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最強カネロ相手に番狂わせを起こすには? Sミドル級統一戦を現地メディアが予想

杉浦大介スポーツライター
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

11月6日 ラスベガス MGMグランドガーデン・アリーナ

世界スーパーミドル級4団体王座統一戦

WBC、WBAスーパー、WBO王者

サウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ/31歳/56勝(38KO)1敗2分)

12回戦

IBF王者

ケイレブ・プラント(アメリカ/29歳/21戦全勝(12KO))

 世界スーパーミドル級の歴史に刻まれる1戦が間近に迫っている。現地時間6日の夜、同階級史上初めて4団体統一王者が生まれるのだ。近年は強豪を連破し、パウンド・フォー・パウンド最強とみなされるようになったカネロがここでも絶対的な強さを誇示するのか。“カネロを苦しめるスタイルを持っている”と称される白人スピードスター、プラントが番狂わせを起こすのか。楽しみな一戦はアメリカでもShowtimeでPPV中継される。

 この試合を在米メディア、関係者はどう見ているのか。今回、カネロ対プラント戦をラスベガスに集まった5人のエキスパートに3つの質問をぶつけ、ビッグファイトの行方を占ってみた。

パネリスト

ジョシュ・テイラー(WBAスーパー、WBC、IBF、WBO世界スーパーライト級王者。プロでの戦績は18戦全勝13KO Twitter : @JoshTaylorBoxer)

キース・アイデック(BoxingScene.comのシニアライター、コラムニスト Twitter : @Idecboxing)

ノーム・フラーエンハイム(アリゾナ州在住のスポーツライター。アリゾナ・レパブリック紙、LAタイムズなどで記事、コラムを執筆 Twitter : @FrauenheimNorm)

ライアン・オハラ(リングマガジンのライター。コロラド州在住。丁寧な取材に裏打ちされた流麗な記事を執筆する Twitter : @OHaraSports)

ショーン・ジッテル(FightHype.comのレポーター。ラスベガス在住。全米を飛び回って取材し、著名選手からも信頼を得る Twitter : @Sean_Zittel)

1.カネロが勝つためにやるべきことは

テイラー : カネロはいつも通りの戦法を貫くべきだ。開始ゴング直後からプレッシャーをかけ、賢明に攻めていくのがカネロの戦い方。プラントが相手では序盤は少しポイントを奪われるかもしれないが、辛抱強くあり続けなければならない。焦らずに攻めれば、中盤以降にペースを掴む可能性は高くなる。

アイデック : カネロは少し時間をかけて相手の力量を見定める傾向があるが、今回の試合では普段よりもその作業を早くやる必要がある。プラントが序盤のラウンドを奪い、ポイント上でリードすることは考えられる。それを妨げるために、よりアグレッシブに攻めるべき。それさえ成し遂げれば、ややスタミナに難のあるプラントをボディから崩していけるはずだ。

フラーエンハイム : カネロはカネロらしく戦えば良い。シンプルに聴こえるかもしれないが、やるべきことはシンプルなことだ。最近のカネロは、序盤に相手を学習し、中盤までに弱点を見つけ、後半にそこにつけ込んで突き放すというパターンを確立している。ビリー・ジョー・サンダース(イギリス)戦でもそうやって戦い、プラント戦でも同じことをやるだろう。

オハラ : カネロはコンスタントにプレッシャーをかけ、ボディを攻めるべきだ。つまり、普段通りに戦えば自ずと活路は見えてくる。最初の数ラウンドは取られるかもしれないが、ボディ打ちが奏功すれば流れは変わる。

ジッテル : 自身のパワーに依存しすぎてはならない。ファイトウィーク中にはKOすると話し続けていたが、プラントが彼のパンチに耐え続けるというサプライズを起こしたときのために、ラウンドを奪っておくことも留意しておくべきだ。ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)との第2戦のように、スキルを生かしつつ、前がかりに攻め抜くのが得策。最近の彼はジャーボンテ・デービス(アメリカ)のように相手を蹴散らしてきたが、今回は近年で最もスピードのある選手との対戦なのだから、フェイントを使い、しっかりとプレッシャーをかけ、ボディを攻めて相手をスローダウンさせる必要がある。プラントの足をスローダウンさせられれば、後半のKO勝ちにつなげられるだろう。

