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ロマゴンか、エストラーダか 軽量級ライバル対決の決着戦を米メディア関係者が予想

杉浦大介スポーツライター

 12月3日 アリゾナ州グレンデール

 デザート・ダイアモンド・アリーナ

 WBC世界スーパーフライ級王座決定戦

 2階級制覇王者・WBC世界スーパーフライ級フランチャイズ王者

 ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ/32歳/43-3, 28KOs)

 12回戦

 4階級制覇王者

 ローマン・“チョコラティート”・ゴンサレス(ニカラグア/35歳/51-3, 41KOs)

 軽量級史上最高級のライバル対決が大詰めを迎える。エストラーダとゴンサレスは2012、2021年に2度戦い、1勝1敗。いずれも好ファイトとなったが、エストラーダの手が上がった昨年のリマッチも実際にはゴンサレスが勝っていたと見るファン、関係者が少なくなかった。

 ゴンサレスは今年3月、それまで無敗だったWBC世界フライ級王者フリオ・セサール・マルチネス(メキシコ)を大差で下して好調をキープ。ここでついに迎える宿敵とのラバーマッチでも、明白に決着をつけられるかどうかが注目される。今回も激戦必至のファイトを前に、4人の在米メディア、関係者にこの試合に関する3つの質問をぶつけ、勝負の行方を占ってみた。

 リマッチのハイライト動画

パネリスト

ジェイソン・マロニー(オーストラリア出身のバンタム級世界ランカー。過去にエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)、井上尚弥(大橋)の持つ世界王座に挑戦も、戴冠は叶わず。現在、WBC、WBO1位にランクされ、3度目の挑戦を目指す Twitter : @JasonMoloney1)

ノーム・フラーエンハイム(アリゾナ州在住のスポーツライター。アリゾナ・レパブリック紙、LAタイムズなどで記事、コラムを執筆。エストラーダ対ゴンサレスの第3戦は現地取材する Twitter : @FrauenheimNorm)

ライアン・オハラ(NYFights、FightsNights.comのライター。コロラド州在住。丁寧な取材に裏打ちされた流麗な記事を執筆する Twitter : @OHaraSports)

ハンス・セミストーデ(ニューヨーク在住のボクシング記者。BoxingSceneのライター、FightHypeの通信員を務める Twitter: @themistode)

1. 試合予想は

マロニー : 過去2戦は素晴らしい試合になった。昨年の第2戦も接戦ではあったが、“チョコラティート”が勝っていたと思う。今回も彼が有利であり、より明らかな形でのゴンサレスの勝利を予想する。10、11ラウンドといった終盤のストップ勝ちも可能ではないか。

フラーエンハイム : 接戦が予想され、予想は難しいが、ここではゴンサレスが3-0の判定勝利を飾ると見る。ゴンサレス対エストラーダは、マイケル・カルバハル(アメリカ)対ウンベルト・チキータ・ゴンサレス(メキシコ)以来、最高の軽量級トリロジーだろう。その決着戦がカルバハルが今でも住むフェニックスからほど近いアリーナで行われるのは適切な筋書きに思える。

オハラ : “チョコラティート”の3-0判定勝ち。

セミストーデ : 正式には1勝1敗であっても、内容的には両戦ともに“チョコラティート”が上回っており、本来であれば2勝0敗のはずだった。ゴンサレスは舌戦を好むタイプではないが、負けを増やされたこと、もはやパウンド・フォー・パウンド・ランキングから外れたことに憤っているに違いない。その偉大さが見過ごされていることに我慢がならないゴンサレスが、ここでは116-112、117-111といった明白なスコアでの判定勝利を飾ると見る。

Melina Pizano/Matchroom or Michelle Farsi/Matchroom
Melina Pizano/Matchroom or Michelle Farsi/Matchroom

2. 勝負の鍵を握る要素は

マロニー : “チョコラティート”はとても聡明な選手。ディフェンスに気を配りながら、パンチをまとめることができる。ゴンサレスがより的確なコンビネーションを打ち込み、ダメージを蓄積させられることが決め手になるだろう。

フラーエンハイム : 9月に行った最新試合でのエストラーダは、同国人のアルギ・コルテスに判定勝ちは飾ったものの、万全の出来には見えなかった。その理由は新型コロナウイルスに感染したことか、パンデミック中に試合感覚が空いた影響か。あるいは歴戦のダメージがそろそろ響き始めているのかもしれない。

オハラ : ゴンサレスが手数を増やし、多くのコンビネーションを出せるかどうか。“チョコラティート”が勝ち名乗りを受けるためには、従来通りのボリュームパンチが必要になる。

セミストーデ : 7連勝中ではあっても、直近の2戦でゴンサレス、コルテスに苦戦したエストラーダに勢いは感じられない。そんなメキシカンが宿敵に勝ちたければ、リング中央での打ち合いは避けるべきだ。強いジャブでアウトボクシングを心がけ、右強打を打つ機会を狙うのがいい。一方、依然として“偉大なボクサー”と称されるべき力を保ったゴンサレスは、エストラーダに対してこれまで通りのゲームプランで臨むのが適切だ。ガードを上げ、前に出て、インサイドでは相手のボディを狙うのがベター。そこでタイムリーなパンチを顔面に返せば、より明白な形でライバル関係を締め括れるだろう。

Melina Pizano/Matchroom or Michelle Farsi/Matchroom
Melina Pizano/Matchroom or Michelle Farsi/Matchroom

3. 勝者は今戦の後、群雄割拠のスーパーフライ級で誰と対戦すべきか

マロニー : 元WBA世界スーパーフライ級王者である私の双子の弟、アンドリュー・マロニーにチャンスを得て欲しい。弟以外であれば、“チョコラティート”が勝ち残った場合、ジェシー・“バム”・ロドリゲス(アメリカ)との対戦はぜひ見てみたかった。ロドリゲスのフライ級転向でそのマッチアップも実現が難しいとしても、この階級はいい選手が揃っているので、好カードが模索できるだろう。

フラーエンハイム : ゴンサレスはこれまで多くの歴史を築き上げ、史上最も小柄なパウンド・フォー・パウンドNo.1ボクサーになった。まだ衰えを感じさせていないが、井岡一翔(志成)、ジョシュア・フランコ(アメリカ)、中谷潤人(M.T)、フェルナンド・マルチネス(アルゼンチン)といったより若い王者(元王者)との対戦時にはそれが露呈するかもしれない。ここでエストラーダに勝ったとして、キャリアの現時点で彼らと戦うべきなのかどうか、私にはわからない。

オハラ : 勝者はそのまま引退する可能性も十分あると思う。(自分が勝者と予想する)“チョコラティート”はもうすべてをやり尽くした。

セミストーデ : “バム”・ロドリゲスはフライ級に下げると表明したが、ゴンサレス対ロドリゲスが依然として全階級でもトップ3に入るマッチアップであることに変わりはない。“チョコラティート”が希望すれば、“バム”も拒まないだろう。また、少しクリエイティブに考え、井上尚弥との対戦も面白いかもしれない。そこまでは難しいとしても、ノニト・ドネア(フィリピン)はスーパーフライ級まで下げられると明言している。その偉大なキャリアの最後を飾るメガファイトを実現できるかに注目したい。

写真:西村尚己/アフロスポーツ

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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