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車いすラグビーのチャンピオン・池崎大輔が岩見沢で講演。「茶髪、メガネ、ひげを覚えておいて!」

佐々木延江国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表
福祉施設の文化祭で話す車いすラグビー池崎大輔 写真:PARAPHOTO/山下元気

 ラグビーW杯決勝戦の11月2日(土)、東京2020のマラソン・競歩の札幌開催決定の話題のさなか、北海道岩見沢市にある社会福祉法人「クピド・フェア」の施設で、パラスポーツを伝えるイベントが開催され、パラリンピック・車いすラグビーの世界チャンピオンチームのエース、池崎大輔が講演。多くの高齢や障害のある人たちと交流した。

 池崎は函館出身、手足の筋力がしだいに低下する病気をもち、高校時代を過ごした岩見沢高等養護学校で車いすバスケに出会ったのがパラリンピックへのチャレンジの始まりだった。「高校時代は年1冊しかノートを使わなかったのが自慢です!」と、勉強よりも身体を動かすことが好きなことをアピールした。

そして、より障害が重くなり、重度障害のスポーツである車いすラグビーに出会ったとき、夢が広がったという。

 「僕は車いすラグビーの夢を語り、ラグビーでご飯を食べていこうとした。努力する姿をみて、みんなが自分を成長させてくれた。失敗や挫折もあり、支えがあって(昨年の世界選手権で)金メダルをとれた。夢を持つには覚悟が必要だけど、金メダルが夢のゴールではない。僕は今41歳で、この先プレーを続けられなくなっても、障害の重い選手が日本で車いすラグビーで世界をめざす環境づくりをして、夢を行動に移すことができるよう世界で闘うつもりだ。僕らは、選手としての応援や支えがあって、メダルがとれるんです」と池崎は語った。

池崎のラグ車を試乗体験する若者 写真:PARAPHOTO/山下元気
池崎のラグ車を試乗体験する若者 写真:PARAPHOTO/山下元気

 また、先日東京で開催された車いすラグビーワールドチャレンジで使用した、現役バリバリの競技用車いすを使っての試乗体験では、車いすバスケットをやっていたという若い施設利用者も池崎のラグ車を体験した。

 利用者からの質問コーナーでは「スポーツのいいと思うところは?」「結婚しているの?」「W杯ラグビーの決勝があるけど、どう思う?」「ラグ車はいくらぐらいするの?」「どんなトレーニングをしているの?」「ラグ車のカスタマイズなど道具へのこだわりがあるのか?」など、幅広い利用者からの質問が続いた。

 一つ一つ興味を持って応えるなかで、ラグビーファミリーとしてのラグビーW杯と車いすラグビーの関わり、250万円もするという競技用車いすの値段や、溶接などでクピド・フェアの工場が協力していることなどが新たにわかった。

 また、リオパラリンピック前の合宿で手首を怪我したが、ボルトで固定する手術をして乗り切り銅メダルを勝ちとった経験から池崎は「競技での怪我というものは一時的なものだが、障害とは一生つき合うもの」と話し、興味津々のやりとりの中から、競技の醍醐味と障害の当事者同士ならではの理解を深める豊かな時間となった。

 「2020に向けて岩見沢でも練習やってますし、テレビでも僕を見て、車いすラグビー、知っているよ、茶髪、メガネ、ひげのあいつだろ!とぜひ僕を思い出してください」と池崎は語りかけ、車いすラグビーを知ってもらいたいという想いで会場を一つにした。

岩見沢地域のパラスポーツが結集した1日

 このイベントは同施設の文化祭の最終日に行われ、利用者が制作した絵画やオブジェなどが展示されるなか、IPC(国際パラリンピック委員会)とWOWOWの共同制作によるパラリンピック・ドキュメンタリーWHO I AMシリーズより車いすフェンシングの女王「ベアトリーチェ・ヴィオ」の物語が上映された。

池崎の講演会、WHO I AMの上映会に集まった福祉施設の利用者やスタッフ 写真:PARAPHOTO/山下元気
池崎の講演会、WHO I AMの上映会に集まった福祉施設の利用者やスタッフ 写真:PARAPHOTO/山下元気

 岩見沢には、車いすフェンシングの練習拠点もありイベントの企画を聞いた関係者が展示のための防具や剣などを持ち込んでくれるなど、地域のパラスポーツ関係者の連携もあり、映像の中で描かれたシーンと岩見沢の人々が繋がった。

パラフォト写真展は13日まで開催

 クピド・フェアが敷地内に経営するギャラリー・レストラン「アシリ・和來」には、パラフォト写真展「これがパラスポーツだ!」として、NPO法人国際障害者スポーツ写真連絡協議会(パラフォト)がセレクトした7人の写真家によるアテネパラリンピック(2004年)から10月の車いすラグビーワールドチャレンジまでのパラリンピック、パラスポーツを伝える写真40点が今月13日まで展示されている。入場無料。

国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表

パラスポーツを伝えるファンのメディア「パラフォト」(国際障害者スポーツ写真連絡協議会)代表。2000年シドニー大会から夏・冬のパラリンピックをNPOメディアのチームで取材。パラアスリートの感性や現地観戦・交流によるインスピレーションでパラスポーツの街づくりが進むことを願っている。

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