両雄は激しいトラッシュトークを続けてきた Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
両雄は激しいトラッシュトークを続けてきた Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

2. プラントが勝つためにやるべきことは

テイラー : アウトボクシングに徹するのがプラントの勝ちパターン。特に前半はフットワークを使い、動きを止めず、ジャブをつき続けるのが勝利への絶対条件になる。パンチを打つ際、アングルを変えることも忘れてはいけない。打ち合いに巻き込まれてしまった場合には、プラントは一気に不利になる。

アイデック : プラントが勝つためには様々な意味でパーフェクトな戦いが必要だ。プラントには良質なジャブ、ボクシングIQがあり、自信に満ちている。それらを生かしてカネロのリズムを崩すことができれば、オッズが指し示すよりもはるかに興味深い試合になる可能性はある。ただ、そのためにはまず早い段階でカネロのリスペクトを得なければならず、プラントにそれだけのパワーがあるかはわからない。プラントのカネロ攻略は簡単なことではない。私は厳しいと思っている。

フラーエンハイム : プラントは良いフットワーク、ハンドスピードなど、多くの長所を持っている。ただ、相手に決定的なダメージを与えるパワーには欠けており、特に右パンチはそれが顕著だ。その点が災いし、カネロを突き放し切るのは難しいだろう。

オハラ : プラントは後ろがかりで距離を取り、ジャブを使ってカネロを遠ざけようとするだろう。コンビネーションパンチはカラム・スミス(イギリス)、サンダースより上なだけに、良い試合はできるとは思う。ただ、カネロに警戒を促すだけのパンチ力に欠けているのが厳しい。

ジッテル : プラントは素晴らしいジャブを持っており、そのパンチこそが今戦の鍵になる。ジャブを上下に散らし、上質なコンビネーションにつなげていくべき。右パンチは左に比べると劣るが、コンビネーションパンチの最後を左で締めくくるのもいい。カネロを運動量で上回り、序盤からポイントを稼いでおくことは絶対必須だ。後半はカネロが追い上げてくるだろうが、その猛攻を耐え抜き、前半のリードを守り切っての判定勝ちに持ち込みたいところ。プラントの技術レベルの高さを考えれば、逃げ切り勝利があり得ないとは思わない。

プロ意識の高いプラントも最高のコンディションを作ってくることは間違いない Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
プロ意識の高いプラントも最高のコンディションを作ってくることは間違いない Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

3. 試合予想は

テイラー : 非常に興味深いスタイルのぶつかり合いであり、カネロにとって厄介な戦いになる可能性を秘めている。やはりカネロの判定勝ちが有力だとは思うし、予想を聞かれたらそう答える。ただ、容易な戦いになるとは思えず、私はプラントが判定を握ってもそれほど驚かない。プラントはカネロが苦手とするスタイルを持っているからだ。

アイデック : カネロの8〜10ラウンドTKO勝ち。

フラーエンハイム : カネロが10ラウンドにストップ勝ちを収める。

オハラ : カネロが115-113の採点で判定勝ち。

ジッテル : 今のカネロはフロイド・メイウェザー(アメリカ)の全盛期を彷彿とさせるような自信に満ちている。どんなスタイルで挑んで来ても見極められるという手応えがあるのだろう。実際に今戦でもプラントを見極め、後半のストップ勝ちに持ち込むと見る。スーパーウェルター級、ミドル級時代のカネロはパンチャーとは言えなかったが、スーパーミドル級でのパワーは特筆されてしかるべき。最近はリング上で向かい合った対戦相手がカネロのパワーを恐れているように見える。プラントはサンダースよりも善戦し、序盤はラウンドを奪うかもしれないが、カネロがどこかで距離を掴み、ディフェンス、タイミングの良さを再び誇示するのではないか。プラントが判定まで持ち込んでも驚かないが、ここではカネロの終盤のストップ勝ちを推したい。付け加えておくと、プラント戦の後はデビッド・ベナビデス(アメリカ)戦が見たい。

男子史上6人目の主要4団体統一王者ジョシュ・テイラーはプラントの技巧を評価し、波乱の可能性を指摘する 撮影・杉浦大介
男子史上6人目の主要4団体統一王者ジョシュ・テイラーはプラントの技巧を評価し、波乱の可能性を指摘する 撮影・杉浦大介

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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