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この臨時国会を、国民が国会議員の質問の「質」を評価する最初の国会にしよう!

高橋亮平日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事
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「万年野党」では、質問の「量」的評価に加えて、「質」的な評価も行う

NPO法人「万年野党」では、国会の活性化や、国会での本質的な政策議論をと、国会に対しても様々な形で評価を行って来た。

その代表的なモデルが、先日、186国会版を発売したばかりの『国会議員三ツ星データブック』だ。

当欄でも、先々週は『2014年通常国会版「三ツ星&二ツ星国会議員」全氏名を発表』、先週は、『国会内で積極的に質問を行っているのはどの政党か <政党別国会質問回数ランキング 衆議院編>』と最新のデータについて書いてきたが、これまでは、国会での議員の活動を記したデータなどはほとんどなく、こうした国会活動を客観的に見るためのデータを公表する事には、大きな意味があると考え実施している。

一方で、こうした「量」的評価を行っていると、「回数だけが多ければ良いのか」、「大事なのは質問の質だろう」などといったご指摘も頂く。

今週から始まった臨時国会では、まさにこうした国会の中での質問の「質」においても評価しようと準備しており、「万年野党」で行っているこうした「質」の評価の試みについても紹介して行きたいと思う。

国会質問回数ランキング<参議院編>質問総数は前年から1.5倍に急増

「量」的評価については、「万年野党」では、入会してもらった全会員に『三ツ星データブック』を配布しているほか、Amazonなど書店でも販売を開始したので、詳しくは、是非『186国会版 国会議員三ツ星データブック』をお手に取ってもらえればと思うが、先週、衆議院のみを紹介したので、今回は、参議院の「量」的評価からはじめる事にしよう。

2014年の通常国会である第186国会における参議院の質問総数は、2,108回だった。こうした数字を聞いても多くの人は、全く見当もつかないだろうが、昨年の通常国会である第183国会での質問総数は1,366回だった事と比較すると、一気に1.5倍以上にまで増えている事などが見えたりもする。

今回の評価で対象となった参議院議員は243人で、そのうち第186国会では82.3%に当たる200人が質問を行っており、昨年の通常国会である第183国会の193人から質問者でも7人増えている。

「万年野党」の国会議員三ツ星評価によって、今回、参議院において質問回数分野で☆を獲得したのは、このうち質問回数23回以上24位までの27人としたが、この☆を獲得した27人の参議院議員を政党別に見ていくと、最も多かったのは、みんなと共産の7人(25.9%)だった。次いで、維新の5人(18.5%)、社民3人(11.1%)、公明2人(7.4%)、結いと生活、無所属が1人(3.7%)ずつとなっている。

自民が0人なのは衆議院同様だが、参議院の場合、民主も☆を獲得した議員がいないという事が特徴と言える。

自民・民主は☆獲得議員が一人もいない

図表: 参議院政党別質問回数割合(☆獲得議員数・一人当たり回数・総数)

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質問総数や一人当たり質問回数での政党割合も見てみよう。

参議院全体の平均質問回数は8.7回と、衆議院の5.2回と比較して、議員一人当たり約1.7倍も衆議院よりも質問している。その意味で言えば、いわゆる「良識の府」として機能しているのかもしれない。

最も一人当たり質問数が多かった政党は、社民で39.0回質問している。次いで改革の36.0回、共産の25.0回、生活23.5回、維新22.4回、みんな22.2回、改革18.0回、無所属17.0回、公明12.0回と、ここまでが平均以上。民主7.3回、自民2.8回が平均以下となっている。

ただこうしたデータも、質問総数で見ると、逆に一番多いのは、424回(20.1%)で民主がトップになる。次いで自民316回(15.0%)、みんな289回(13.7%)、共産275回(13.0%)、公明240回(11.4%)、維新202回(9.6%)、社民117回(5.5%)、無所属85回(4.0%)、結い78回(3.7%)、改革47回(2.2%)と並ぶ。

衆議院同様、所属議員の数で質問時間が配分される事などから、小規模政党は質問機会が少ないが、逆に大規模政党に所属しているとなかなか順番が回ってこないという構造になっている事なども分かる。

質問総数、自民は1.7倍で2位へ上昇、維新は約4倍に

昨年の通常国会である183国会と比較すると、全質問数自体が1.5倍以上に増えている事もあり、自民も183国会で183回(3位)だった質問数が一気に316回(2位)に、公明も146回(4位)が240回(5位)に増加している。

