組織的仮押さえに便乗値上げ!五輪ホテル不足に翻弄されるチケット購入者

会場周辺のホテルはかなりの高騰が予想される(写真:アフロ)

組織委員会の仮押さえが表面化

東京オリンピックのホテル不足問題がクローズアップされたのが2019年6月のこと。5月9日からスタートした観戦チケットの抽選受付には申し込みが殺到、6月20日に抽選結果が発表され購入希望者は7月2日までに手続きを完了させる方法がとられた。ところが、遠隔地のチケット購入者から「チケットは取れてもホテルが取れない」という声が相次いだ。

筆者へはまず関西のテレビ局から状況解説のオファーがあった。早速、ホテル関係者へ取材してみると意外な理由が判明した。旅行会社などの組織的な事前確保は予測できたが、「会期中の在庫は既に大会組織委員会に提供している」というのだ。他のホテルへも確認したが同様の回答で、大会組織委員会が大量に部屋を仮押さえしていた実情を番組で解説した。

その規模たるや国際オリンピック委員会や競技団体などの関係者向けに、東京ベイゾーン(16会場)・ヘリテッジゾーン(11会場)を中心に約46000室。これでは一般の観戦者が予約できるわけがない。とはいえ既にチケット代金は支払い済みだ。「チケット販売時にホテル予約が困難になる可能性を知らせてくれれば購入しなかった」という声もあった。

仮押さえはいつ開放されるか?

仮押さえがなされたのは、オリンピック招致の際に客室数保証も開催地の条件とされるためだ。大会関係者のホテルがないというのは許されないということだ。ただし、事前に仮押さえしたことはわかっているのだから「大会組織委員会で大量に仮押さえしてあり、会場周辺ではホテルの手配が困難になる可能性があります」とチケット販売時に購入希望者へ注意喚起すべきだったろう。

一方、各国の競技団体などが独自に宿泊先を確保しているケースもあり、一定数の部屋が不要になる見込みで、いつ・どれくらいの部屋が手放せるのかは調整中とされてきた。直近の報道では19年9月末頃から仮押さえしていた部屋の一部を順次手放しているという。ただしその数は未公表だ。

複数のホテルへ取材するとリリースされた客室について11月頃から一般客の予約を開始したというホテルもあれば、国別エントリーが大会の2カ月前なので大会直前まで一般への提供可能客室数は確定できないというホテルもある。いずれにせよ一般利用者が会場周辺ホテルを確保できるのか否かは不確定要素が強く、組織的な客室確保に一般利用者が翻弄されている形だ。

既に10倍、20倍、数十万円というケースも

ところで、会期中の料金高騰も気になるところだ。ホテルの料金は繁閑、需給で変動するのが一般的。業界ではレベニュー・マネジメントといわれ、航空会社などでも用いられる手法だ。すなわち、ホテルの空室や飛行機の座席など「在庫の繰り越しができないビジネス」において、需要を予測して売上高の最大化を目ざす販売管理方法といわれ、多くのホテルが取り入れている。ただ、“正規料金の○倍まで”というように上昇幅にも一定のルールを設けているホテルも多い。

ビジネス上の収益という点でいえば、需要がある以上いくらでも値上げするということになるのだろう。一方、ホテルの過剰な料金変動については一般利用者からの批判が根強く、長期的な視点での顧客・リピーターの獲得という観点からも、変動させないことをプライスポリシーにするホテルチェーンもある。ホテルの持つ公共性という点も注目される。

他方、五輪会期中の民泊で通常料金の10倍、20倍、中には数十万円という例もみられることがニュースになった。一般の独立系ビジネスホテルでも通常1万円程度が6万円などという例、中にはキャンセル料100%・事前カード決済などの縛りがあるケースもみられた。ただし、まだ予約を開始していない宿泊施設やこれから新規に開業するケース、郊外の施設や(一般の予約サイトに掲載されない)一般利用のできるレジャーホテル(ラブホテル)など多様な選択肢があるので、慌てず冷静な情報収集が肝要だ。

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

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