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カネロか、ゴロフキンか ”現代最高のライバル”決着戦を米メディア、関係者が分析

杉浦大介スポーツライター
Ed Mulholland/Matchroom

9月17日 ラスベガス T-モバイルアリーナ

世界スーパーミドル級4団体統一戦

WBAスーパー、WBC、IBF、WBO世界スーパーミドル級王者

サウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ/32歳/57-2-2, 39KOs)

12回戦

WBAスーパー、IBF世界ミドル級王者

ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン/40歳/42-1-1, 37KOs)

 現代最高のライバルがついに決着のときを迎える。

 カネロとゴロフキンは2017、2018年に2度戦い、カネロの1勝1分。いずれも大接戦であり、2試合ともゴロフキンが勝っていたと見るファン、関係者も少なからず存在する。

 第2戦から4年の時を経て迎えるラバーマッチ。ゴロフキンが40歳になったこともあり、一般的にカネロ優位の声が多い。ただ、カネロは5月のドミトリー・ビボル(ロシア)戦で久々の敗北を味わい、それが今戦にどう影響するかは未知数だ。一方、長くミドル級で戦い続けたゴロフキンがスーパーミドル級の体重でリングに立つのは初めてであり、増量がどんな形で響いてくるのかも予想が難しい。

 互いへの嫌悪感を隠さない2人の決着戦はどんな戦いになるのか。カネロが若さと現在の力を誇示するか。4月の前戦で村田諒太(帝拳)を下したゴロフキンが力を振り絞るのか。注目のメガファイトを前に、5人の在米メディア、関係者にこの試合に関する3つの質問をぶつけ、勝負の行方を占ってみた。

Ed Mulholland/Matchroom
Ed Mulholland/Matchroom

パネリスト

ジェリー・クーニー(元世界ヘビー級タイトル挑戦者。元祖“ホワイト(白人)ホープ”と称されて1970~80年代に一世を風靡し、ラリー・ホームズ、マイケル・スピンクス(ともにアメリカ)に挑戦した)

ノーム・フラーエンハイム(アリゾナ州在住のスポーツライター。アリゾナ・レパブリック紙、LAタイムズなどで記事、コラムを執筆。カネロ対プラント戦は現地取材する Twitter : @FrauenheimNorm)

ライアン・オハラ(NYFights、FightsNights.comのライター。コロラド州在住。丁寧な取材に裏打ちされた流麗な記事を執筆する Twitter : @OHaraSports)

マーク・エイブラムス(フィラデルフィア在住のボクシング記者、編集人、広報。ボクシングウェブサイト15rounds.comを運営する Twitter : @MAbramsboxing)

ハンス・セミストーデ(ニューヨーク在住のボクシング記者。BoxingSceneのライター、FightHypeの通信員を務める Twitter: @themistode)

1. カネロがゴロフキンに勝つために何をすべきか

クーニー : ボディ打ちがカネロにとっての鍵になる。(ビボルとの)前戦に敗れたカネロは誇りをかけて今回の試合に臨むはず。アウトボクシングとインファイトを上手に融合させることが重要になるだろう。

フラーエンハイム : ボディ打ちを執拗に行うことだ。「カネロがKOする」という声が多いが、そうはならないと思うし、それを狙いすぎるべきではないと思う。

オハラ : カネロはゴロフキンのボディに標的を定める必要がある。

エイブラムス : ビボル戦以前に見せたようにカネロらしく戦えばいい。早い段階でペースを握り、ボディを狙うべきだ。もともとカネロはそれほど多くのパンチを打つタイプではないが、的確さで上回っている。

セミストーデ : 多くの人がカネロはアグレッシブに攻め、KOを狙うべきだと言っているのは知っているが、それは間違った戦い方だ。ビボル戦でもその戦法が奏功しなかったのを忘れてはいけない。カネロはアウトボクシングを心がけ、機会を見て攻め込み、ゴロフキンのボディを繰り返し痛めつけること。また、序盤を制することも重要になる。かつてのゴロフキンは速攻型だったが、加齢とともに身体が温まるまでに時間がかかるようになっている。カネロは賢明にアウトボクシングし、ボディで弱らせ、後半にペースを上げて決着を狙うのがいいだろう。

