Yahoo!ニュース

渡部建に残された道はYouTubeのみ!? スキャンダル芸人でも儲けられるYouTubeの皮肉な事情

谷田彰吾放送作家
渡部さんの今後の芸能活動はどうなるのか。(写真:REX/アフロ)

 まるで地獄絵図……そんな言葉がふさわしい100分間。

 アンジャッシュ・渡部建さんの謝罪会見。『行列のできる法律相談所』や『アメトーーク』で見せてきた明快な受け答えは影を潜め、記者の質問に言葉を詰まらせる場面を連発。「多目的トイレ不倫」発覚後、すぐに謝罪会見を開かなかったことで激しいバッシングにあったわけですが、開いたら開いたでその煮え切らない態度に世間が総攻撃。今後しばらくは地上波テレビへの出演は難しいと言わざるをえません。

 では、渡部さんは芸人として終わったのか?

 それはまだわかりません。なぜなら今はYouTubeがあります。テレビはオファーがなければ出られませんが、YouTubeは自主制作。誰かに止められるものでもありません。

 スキャンダルからYouTubeで復活した典型例が、雨上がり決死隊の宮迫博之さん。反社会的勢力との闇営業問題でテレビから事実上の追放状態になりましたが、騒動の数ヶ月後にはYouTubeをスタート。当初は低評価の嵐でしたが、炎上と話題性は紙一重。まずは注目されることが必要不可欠なYouTubeにおいて、スキャンダル芸能人はある意味有利でもあります。宮迫さんはそこからコツコツ地道に動画を投稿し続け、今ではチャンネル登録者数100万人を超えました。本人は動画内で「お金ない(笑)」と言っていましたが、毎月高級スポーツカーが買えるぐらいの売上があってもおかしくありません。

 今やテレビに出られなくても稼げる時代です。スキャンダルでCMが御破算になっても、YouTubeで結果を残せばスポンサーだって付きます。むしろテレビに出られない方が「YouTubeでしか見られない人」となり、ちょっとした希少価値が生まれて再生数が上がる傾向があります。実際、登録者数100万人を超えている芸人さんのほとんどがテレビの露出が極端に少ない人たちです。

 さらに、YouTubeでは時に「スキャンダルを起こした方が儲かる」という逆説的な現象が起きます。好奇心で検索する人が急増するからです。今年話題になった迷惑系YouTuberもこの原理。渡部さんはスキャンダル前からYouTubeチャンネルを作って活動していたのですが、再生数はアベレージ数万回程度でした。しかし、スキャンダル後に再生数がグンと増え、活動休止前最後に投稿した動画『男性の皆さん!今一番女性に喜ばれる差し入れはこれだ!【フルーツサンド】』は、テーマが女性だけあって現在123万回再生。実は、この動画には今も広告が付けられており、再生されるごとに収入が入ります。なんとも皮肉な話です。

 となると、芸能界における「規律」をどう保てば良いのでしょうか? 悪いことをすれば罰が与えられる。それがこれまではテレビという職場の剥奪でした。しかし、同じ映像メディアで「芸」をして収入を得られるということになると話は変わってきます。

 以前、私が仕事でご一緒したある売れっ子芸人さんは、こう苦言を呈されていました。

「YouTubeがスキャンダル芸能人の逃げ場になるのは違う。それは真面目にYouTubeをやってる人に失礼だ」

 その方は賞レースで結果を残した実力派だけに、最近のYouTube事情に思うところがあるのでしょう。たしかに、スキャンダルを起こしても儲かってしまうという構造は気持ちの良いものではありません。もちろん、スキャンダル芸能人が誰でもYouTubeで通用するわけではないですし、宮迫さんのように復活するためには尋常じゃない努力が必要です。なによりスキャンダルの内容にもよるでしょう。宮迫さんと渡部さんでは大きな違いがあり、渡部さんが成功できるとは限りません。しかし、「テレビで干されてもYouTubeがある」というのは、まぎれもない現実なのです。

 私は放送作家として駆け出しの頃に渡部さんとネットのレギュラー番組でご一緒させていただきました。当時の渡部さんはまだ売り出し中の時期で、私が台本に書いた乱暴なむちゃぶりギャグを文句一つ言わずにやってくれたのを覚えています。テレビ復帰が絶望的と言われている渡部さんが、今後YouTubeをベースに活動するかどうかはわかりませんが、現状は自身のチャンネルで復帰する以外に道はないようにも見えます。どうあれ、スキャンダルの内容からも茨の道が待っているのは間違いないでしょう。

放送作家

テレビ番組の企画構成を経てYouTubeチャンネルのプロデュースを行う放送作家。現在はメタバース、DAO、NFT、AIなど先端テクノロジーを取り入れたコンテンツ制作も行っている。共著:『YouTube作家的思考』(扶桑社新書)

谷田彰吾の最近の記事