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まだ間に合う!スマホルールとフィルタリングで子どもを守ろう

鈴木朋子ITジャーナリスト/スマホ安全アドバイザー
(写真:イメージマート)

春は子どものスマホデビューが多い季節です。進学や進級に合わせて生活スタイルが変わり、見守りのためにスマホを持たせるご家庭が多いためです。また、幼い頃からデジタル機器に囲まれて育ち、家族のスマホやタブレットでネットの楽しさを知っている子どもたちは、一刻も早く自分専用のスマホが欲しいもの。「入学祝いにスマホが欲しい」とお願いしてくるケースも多いでしょう。

いつでも友達と連絡ができ、YouTubeやオンラインゲームで楽しむことができるスマホは、誰にとっても魅力的なデバイスです。SNSに勉強アカウントを作成して仲間と励ましあったり、LINEビデオ通話で一緒に課題に取り組んだりと、学習面にもプラスがあります。

しかし、子どもたちがスマホで接するネットの世界は決して子ども向きではありません。未熟な心には刺激的すぎる残虐な画像や、法的に問題のある動画に触れる可能性があり、詐欺や誘拐などの犯罪を巻き込まれるリスクもあります。

実際にスマホをめぐるトラブルには、どんなものがあるのでしょうか。

スマホの長時間利用

とにかく一日中スマホを触っている、夜遅くまでスマホをやめない、家族と話している間もスマホを見たくてそわそわしている……。保護者からはそんな悩み事をよく聞きます。おすすめ動画やコイン制のゲームなど、終わるきっかけがつかみにくいサービスが多いことも原因です。

誘い出し、自画撮り被害

SNSやオンラインゲームで繋がった大人と仲良くなることで、事件に巻き込まれてしまいます。実際に会う約束をして誘拐されてしまった事件や、急に態度を急変させて裸の写真を送るように脅される事件も起きています。

ゲームへの高額課金

ゲームのアイテム欲しさに課金し過ぎてしまい、保護者が知ったときには高額な金額になっているケースがあります。愛知県の消費者生活センターに寄せられた相談では、200万円を超えるケースもあったといいます。

チャットやSNSでのトラブル

テキストでのコミュニケーションは誤解を生みやすいもの。友人と言葉の行き違いでもめてしまうこともあります。また、友人の恥ずかしい姿をグループにさらす(投稿)などして、いじめに発展することもあります。

他にも、「推し(好きな芸能人)のチケットを譲ります」「ジャニーズの秘密情報を販売します」といった個人間取引などもあります。社会的に未熟な子どもが大人と同様に対応できませんよね。子どもがスマホを持つことは、様々なリスクと対峙することになるということなのです。

アナログとデジタルの両輪で見守りを

わが子をスマホのトラブルから守るには、「アナログ」と「デジタル」の両方で見守る必要があると私は考えています。

「デジタル」とは、フィルタリングのことを指しています。2018年2月以降、18歳未満の青少年がスマホや携帯電話の契約・機種変更をする際、格安スマホを含む携帯電話事業者は有害サイトにアクセスできないようにする「フィルタリング」の設定が義務づけられました。しかし、実際にフィルタリングを利用している保護者は38.1%(総務省「我が国における青少年のインターネット利用に係るフィルタリングに関する調査」2021年4月)と、かなり低いのです。

でも、フィルタリングを設定することは、見守りの基本です。有害サイトの閲覧を防ぎ、利用時間やアプリを制限できます。アプリのインストールや課金も親の許可制にすることで、適切に保護できます。

フィルタリングは、キャリアの提供するサービス(「あんしんフィルター」など)、AppleやGoogleが提供する機能やアプリ(ファミリー共有&スクリーンタイム、ファミリーリンク)、セキュリティ企業が提供する有料サービス(「iフィルター」など)があります。

年齢に合わせた制限を設定したい場合はキャリアのサービス、ひとつずつ我が子に合わせて設定したい人はAppleやGoogleの提供する機能を利用するといいでしょう。

とはいえ、なぜフィルタリングで制限する必要があるのかを子どもが納得していなければ、抜け道を探してフィルタリングを破ろうとします。そこで、「アナログ」の見守りも必要となるのです。

アナログの見守りとは、主に「家庭のスマホルール」のことを指します。子どもにスマホを持たせるなら、必ず親子で話し合ってスマホルールを作りましょう。ITへの接し方に関する方針、兄弟関係、習い事などで各ご家庭で事情が異なるため、ひとつずつ考えて決めましょう。ルールを破った際のペナルティも必ず入れます。作成したルールは紙に書いておき、子どものネットリテラシーの成長に合わせて定期的に見直します。実態に合ったルールでなければ、親子ともにルーズな運用になってしまうからです。

スマホルールにはぜひ、「パスコードを勝手に変えない」を入れてほしいと思います。スマホのパスコードを親子で共有することで、子どもの様子がおかしい時にはすぐ確認できるからです。その他、「スマホはリビングで使う」「スマホの利用は22時まで」「知らない人に会いに行かない」「メッセージやコメントの言葉遣いに気を付ける」「個人情報をネットに書かない」「もし破ったらスマホを一週間親に預ける」などの項目を作るといいでしょう。ネットには色々なルールの事例があるので、検討してみてください。

フィルタリングだけでも、スマホルールだけでも、子どもをトラブルから守ることはできません。組み合わせることがもっとも効果的です。前述したスマホの危険性とともに、「あなたを守るためにフィルタリングとルールが必要なんだ」とお子さんに話してあげてください。

そして、保護者も正しいスマホの使い方を普段から見せることが大切です。子どものスマホデビューを機に、家族全体でスマホやネットの使い方を考えてみませんか。

ITジャーナリスト/スマホ安全アドバイザー

メーカー系SIerのSEを経て、フリーランスに。SNSが専門で、コンシューマー向け、ビジネス向けともに取材を重ねており、広い視点での執筆を行っている。ITサービス、スマホアプリについての記事も多く手掛ける。子どもの安全なIT活用をサポートする「スマホ安全アドバイザー」としても活動中。著作は『親が知らない子どものスマホ』(日経BP)、『親子で学ぶスマホとネットを安心に使う本』(技術評論社)など多数。

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