Ed Mulholland/Matchroom
Ed Mulholland/Matchroom

2. ゴロフキンがカネロに勝つためにやるべきことは

クーニー : ゴロフキンはスキルを駆使して距離を取るか、状況に応じて前に出て、カネロに自由に動くスペースを与えてはならない。ビボルがやったようにカネロを下がらせ、大人しくさせるのが理想の戦い方になる。

フラーエンハイム : 早いラウンドで先制パンチを打ち込み、カネロを警戒させる必要がある。「年齢を重ねたボクサーが最後まで保つのはパワー」という言葉があるが、ゴロフキンも依然として十分なパワーを備えていると示さなければいけない。その後はジャブを継続して使うべきだが、今のゴロフキンがそれをいつまで持続できるかはわからない。

オハラ : 村田戦でのゴロフキンはボディを打たれた後、主武器のはずのジャブの数が減ってしまっていた。今戦ではジャブにフック、アッパーを混ぜて攻め、リング上でカネロを追い詰めたいところだ。

エイブラムス : キャリアの現時点でのゴロフキンは過小評価されているが、実際には拙い試合はセルゲイ・デレビャンチェンコ(ウクライナ)戦のみだ。村田戦の序盤はやや苦しんだが、4回以降は支配的な強さを見せた。また、カネロには歴戦の疲れが出ても不思議はない。ゴロフキンは積極的に攻め、序盤に強打を印象付け、まだ健在であることをアピールすれば面白くなる。エキサイティングな試合になると思う。

セミストーデ : とにかくジャブを突くこと。カネロは素晴らしい選手だが、ジャブへの対処を苦手としている。ゴロフキンは加齢していても、依然として最高級のジャブを持っている。付け加えると、カネロが公言通りにアグレッシブに攻めてくるのであれば、ゴロフキンはボディ打ちで迎え撃つのがいいだろう。

3. 試合予想は

クーニー : 判定か終盤のストップでカネロが勝つ。カネロはもうゴロフキンの力を見切っている。過去2戦は接戦だったが、今のカネロはずっと力をつけているのに加え、ゴロフキンはまだミドル級の身体だ。最近のゴロフキンはプレッシャーをかけるというより、ただ相手を追い回すような戦い方になっているのも気にかかる。カネロにとってそれほど難しい戦いにはならないだろう。

フラーエンハイム : カネロの3-0判定勝ちだ。ゴロフキンがMLBのアルバート・プーホルス(セントルイス・カージナルス)のように力を取り戻し、より若い相手に健在ぶりを見せつけても驚きはしない。また、カネロの膝の状態が思わしくなく、今戦に向けて1週間に3度しかロードワークができなかったといった気になる情報も耳に入っている。最高のコンディションなければ、ビボル戦のように終盤にスタミナを失うかもしれない。ただ、13ヶ月前、42歳になったマニー・パッキャオ(フィリピン)が敗れた姿を忘れるべきではない。あの日、パッキャオを破ったのはヨルデニス・ウガス(キューバ)ではなく年齢だった。明日もゴロフキンの身に似たようなことが起こるのではないかと予想している。

オハラ : このライバル対決シリーズは様々な意味でゴロフキンの思い通りにはなってこなかった。ただ、ここでついにゴロフキンが2-1の判定勝ちを手にすると見る。

エイブラムス : 好試合の末、カネロの判定勝ち。またも7-5くらいの接戦になり、最終的にカネロが過去2戦ほど論議を呼ばない形の判定勝利を収めると考えている。

セミストーデ : カネロの判定勝ち。それぞれの全盛期の力を比較すれば、GGGの方が優れたボクサーだっただろう。ただ40歳になった今では、ゴロフキンには確実に衰えが見える。カネロがゴロフキンをKOするという話は馬鹿げている。鋼鉄のアゴを持つゴロフキンにダウン経験はなく、深刻なダメージを受けたことすらないのだから。そんなゴロフキンがKOされることはないとしても、カネロ相手に正式な勝利を手にすることがないままキャリアを終えることになると見る。

Ed Mulholland/Matchroom
Ed Mulholland/Matchroom

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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