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ブラインド・スイマー4人含む9人が派遣標準突破。パラ水泳日本代表選考会が始まる!

佐々木延江国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表
50メートル自由形S13を泳ぐ辻内彩野。派遣標準を突破 写真・秋冨哲生

 2020東京パラリンピックを来年に控えた「パラ水泳春季記録会」が静岡県富士市水泳場で始まった。この大会は予選なしの一発勝負で今年の日本代表選手を決める。

 大会1日目(3月2日)は、9名のスイマー(木村敬一、富田宇宙、中島啓智、東海林大、成田真由美、石浦智美、辻内彩野、鈴木孝幸、山田拓朗)が12のレースで派遣標準記録(国際大会への派遣をする際の目安となる記録)を突破。うち4名がブラインドクラス。5つの日本記録も更新された。

200メートル個人メドレーS11を泳ぐ木村敬一 写真・秋富哲生
200メートル個人メドレーS11を泳ぐ木村敬一 写真・秋富哲生

 最初に「派遣標準記録」をクリアしたのはアメリカに練習拠点を移した視覚障害のリーダー・木村敬一(全盲/東京ガス)だった。

 男子200メートル個人メドレー(S11)で、木村を追う、富田宇宙(全盲/日体大大学院)が続いて派遣標準をクリア。二人はこの日それぞれの専門種目含め2つの派遣標準を突破した。

 「アメリカから帰国したばかりの木村くんといいレースがしたかった」という富田もまた、オリンピックを目指す日体大の仲間とともにメキシコ合宿での年末年始を過ごしていた。

 そのほか、50メートル自由形で視覚障害の石浦智美(全盲/伊藤忠丸紅鉄鋼)と、パラスイムに転向し1年の辻内彩野(弱視/OSSO南砂)が派遣標準を突破した。

 ブラインド女子の小野智華子(全盲/あいおいニッセイ)、男子の長野凌生(中央大学)なども健闘し、僅かな差で派遣標準を逃したが、ブラインド・スイマーが実力を見せてくれた。

 50メートル背泳ぎ(S5)では、48歳の成田真由美(横浜サクラ)が、細やかなコーチングにより日々進化し続け派遣標準を突破した。

50メートル背泳ぎS5を終えた成田真由美 写真・久下真以子
50メートル背泳ぎS5を終えた成田真由美 写真・久下真以子

 「コーチに感謝している」という成田。数々の苦楽の経験を積んだすえ進化を続ける。最近の練習方法で「ダブルパラシュート」により負荷をかけて長距離を泳ぐ練習をしている。

 知的障害クラスは、当日の雰囲気や緊張に影響されやすいデリケートな面をもつ。その中で、男子200メートル個人メドレー(S14)は、中島啓智(あいおいニッセイ)と東海林大(三菱商事)世界を分ける二人による熱戦が行われた。リオパラリンピック(2016年)への出場経験で差をつけた中島に、昨年のアジアパラ競技大会で優勝した東海林が今回は1位を譲る形となり、無事二人とも標準記録を突破した。

200メートル個人メドレーS14を終えた中島啓智(右)と東海林大(左) 写真・秋冨哲生
200メートル個人メドレーS14を終えた中島啓智(右)と東海林大(左) 写真・秋冨哲生

 昨年の日本代表は、8月にケアンズ(オーストラリア)でのパンパシフィックパラ水泳大会、10月にジャカルタ(インドネシア)でのアジアパラ競技大会で多くの結果と経験を重ねている。

 今大会で代表が決まれば、いよいよそのメンバーで2020東京に向けた取り組みを深めて行くが、実は今年クチン(マレーシア)で開催される予定の世界選手権が政治的事情により中止となった。代わりの開催地について、IPC(国際パラリンピック委員会)は明らかにしていない。その前の世界選手権(2017年)は開催地メキシコで大きな地震に見舞われ、開催が延期されたすえ日本選手団は出場を見合わせている。今年の世界選手権が無事に開催されるのかどうか、選手たちの前に先の見えない目標が横たわっている。

国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表

パラスポーツを伝えるファンのメディア「パラフォト」(国際障害者スポーツ写真連絡協議会)代表。2000年シドニー大会から夏・冬のパラリンピックをNPOメディアのチームで取材。パラアスリートの感性や現地観戦・交流によるインスピレーションでパラスポーツの街づくりが進むことを願っている。

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