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チームで世界へ追いつけ!若手・男子に成長あり!ジャパンパラ水泳の3日間が閉幕(1)

佐々木延江国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表
100mバタフライ決勝前の萩原と久保(左から)写真・PARAPHOTO/秋冨哲生

 9月23日(土)ジャパンパラ水泳競技大会は、海外からの20名を含む約480名のスイマーにより、41の日本新記録・51の大会新記録が更新され閉幕した。

 7日間にわたるロンドン2019パラ水泳世界選手権を終えたばかりの代表選手たちは、疲れのある中でも良いタイムを維持し、若手選手たちの挑戦を受けとめた。東京2020へ向けた1年となるこの時期に、それぞれがどんな泳ぎをしたか。振り返る日がきたなら、それは決して悪くない泳ぎだったと思う。そんな3日間だったのではないだろうか。

久保大樹、萩原虎太郎が東京へのMQS突破!

 最終日、最終種目となる男子100mバタフライで久保大樹(KBSクボタ)は、ロンドン2019パラスイム世界選手権6位のMARI ALCARAZ Jose Antonio(スペイン)と競い、2位。1分2秒86の自己ベストを更新し、東京パラリンピックへのMQS(=3月の派遣標準記録=1分3秒41)を切った。

 昨年のインドネシア2018アジアパラ競技大会に出場した久保は、100mバタフライS9を自己ベストの1分5秒40で泳ぎアジアチャンピオンになった。さらに上を目指し3月の代表選考会で自己ベスト1分3秒74を出したが世界選手権の派遣標準を突破することができず落選した。ロンドンで世界選手権が行われているころ近畿大学のプールで柴谷拓耶コーチとともに猛特訓に励み、合宿でも自己ベストを更新した。

男子100mバタフライS9 決勝を泳ぐ久保大樹 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生
男子100mバタフライS9 決勝を泳ぐ久保大樹 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生

 「最終的には、1分切らないといけないけど、(来年)3月には1分0秒に限りなく近いタイムで泳ぎます」と、100mバタフライで1分2秒86の自己ベストを0.88秒更新した久保は、記者たちに語っていた。

 久保より一つ障害の重いS8の萩原虎太郎(セントラルスポーツ)も400mと100mの自由形S8の2種目でMQSを切った。

 100mバタフライで久保のライバルとなったスペインのJoseはこの日2レースを泳いだ。1本目は世界選手権で戦ったばかりの山田拓朗(NTTドコモ)のメインの50m自由形だった。

50m自由形S9決勝後の山田とMARI ALCARAZ Jose Antonio(ESP)Josegaが世界選手権より早い26秒36で1着、山田は26秒40で2着。 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生
50m自由形S9決勝後の山田とMARI ALCARAZ Jose Antonio(ESP)Josegaが世界選手権より早い26秒36で1着、山田は26秒40で2着。 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生

 「(山田拓朗と泳いだ)50m自由形に関しては、ロンドンの世界選手権よりもいいタイムを出せましたし、100mバタフライもとてもよく泳げて満足しています」とJoseは話していた。

山田、久保、萩原、窪田/4x100m 34ポイント リレー復活の可能性が見えた! 

 多くの若手が日本代表としてデビューした昨年ジャカルタでのアジアパラでは「4x100m 34ポイント メドレーリレー」で優勝、チームで世界を目指す可能性が出てきた。メンバーは、S9のベテラン山田拓朗(自由形)をはじめとする、久保大樹(バタフライ)とS8の萩原虎太郎(平泳ぎ)、そして、窪田幸太(背泳ぎ/日本体育大学)。窪田も今大会で100m背泳ぎ、50mと100m自由形の3種目で日本記録を更新する泳ぎを見せてくれ、「日本チームとしてリレーに出場したい。もしチームとして出場する際にはメンバーとして選ばれ、メドレーリレーの背泳ぎでチームを引っ張っていけるようにしたい」と話していた。

インドネシア2018アジアパラ競技大会・4x100m 34ポイントメドレーリレーで優勝した(左から)久保大樹、萩原虎太郎、窪田幸太、山田拓朗 写真・筆者撮影
インドネシア2018アジアパラ競技大会・4x100m 34ポイントメドレーリレーで優勝した(左から)久保大樹、萩原虎太郎、窪田幸太、山田拓朗 写真・筆者撮影

 「S9」クラスは人数が多い激戦区である。特に山田拓朗のメイン種目である50m自由形はタイムがすぐに更新されつねに一触即発の危機に直面している。長いあいだ一人ここに取り組んできた山田にとっても34ポイント リレーは仲間を増やし、ともに取り組める場として新たな希望となっていた。もちろん、それだけに34ポイント リレー種目もハイレベルな戦いとなることが予想されるが。

ニューフェイス「S10」

3日間の全てのレースで日本記録を更新した2人。男子50m自由形S10の表彰式。1位・南井瑛翔(比叡山高校)、2位・川原渓青(国士舘大学) 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生
3日間の全てのレースで日本記録を更新した2人。男子50m自由形S10の表彰式。1位・南井瑛翔(比叡山高校)、2位・川原渓青(国士舘大学) 写真・PARAPHOTO/秋冨哲生

 「S10」クラスに、南井瑛翔(比叡山高校)、川原渓青(国士舘大学)が競いつつ頭角を見せてきた。出場種目の全てで、ともに日本記録を更新した。34ポイント4×100mリレーには更に選択肢が増えて行きそうだ。

(編集協力:パラフォト ・丸山裕理、望月芳子)

<参考>

東京パラリンピック水泳の見どころ、種目・クラス分け

https://tokyo2020.org/jp/games/sport/paralympic/swimming/

国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表

パラスポーツを伝えるファンのメディア「パラフォト」(国際障害者スポーツ写真連絡協議会)代表。2000年シドニー大会から夏・冬のパラリンピックをNPOメディアのチームで取材。パラアスリートの感性や現地観戦・交流によるインスピレーションでパラスポーツの街づくりが進むことを願っている。

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