日本の大学やメディアが隠す「不都合な事実」

(写真:アフロ)

文科省主導の大学改革で、文学部などの人文科学系学部の「組織見直し」が掲げられ、大学教員らが強く反発しています。しかしこれは文科省の暴走というわけではなく、「教育による国際競争力の強化」を目指すのは先進諸国どこも同じで、日本はこのレースから大きく出遅れているというのが実情でしょう。

日本の労働生産性は先進国で最低で、日本のサラリーマンは過労死するほど働いてもアメリカの労働者の7割程度の利益しかあげられないという「不都合な事実」は、最近になってようやく認知されるようになりました。では、日本の研究者の生産性はどうなっているのでしょうか。

じつはここにも「不都合な事実」が隠されているようです。

オランダの学術出版大手エルゼビアが日本の研究活動を主要国と比較したところ、日本の官民合わせた研究開発投資の総額は米国と中国に次ぐ世界3位なのに、一定額あたりの論文数は主要9カ国で最低水準だとわかりました。1本の論文を書くのに、日本の研究者はカナダや英国の5倍以上の研究費を使っているのです。

なぜこんな悲惨なことになるのでしょうか。報告書は、「日本の研究者は日本国内にとどまりがちで、流動性の低さも問題だ」と指摘しています。先端研究では優れた研究者との国際共同研究が成果につながりやすく、各国とも積極的に海外との研究に乗り出しているのですが、日本の研究者は海外の研究者ネットワークに加われず、情報収集や共同研究で後手に回っているというのです。

大学に投入される研究費の多くは税金です。リベラルアーツの大切さを説くのもかまいませんが、その前に大学関係者は、研究開発投資がほんとうに有効に使われているのかを納税者に説明する重い責任を負っています。

じつはこれ以外にも「不都合な事実」はあります。

国連の「言論と表現の自由」に関する特別報告者デイビッド・ケイ氏は、「日本政府がメディアに圧力をかけている」として放送法4条の撤廃に触れたことで「反日」のレッテルを貼られましたが、その後の記者会見では日本の報道機関に対し、「先進国では優れた記者が所属媒体を移る、一種の流動性があるが、日本には存在しない。そのため政府からの圧力が記者にも特別な影響を与える」と述べています。

ところが、日本のマスコミの構造的な問題を指摘したこの会見を記事にしたのは朝日新聞だけで、他のメディアは無視を決め込んでいます。ケイ氏が安倍政権を批判したときは、「国連」を水戸黄門の印籠のようにしてこぞって大騒ぎしたというのに。

東芝は利益を水増しするために決算を粉飾し、財務省は首相の国会答弁に合わせて決裁文書を改ざんしました。ここでも問題はまったく同じ「流動性の低さ」です。「転職」という選択肢がないことで、有能なひとたちは違法行為に手を染めざるを得なくなりました。

日本の社会のすべての「不都合な事実」は、「タコツボ」にしがみつくしかないひとびとが生み出しているようです。

参考文献:「日本の研究 生産性低く オランダ出版社調査、投資あたり論文数 最低水準」日経新聞3月12日朝刊

「「日本メディア、政府圧力に弱い」――国連報告者デービッド・ケイ氏が指摘」朝日新聞2017年10月26日朝刊

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