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日本代表と対戦するエクアドル代表。要所に揃う注目すべき若手は

下薗昌記記者/通訳者/ブラジルサッカー専門家
激戦区の南米予選を3位で通過した力は侮れない(写真:ロイター/アフロ)

 キリンチャレンジカップで9月27日に日本代表と対戦するエクアドル代表。2019年のコパ・アメリカではグループステージで日本と引き分け(1対1)、グループ最下位に終わった当時と異なり、エクアドルは指揮官交代を経て、生まれ変わった。激戦区の南米予選を4位で突破。世代交代にも成功したエクアドルは若い力を押し出して日本の前に立ちはだかって来る。

世代交代に成功し、激戦区の南米予選を3位で通過

 かつては南米のアウトサイダーだったエクアドルだが、2002年のワールドカップ日韓大会に初出場を果たして以来、2006年のドイツ大会、2014年のブラジル大会に出場。4年前のロシア大会こそ出場を逃したものの、カタール大会には南米予選を3位で突破し、8年ぶりに世界の檜舞台に帰ってきた。

 コロンビアやチリなどの強豪が世代交代に失敗し、予選敗退。南米予選は狭き門ではあるが、エクアドルは標高2850mにあるホーム、キトでは高地の利を生かして4勝2分1敗。2019年のコパ・アメリカを戦った当時は、危機的な状況にあったエクアドルだったが、2020年8月に就任したアルゼンチン人指揮官のグスタボ・アルファロ監督が代表でプレーすることへのモチベーションを高めさせ、世代交代にも着手。単なる高地の利に頼るチームではない地力をつけさせてきた。

 世代交代が成功したことを雄弁に語るデータがある。南米予選を戦った10カ国のうち、エクアドルの平均年齢は最も若い26歳10カ月。2019年のU-20南米選手権では見事に優勝を飾り、2019年のU-20ワールドカップでは3位に食い込んでいるエクアドルの黄金世代が、南米予選でも光を放ってきた。

近年、南米では育成年代でもエクアドルは存在感を発揮中

 育成年代においても、エクアドルはもはや南米サッカー界でも侮れない存在である。

 南米のクラブシーンで最高峰の大会はコパ・リベルタドーレスであるが、U-20年代を対象にしたU-20コパ・リベルタドーレスで、近年エクアドルの強豪に成長したインデペンディエンテ・デル・バジェ(以下デル・バジェ)は2018年に準優勝、2020年に初優勝、2022年も準優勝。コロナ禍のため、毎年開催されていないものの直近の3大会は全て決勝に進んでいる。

 U-12、U-14、U-16、U-18、U-20のカテゴリーに分けられたエクアドルの育成年代でデル・バジェは20歳以上で出場機会がない選手をデル・バジェのBチームに登録し、エクアドル国内リーグの2部に参加させるなど、計画的に選手を育てている。

 9月24日に行われたサウジアラビアとのテストマッチをベストメンバーで戦ったエクアドルは0対0のスコアレスドローに終わっているものの、サウジアラビアを圧倒。GKムハンマド・アル=オワイスが再三、ビッグセーブを見せたが、エクアドルが大量得点で勝利していてもおかしくない試合展開だった。

日本戦の予想メンバーは下記の通り。

4-3-3

                 エストラーダ

 イバーラ(orバレンシア)                プラタ

         カイセド      シフエンテス

              グエルソ(orメンデス)

エストゥピニャン   インカピエ    ポロソ     カスティージョ

                ドミンゲス

 エースのエネル・バレンシアは32歳という年齢を考えれば、ベンチスタートの可能性もありそうだが、エストラーダは南米予選でチーム最多の6得点。加えて、要所に若き才能が揃っている。

 最終ラインのピエロ・インカピエはU-20でコパ・リベルタドーレスを制したデル・バジェの主力の1人で、バイエル・レバークーゼンに所属。20歳にして最終ラインを託される逸材だ。

 インカピエとともにコパ・リベルタドーレスで優勝したモイセス・カイセドも20歳で中盤に君臨する攻守の軸。南米予選ではチーム最多の4アシストも記録している。

 前線では21歳のゴンサロ・プラタに注目だ。2018年にデル・バジェでU-20コパ・リベルタドーレス準優勝。2019年の南米選手権優勝メンバーで、U-20ワールドカップでは3得点。ブロンズボールを得ている。アルファロ監督からの信頼も高く、南米予選では16試合に出場し3得点、3アシスト。日本戦は右ウイングでの出場が濃厚だ。

 最新のFIFAランキングで日本は24位だが、エクアドルは44位。過去の対戦成績を見ても日本が2勝1分で負け知らずとなっている。

記者/通訳者/ブラジルサッカー専門家

1971年、大阪市生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)でポルトガル語を学ぶ。朝日新聞記者を経て、2002年にブラジルに移住し、永住権を取得。南米各国でワールドカップやコパ・リベルタドーレスなど700試合以上を取材。2005年からはガンバ大阪を追いつつ、ブラジルにも足を運ぶ。著書に「ジャポネス・ガランチードー日系ブラジル人、王国での闘い」(サッカー小僧新書)などがあり、「ラストピース』(KADAKAWA)は2015年のサッカー本大賞で大賞と読者賞。近著は「反骨心――ガンバ大阪の育成哲学――」(三栄書房)。日本テレビではコパ・リベルタドーレスの解説やクラブW杯の取材コーディネートも担当。

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