Yahoo!ニュース

サーマン、スペンス、ポーター、ベルトがブルックリンに集結 近未来に世界ウェルター級統一王者誕生なるか

杉浦大介スポーツライター
Photo By Amanda Westcott/SHOWTIME

4月22日 ブルックリン バークレイズセンター

WBC世界ウェルター級挑戦者決定戦 12回戦

ショーン・ポーター(アメリカ/29歳/27戦(17KO)2敗1分)

9ラウンドTKO

アンドレ・ベルト(アメリカ/33歳/31戦(24KO)5敗)

ポーターが消耗戦を制す

フィジカルで、アグリー(不細工)で、それでいてエキサイティングーーー。22日にブルックリンで行われたポーター対ベルトのサバイバル戦は、戦前の予想通りの内容になった。最後は馬力とタフネスで勝るポーターが勝ち残るところまで想定の範囲内と言って良かっただろう。

後がない強豪同士の激突は、第2ラウンドにダウンを奪ったポーターが終始優勢。最後は9ラウンドに連打でストップに持ち込み、これでWBC王者キース・サーマン(アメリカ)への指名挑戦権を手にした。

「ポーターは現役屈指のウェルター級ファイターだ。そして僕もそれは同じ。去年の僕たちは対戦は凄い試合になったのだから、今年中に再戦したらまた良いファイトになるだろう」

リングサイドでこの試合を見守ったWBAスーパー、WBC王者サーマンはそう語り、ポーターが自身の価値を再証明したことを認めていた。

2015年3月からスタートしたアル・ヘイモンの“プレミア・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)”の中でも、ポーターは比較的軽視されてきた感がある。2015年6月のエイドリアン・ブローナー(アメリカ)戦、昨年6月のサーマン戦もいわゆる“Bサイド”扱いだった。しかし、そんな中でも力を誇示し、過去5戦3勝2敗ながら、マーケットバリュー自体は引き上げてみせた。

今回のベルト戦でもファイトマネーは100万ドルという好条件(ベルトにはさらに高額の120万ドルを与えたのはなぜかこの選手を優遇し続けたヘイモンらしいが)。相手を選ばずに戦い続けたポーターの足跡は、無敗レコードを守ることに熱心な近年の風潮へのアンチテーゼにも思えてくる。

強豪ファイターの潰し合いが始まる

ポーター対ベルト戦が行われたバークレイズセンターには、サーマンだけでなく、同階級、いや米ボクシング界最大の期待の星であるエロール・スペンス・ジュニア(アメリカ)も姿を見せていた。

このスペンスは5月26日にIBF世界ウェルター級王者ケル・ブルック(イギリス)に挑戦予定。50/50のマッチアップと見られるタイトル戦をスペンスが勝ち抜けば、アメリカ国内の楽しみはさらに大きくなる。

サーマン、ポーターだけでなく、層の厚いウェルター級選手たちはライバルたちとの直接対決に意欲を見せている。そして、スペンスに関しては、複数階級制覇に価値を見出す選手が多い中で、同級の統一王者になりたいという希望まで語っているのが興味深いところだ。

「目標はウェルター級の統一王者になり、真のNo.1になること。今はこの階級で戦いたい。最も層の厚い階級だし、優れたタレントがウェルター級に揃っている。フロイド(・メイウェザー(アメリカ))が引退し、No.1と呼べる選手はいない。自分がそれになれると感じているよ」

そう述べるスペンスがIBF王者になれば、実際にWBA、WBCのタイトルを持つサーマンとの統一戦の機運が高まってくるに違いない。

同じヘイモン傘下で、Showtime(と親会社のCBS)が投資を続けてきた選手同士。マッチメークは難しくないはずである。順調に運べば今年末にも、2005年にWBA、WBC、IBF王座を保持したザブ・ジュダー(アメリカ)以来のウェルター級3団体統一王者が誕生する可能性もある。それが叶ったときには、これは容易ではないが、トップランク傘下で別路線を行くWBO世界王者マニー・パッキャオ(フィリピン)との最終決戦の実現にまで希望を抱きたくなる。

もちろんボクシングのビジネスはそうスムーズには運ばないもの。サーマン対スペンス、ブルックの前に、まずは違うファイトが挟まることになるのだろう。サーマンは前述した通りにポーターとの再戦、あるいはWBA正規王座を持つラモン・ピーターソン(アメリカ)との指名戦に臨むのではないか。現実的に言って、3団体統一戦が開催されるのは来年の春あたりになりそうだ。

いずれにしても、PBC傘下でしばらく凡庸なマッチメークが多かった後で、階級トップにいる選手たちが潰し合いへの意欲を公に語っているのは良い兆候である。

アミア・カーン(イギリス)、ブローナーといった無冠の人気選手まで含め、ウェルター級のビッグファイトシリーズ本格化か。サーマン、スペンス、ポーター、ベルトが一堂に会した4月22日の興行の雰囲気は、少なくとも今後に大きな期待感を抱かせるのに十分ではあった。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

杉浦大介の最近の記事