Yahoo!ニュース

キャプテン翼の必殺技がブラジルで実現?。サンパウロFCのツインシュートが王国で話題に

下薗昌記記者/通訳者/ブラジルサッカー専門家
世界中のスーパースターも「キャプ翼」を知っている(写真:アフロスポーツ)

 日本のみならず世界中にファンを持つサッカー漫画「キャプテン翼」。数々の必殺技は、ややもすると現実離れした難易度を持つのは事実だが、その中でも最高難度の一つが大空翼と岬太郎が繰り出すツインシュート。9月25日に行われたブラジル全国選手権でサンパウロFCのパトリッキが決めたゴラッソがツインシュートだと話題になっている。

王国ブラジルで「キャプテン翼」は「スーペル・カンペォンス」

 高橋陽一さんが描いた「キャプテン翼」は、まだプロ化など夢のまた夢だった1980年代初頭に、日本にサッカーブームを巻き起こし、数々のサッカー少年に影響を与えた日本のサッカー史にも関係を持つ漫画である。

 他ならぬ筆者も「キャプ翼」ブームに乗っかって、サッカーの道に進んだ1人であるが、サッカー王国ブラジルでは「スーペル・カンペォンス(スーパーチャンピオンズ)」の題名でテレビ放映もされており、大空翼は「オリヴェル・ツバサ」の名で登場する。

 「キャプ翼」の魅力の一つは、数々の必殺技。物理学の法則なんて、知ったこっちゃないと言わんばかりのスーパープレーに挑戦したサッカー少年は少なくないだろう(筆者ももちろんその1人。沖縄の海でタイガーショットを編み出した日向小次郎の真似をして、高校時代に行った海で貴重なボールを失った経験を持つ)。

ツインシュートにはJリーガーも挑戦し、見事に成功

 2014年にはJリーグが「キャプテン翼」とコラボレーションし、必殺技に選手らが挑戦。カミソリシュートや反動蹴速迅砲などが見事に再現しているが、ツインシュートには当時セレッソ大阪に所属していた山口蛍選手(現ヴィッセル神戸)と扇原貴宏選手(同)が挑戦し、成功している。

 2017年にはイタリアのセリエDでツインシュートが実現したと話題になった。

 ファンフッラ対リミニの一戦でリミニの2選手はゴール前で同じタイミングで右足と左足を振りぬき、ゴールをゲット。

 余談だがイタリアで翼は「オリヴェル・ホーリー」、岬は「トム・ベッカー」の名で呼ばれている。

翼もプレーしたサンパウロFCのホームで、パトリッキがゴラッソ

 さて、サッカー王国で、話題になっているツインシュート(厳密にはツインシュート風)が実現したのは9月25日のブラジル全国選手権の一幕。

 奇しくもかつて翼がプロデビューを飾ったサンパウロFCのホーム、モルンビースタジアムが舞台だった。

 サンパウロFCはアヴァイーと対戦したが前半のアディショナルタイムにCKのこぼれ球からMFのパトリッキが左足でジャンピングボレー。同じタイミングで真横にいたアルゼンチン人FWのカレリも右足を振っていたことから、ゴール裏からはさながらツインシュートに見えたのだ。

 ブラジルメディアはもちろんのこと、ツイッターなどでも「パトリッキ・ツバサ」などとこのプレーが話題に。

 そして試合後のミックスゾーンでもブラジル人記者から「モルンビーでのオリヴェル・ツバサみたいなプレーだったね」とパトリッキに質問が飛んだ。

 「僕はアニメ好きなのでスーペル・カンペォンスは見ていたよ。漫画ではゴール前15メートルぐらいのところから、決めていたよね」とパトリッキ。

もちろんサンパウロFCの公式ツイッターでも「このプレーはどこかで見たことがあった」とキャプ翼のシーンを交えてパトリッキのゴラッソを紹介。「いいね」の数は16000を超えている。

 世代や人種を超えて愛される「キャプテン翼」の偉大さを改めて思い知ったゴラッソだった。

記者/通訳者/ブラジルサッカー専門家

1971年、大阪市生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)でポルトガル語を学ぶ。朝日新聞記者を経て、2002年にブラジルに移住し、永住権を取得。南米各国でワールドカップやコパ・リベルタドーレスなど700試合以上を取材。2005年からはガンバ大阪を追いつつ、ブラジルにも足を運ぶ。著書に「ジャポネス・ガランチードー日系ブラジル人、王国での闘い」(サッカー小僧新書)などがあり、「ラストピース』(KADAKAWA)は2015年のサッカー本大賞で大賞と読者賞。近著は「反骨心――ガンバ大阪の育成哲学――」(三栄書房)。日本テレビではコパ・リベルタドーレスの解説やクラブW杯の取材コーディネートも担当。

下薗昌記の最近の記事