野党はなぜいつも間違えてばかりいるのか?

参政権が18歳に引き下げられたことで注目された参院選ですが、結果は事前の予想どおり自民・公明の与党で過半数、非改選を含めれば改憲勢力が憲法改正を発議できる3分の2を確保しました。1人区などで民進党が予想以上に健闘したことで安倍政権に対する一定の批判があることも明らかになりましたが、今回の選挙は「アベノミクス」と「改憲」をテーマに争われたとのことですから、“民意”は安倍政権の経済運営を評価し、憲法改正の手続きに入ることを承認した、ということになるのでしょう。国会前で「民主主義を守れ」と叫んでいたひとたちは、民主的な選挙による審判を尊重しなければなりません。――まあ、無理でしょうけど。

日本の戦後政治を大きく変えたのが民主党の「政権交代」であることは間違いありませんが、安倍政権以降は自民党が与党第一党、社会党が野党第一党で低位安定していた55年体制と似てきているようです。このままでは野党は、共産党を含めてかろうじて3分の1を確保する「ガス抜き」になってしまいそうです。いったいどこで間違えたのでしょうか。

今回の選挙での民進党の決定的な失敗は、与党に先んじて消費税引上げの延期を決めたことでしょう。これによって安倍政権の社会保障政策を批判しようにも、財源がないのは同じですから、ほとんど差別化できなくなってしまいました。どちらでも同じなら、このまま与党に任せればいいという話になるのは当然です。原発再稼働、TPP参加、消費税引き上げを決めたのは旧民主党政権で、安倍政権はそれをそのまま引き継いでいますから、民進党にとって、3党合意を反故にした無責任な安倍政権の財政運営を批判する千載一遇のチャンスだったはずです。

選挙前の政党支持率は自民党36%、民進党8%と大きな差がついていましたが、世論調査では消費税を予定どおり引き上げるべきだと考えるひとは3割ちかくおり、将来の財政に不安を感じる層は7割に達します。財政再建の正論を掲げて堂々と論戦を挑む姿を見たかったと思うのは私だけではないはずです。

民進党が消費税引き上げを見送ったのは、消費税そのものを否定している共産党との選挙協力を実現するためでしょう。この戦略は一定の効果があったように見えますが、「同一労働同一賃金」などで安倍政権はウイングを左に延ばしていますから、民進党が共産党のいる左の端に押し込まれているともいえ、これでは自滅への道です。

イギリスのEU離脱で円高株安が進んだように、グローバル化した経済では一国の政策で景気を自在に動かすことは不可能です。世論調査で明らかですが、「立憲主義」や「安保法制」に有権者はたいして関心を持っていません。私たちがほんとうに知りたいのは、財源のあてのない空約束ではなく、労働市場改革や社会保障制度改革を含め、将来の日本社会をどのように変えていくのかの現実的な設計図です。

新たに有権者になった若い世代は、少子高齢化によって負担が大きくなっていく暗い未来を正しく予感しています。この「合理的な不安」にこたえる議論がほとんどなかったことが、日本の政治の貧困を象徴しているのでしょう。

『週刊プレイボーイ』2016年7月19日発売号

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