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20戦全勝で世界王座に就いた新星 IBF世界スーパーウェルター級王者ジャレット・ハード インタヴュー

杉浦大介スポーツライター
Photo By Ed Diller/DiBella Entertainment

IBF世界スーパーウェルター級王者

ジャレット・ハード

メリーランド州出身 27歳

20戦全勝(14KO)

身長185cm リーチ193cm

 オーソドックスのボクサーファイター。アル・ヘイモン傘下。15戦目以降は連続KO勝利で評価を高め、今年2月にジャーモル・チャーロ(アメリカ)が返上したIBF世界スーパーウェルター級の王座決定戦に出場した。初のタイトル戦ではトニー・ハリソン(アメリカ)に9回2分24秒TKO勝ちを飾り、無敗のまま王座を獲得。10月14日にブルックリンのバークレイズセンターで元WBA同級王者オースティン・トラウト(アメリカ)との初防衛戦を控えている。

*インタヴューは9月6日の記者会見時に収録

パワー、スキルの両方を見て欲しい

ーー10月14日の防衛戦ではブルックリンのファンに何を見せたいですか?

JH:初防衛戦を好内容で勝ち、自分がこの階級で屈指のファイターだという評価を確固たるものにしたいと考えてみます。僕は世界タイトルを取り、すぐに失ってしまうようなボクサーではない。スーパーウェルター級ではトップクラスであり、長く名前を轟かせていく選手だと認められたいですね。

ーー対戦相手のトラウトの印象は? 

JH:良い選手ですね。すでに3敗してますが、すべて優れた選手に喫したもの。チャーロ、エリスランディ・ララ(キューバ)、サウル・”カネロ”・アルバレス(メキシコ)には敗れていますが、カネロには勝っていたという声もあるくらい。KO負けもないし、大舞台の経験も豊富です。そんなベテランに対し、僕がKOで勝てればインパクトは大きいはずです。

ーーデヴュー直後の注目度は高いと言えなかったですが、無敗のまま世界タイトルに到達したここまでの自身のキャリアをどう振り返りますか?

JH:僕はアマチュアのキャリアも30戦ほどで、注目されてきたわけではないし、ここまで辿り着けると思った人はほとんどいないでしょう。デヴュー直後の自分に”今の位置にまで来れるか”と尋ねたら、”ノー”と答えていたはずです。しかし、途中で自身のポテンシャルに気づき、以降はより真剣に取り組んできました。そして、ここまで辿り着いた。自分のキャリアには誇りを持っていますよ。 

ーー総合力の高さに評価は高まっていますが、自身の売り物は? 

JH:テレビ中継されたファイトでKO勝ちできたおかげで、パワーパンチャーとして認識されているように思います。しかし、僕にはスキルもあるんですよ。(2015年11月の)フランク・ガラザ(アメリカ)戦のストップ勝ちなどを見てもらえれば分かる通り、カウンターパンチだって打てます。技術の高さで知られるトラウトとのファイトでは、僕のスキルも見てもらえるんじゃないかと思っています。

ーー出身地のメリーランド州アコキークは必ずしも大都会とは言えない町ですが、タイトル獲得後、地元の人々のリアクションはどうですか? 

JH:自身の知名度が高まっているのを感じます。10月の防衛戦にも地元から多くの人たちが応援に来てくれるはずです。僕の弟もボクサーで、弟もアンダーカードに出場することになりそうなんです。それもあって、僕たちのファンがアリーナで良い雰囲気を作ってくれるでしょう。今から待ちきれません。

近い将来に一人暮らしを開始?

ーーレイモン、アンソニーのピーターソン兄弟(アメリカ)、ゲイリー・ラッセル・ジュニア(アメリカ)などを先頭に、最近ではワシントンDC・メトロポリタン・エリアから多くの優れたボクサーが出てくるようになりました。地元を代表して戦っているという思いはありますか? 

JH:もちろんあります。地元を代表するアスリートとして、故郷の人々の思いを感じるし、期待を背負っているつもりです。計量失敗で世界タイトルを失ってしまいましたが、ジャーボンタ・デービス(アメリカ)の活躍でも地元は活気付きました。僕もラッセル、デービスらに続き、人々を喜ばせていきたいと思います。 

ーートップファイターとして期待され始めた後も、実家で両親と一緒に暮らしているという記事も読みました。世界タイトル獲得後も、まだ実家に住んでいるんですか?

JH:その通りです。独立するお金がないわけではないですよ(笑)。慌てて一人で暮らそうとするのではなく、慎重に考えなさいと母親からもアドバイスを受けたんです。今は将来のためにお金を節約していくつもり。ただ、今回の初防衛戦後、一人で暮らす部屋を探そうかなとは思っています(笑)

ーー今回の興行にはスーパーウェルター級のトップファイターたちが多数登場していますが、8月26日にはWBOの王座決定戦としてミゲール・コット(プエルトリコ)が亀海喜寛(帝拳)と対戦しました。コット対亀海戦はどう見ましたか? 

JH:コットは依然としてハイレベルの力を保ってますね。亀海は正面から攻めてきて、その場に止まっているので、コットにとってやり易い選手という印象も受けました。コットはやるべきことをやり、順当な勝利を手にしたという感想です。

ーー今後、勝ち進めば対立王者との統一戦も視界に入ってくると思いますが、ボクサーとしての最終的な目標は? 

JH:ボクシングの歴史に名前を刻むような選手になりたいです。フロイド・メイウェザー、トミー・ハーンズ、シュガー・レイ・レナード(すべてアメリカ)であるとか、過去の名選手たちに比較されるのではなく、”ジャレット・ハードのレガシー”を確立したい。のちにファンが僕のキャリアを振り返ったとき、”ハードは自身のやり方で戦い続けた”と記憶されるようになりたいですね。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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