挙に暇が無い。「静かになって本来の京都を取り戻したようでホッとしている」「何ごともほどほどにしておかないと」と京都在住の友人は言う。

ホテルが増え続けた結果、人材不足に陥り清掃スタッフの確保にも困難を極めるホテルも相当数だった。筆者も人手不足についてのレポートを何度書いたことか。転じていま多くのホテルは“暇”である。経営危機に瀕している施設をどのようにフォローしていくのかという具体的施策の重要性は前提として、経営を続けている中には「またゲストが戻ってきてくれる時を待ちつついまは堪える時」といったホテルが多い。そうした施設ではいま何が行われているのだろうか。

まず、繁忙を極めた時にはできなかったことに取り組むといったホテルの声を聞く。実際に取材してみると、サービスの総点検、コンセプトの見直しなど全体のブラッシュアップに注力する施設が多い。なかなか時間を割けなかったスタッフ教育へも改めて取り組む施設も目立つ。また、この時期に有給休暇の取得を推奨する施設、系列ホテルへ出向させるなど、ホテルにとって最も重要な“ヒト”の育成はいまだからこそ手厚くできるという。ハードへの大きな投資は難しいものの、高稼働時には着手できなかった修繕に取り組めるという話もあった。

また、この時期だからこそ顧客や関連業者との絆をさらに強くすべく奔走するといったホテルマンの声もある。ゲストは訪れないかもしれないが、アイディアを練った宿泊プランの売り出しにも力を入れることは、スタッフのモチベーション維持にも大切という。テレワークを念頭に置いたデイユースプラン、ホテル=個室ということで、レストランやバンケットといったパブリックスペースを想定しない滞在スタイル(インルームダイニングプラン等)のプランも多くみられる。

いずれにしてもここまで消毒や清掃に力を入れるホテルの姿というのは、数多くのホテルを取材してきた筆者としても初めて見る光景だ。安心・安全という宿泊施設が持つ基本的な使命、公共性をも改めて認識させられる。困難を乗り越えると大きく成長するというのは人生論でよく語られるがホテルも同様。国難ともいえる状況の先に、ゲストの人生をも変えてくれるような素敵なホテルに出合うことができるだろうか。

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

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