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フューリーが支配か、ワイルダーが雪辱か 注目の世界ヘビー級戦を現地関係者が予想

杉浦大介スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

10月9日 ラスベガス T-モバイルアリーナ

WBC世界ヘビー級タイトル戦

王者

タイソン・フューリー(イギリス/33歳/30勝(21KO)1分)

12回戦

前王者

デオンテイ・ワイルダー(アメリカ/35歳/42勝(41KO)1敗1分)

 世界ヘビー級戦線にとって重要な意味を持つラバーマッチのゴングが目前に迫っている。過去2戦はフューリーの1勝1分。サイズ、スピード、スキルをすべて備え、”階級最強”と評価されるフューリーはワイルダーを返り討ちにするのか。マリク・スコットを新トレーナーに据えて今戦にかけるワイルダーは雪辱できるのか。楽しみな一戦はアメリカでもESPN+でPPV中継される。

 この試合を在米メディア、関係者はどう見ているのか。今回、4人のエキスパートに3つの質問をぶつけ、ビッグファイトの行方を占ってみた。

パネリスト

ジャメル・ヘリング(WBO世界スーパーフェザー級王者。現役王者ながら非常に聡明で、6月の井上尚弥対マイケル・ダスマリナス戦ではESPNの解説も務めた Twitter : @JamelHerring)

ブライアン・マッキンタイア(ネブラスカ州オマハに本拠地を置くトレーナー。テレンス・クロフォードのトレーナー兼マネージャー。通称ボーマック(Bomac) Twitter : @BomacBrian)

ライアン・オハラ(リングマガジンのライター。コロラド州在住。丁寧な取材に裏打ちされた流麗な記事を執筆する Twitter : @OHaraSports)

ショーン・ジッテル(FightHype.comのレポーター。ラスベガス在住。全米を飛び回って取材し、著名選手からも信頼を得る Twitter : @Sean_Zittel)

1.フューリーが勝つためにやるべきことは

ヘリング : 過去2戦と同じように、ビューティフルなアウトボクシングをすべきだ。ワイルダーは危険な選手であり、今戦に向けて決意を固めている。右に一発強打を秘めていて、そのパワーを終盤ラウンドまで保つことができる。そんなワイルダーに対して、フューリーはフルラウンドにわたって賢明なボクシングをやり切らなければいけない。

マッキンタイア : これまでやってきたことを大きく変える必要はない。過去2戦と同じようなボクシングをすれば結果はついてくる。

オハラ : シンプルにフューリーの方がワイルダーよりも優れたボクサーだ。この試合が1年前に行われ、前回と同じように戦いさえすれば、問題なくフューリーが勝っていたと思う。

ジッテル : 前回と大きく違う戦い方をする必要はない。第2戦での戦術は完璧に機能し、第1戦では下がりながらのアウトボクシングでもワイルダーを空転させられることを示していた。今戦では状況に応じて足を使い、必要に応じて前に出るといったように、第1、2戦のファイトプランをうまく融合すればさらに良い戦いができるかもしれない。

2人の間には激しい敵対心が存在し、ファイトウィーク中も一触即発の雰囲気だった Mikey Williams/Top Rank
2人の間には激しい敵対心が存在し、ファイトウィーク中も一触即発の雰囲気だった Mikey Williams/Top Rank

2. ワイルダーが勝つためにやるべきことは

ヘリング : パンチを当てるための組み立てを上手にやることだ。ただ単調に一発を狙ってもなかなか当たらない。必要に応じてアウトボクシングを試みるのも良いのではないか。

マッキンタイア : 右ストレートをヒットするまでの工夫が大切になる。第1戦でやったように、場合によっては距離を取るのもいいだろう。右の威力がフルに発揮される距離でパンチを当てられるかどうかが鍵だ。

オハラ : 新トレーナーのマリック・スコットの下で、ワイルダーは新たな要素を持ち込むべくトレーニングを続けてきた。今回はこれまでと違うワイルダーが見れるだろう。具体的には、より集中し、一発のパンチを当てるためにどうやって距離を測るかが重要になる。

ジッテル : まずはボディを狙っていく必要がある。特にフューリーが第2戦のように打ち合いを挑んできた場合、インサイドからボディを打っておくべきだ。その上でフューリーを下がらせ、得意の右ストレートが最大限の効果を発揮する距離で戦えればチャンスが出てくる。右を有効に決めるために、解説のアンドレ・ウォードが話していた通り、トラップを仕掛けるのも良い。例えばフロイド・メイウェザーと戦った際のシェーン・モズリーがジャブをボディに打ってから右ストレートを叩き込んだように、まずはボディにパンチを散らし、フューリーの目線を下げさせるのも良い。あるいはスコット・トレーナーが指導している通り、左フックを撒き餌にするか。最大の武器である右をヒットするための工夫ができれば、試合は面白くなるかもしれない。

現役世界王者のヘリングもフューリーの勝利を予想するが、KO決着はないと見ている 撮影・杉浦大介
現役世界王者のヘリングもフューリーの勝利を予想するが、KO決着はないと見ている 撮影・杉浦大介

3. 試合予想は

ヘリング : フューリーがフルラウンドにわたってアウトボクシングし、判定勝ちを収めるだろう。ワイルダーも仕上げてきているから、KO決着はないはずだ。ただ、フューリーが適切な戦い方をしなかった場合、序盤ラウンドにワイルダーにもチャンスが出てくる。

マッキンタイア : 予想は難しい。私のハートに従ってワイルダーと言いたいところだが、一般的な予想はフューリーに傾いている。ここでは結論を出すのはやめておきたい。

オハラ : ワイルダーの8回KO勝ち。

ジッテル : この試合の予想は非常に難しい。確かに前戦でのフューリーは支配的な勝ち方をしたが、キャリアが左右される一戦だった第2戦と比べ、今戦ではそこまで集中できているかはわからない。一方、ワイルダーにとって極めて重要な戦いだ。フューリーが18カ月前と同じ状態だったら優位だが、そうでなかった場合、前回より向上しているであろうワイルダーに勝機が生まれる。ただ、ここではやはりフューリーの勝利を予想しておきたい。序盤のワイルダーは危険であり、リマッチよりは接った試合になるが、最終的にはフューリーが主導権を握り、中盤から後半にかけてストップ勝ちを飾ると思う。

クロフォード、ジャメル・ヘリングらのトレーナーを務めるBomacことマッキンタイア・トレーナーも今戦の予想は難しいと述べる 撮影・杉浦大介
クロフォード、ジャメル・ヘリングらのトレーナーを務めるBomacことマッキンタイア・トレーナーも今戦の予想は難しいと述べる 撮影・杉浦大介

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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