一人当たり質問数についても、自民も2.2回から2.8回と微増、公明も7.7回から12.0回まで増加。☆獲得議員数についても、自民はゼロのままだが、公明は1人から2人に増えている。

参議院の場合、この間に選挙があったため、議員数の増減もあるが、とくに大幅に増えているのは、51回(9位)から約4倍の202回(6位)になっている維新と、123回(6位)から2倍以上の275回(4位)になっている共産だ。維新については、☆獲得議員も1人から一気に5人まで5倍となった。共産も☆獲得議員を5人から7人に増やしている。

逆に生活は、128回から47回まで一気に減っており、☆獲得議員も5人から1人まで減少した。参議院の中で質問総数を減らしたのは、この生活と、改革だけだった。

この他にも特徴的な事として、社民の一人当たり質問数が19.0回から一気に2倍以上の39.0回まで増やしトップになった事や、民主が質問総数こそ323回から424回と1位を守ったが、☆獲得議員は1人もいなくなってしまった事なども挙げられる。

『三ツ星データブック』は、支持者など幅広い方に共有を!

今回も紹介した様に、こうした国会議員の活動データによる評価は、少しずつ浸透しつつあり、国会終盤になると、議員事務所から様々な問い合わせをもらう様になって来た。

また、今月発売したばかりにも関わらず、『186国会版 国会議員三ツ星データブック』は、すでにいくつかの議員事務所で、100冊以上のまとめ買いをしていただいている。

今回の『186国会版 国会議員三ツ星データブック』からは、定価をつけた販売用と別に、会員配布用に価格をつけないタイプも印刷した。国会議員のみなさまには、100冊以上まとめてご注文頂ければ、作成実費で「資料」としてこの価格のついてないものもご提供している。価格がついていないため、後援会のメンバーや支持者、パーティの際のお土産などにも是非ご活用頂いて、こうした国会活動のデータをより幅広い人たちに見てもらえる様になればと思っている。

この臨時国会を、国民が質問の「質」をチェックする最初の国会にしよう!

一方で、こうした「量」的評価である『国会議員三ツ星データブック』を知ってもらえばもらう程、国会議員の質問は「量」ではないなどといったご指摘も多くもらう。

まだ、あまり知られていないが、「万年野党」では、実は、質問の「質」の評価についても、『国会議員質問力評価』というものをおこなっており、最新の2014年通常国会予算委員会の冒頭質問等を対象とした『国会議員質問力評価 2014年予算委員会版』の最終結果については、こちらから見る事ができる。

こうした中、いよいよ今週から始まった臨時国会だが、今回は、一部の議員の質問だけを対象とした前回の反省を生かし、本会議、委員会問わず、全質問を対象とした『187国会版 国会議員「質問力」評価』を実施する。

評価は、同僚国会議員、官僚・元官僚、政策専門家といった方々によるものに加えて、一般の有権者等の意見も反映するために、「万年野党」の会員にも評価してもらえる様にしている。

とくに会員による評価は、テレビでたまたま見た議員など数名の評価だけでも結構なので、ぜひ積極的に参加していただきたい。

187国会版『国会議員「質問力」評価』

国会議員の政策活動に関する情報は十分ではなく、メディアの報道は政局に終始しがちです。選挙において国民がより適切に一票を投ずるためにも、国会議員の政策活動について、より的確な情報分析・提供が重要と考えます。このため、全国会議員を対象に『187国会版 国会議員「質問力」評価』を行うこととしました。今回実施する「国会議員質問力評価」は、国会質問についての質的な評価を目的とし、以下の評価方法(いずれも点数方式で評価)を実施します。

1)同僚国会議員による評価

2)官僚・元官僚(匿名の評価者を当会にて選考)による評価

3)政策専門家(評価者10名程度を当会にて選考)による評価

4)会員(有権者等)による評価

評価結果は、各国会議員につき、上記1)~4)の評価結果(平均点数など)を整理し、整理したものから随時公表していく事を予定しています。なお、1)の評価については、それぞれの被評価者ごとに、評価者数と平均評価点のみを公表し、どの国会議員の方が何点をつけたかは非公開とします。趣旨をご理解の上、ご協力頂きますよう、よろしくお願いいたします。詳しくは、NPO法人『万年野党』ホームページをご覧ください。

日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。26歳で市川市議、全国若手市議会議員の会会長、34歳で松戸市部長職、東京財団研究員、千葉市アドバイザー、内閣府事業の有識者委員、NPO法人万年野党事務局長、株式会社政策工房研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員等を歴任。AERA「日本を立て直す100人」に選ばれた他、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等多数メディアに出演。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。

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