生活困窮者支援の現場で何が起きているのか 年末年始を迎えて

大西連

早いもので2020年もあと数日となりました。この時期は1年を振り返ってどうだったのか、を考えるところですが、2020年は多くの方にとって真っ先に思うのは「コロナ」なのではないかと思います。

12月下旬に入っても感染者数は過去最多を更新しつつあり、先の見えない日々が続いています。

■深刻な生活困窮者の増加

感染の拡大とともに、経済も大きなダメージを受けています。

わざわざ例示するまでもないですが、東京商工リサーチの調べによれば、1-10月の累計で企業の倒産、休業・解散件数は50,448件に達し、2019年の同期間と比べて17%程増加していると言います。

また、厚労省の発表によれば、新型コロナウイルスに関連した解雇は、12月18日時点で累計で77,739人にのぼります。

業種別では、製造業が15,672人と最も多くなっているものの、飲食業10,935人、小売業10,384人、宿泊業9,605人と続きます。新型コロナウイルスによる不況の影響は、広く多くの産業に及んでいると言えるでしょう。

私はふだん、〈もやい〉という団体で生活困窮者支援をおこなっていますが、私たちの団体に寄せられる相談も、例年の1.5倍から2倍近くに増加しています。

■日夜届く相談

最初に、新型コロナウイルスの影響とみられる相談が寄せられたのは、思い返せば3月ごろだったと思います。

それこそ、大規模イベントの自粛要請が出された直後に、そういったイベントの設営や撤去・解体、警備等の仕事を日雇いや請負でしていた人からの相談が寄せられました。

総理による小中高校等の一斉休校の要請がおこなわれてからは、シングルマザーなどの子育て中の方からのSOSも多く届きました。

こういった事態を受け〈もやい〉では、新型コロナウイルスの影響による生活困窮者のさらなる増加が起こることを想定して、4月より緊急の相談体制をとり、通常の相談時間を拡大したり、オンラインでの相談を増やしたり、また、土曜日には毎週、新宿都庁下での食料品配布と相談会をおこなうようになりました。

土曜日の新宿都庁下での支援活動では、4月以降、食料品配布に訪れる方が150人を下回ることは一度もなく、こちらも例年の2倍近くの数字となっています。

私たちの相談活動を通じて、公的支援等につながって支援を必要としなくなる方が毎週のようにいますが、生活に困窮し、新たに相談会に訪れる方が後を絶たないこともあり、相談件数や人数が減らない状況が続いています。

すでに、「緊急体制」も9カ月に及びますが、「緊急体制」を解くことができずに2021年を迎えます。

■非正規など不安定な働き方をしていた人に大きなダメージが

相談に訪れる人の個別の状況はそれぞれではありますが、日雇い、週払いの仕事、派遣、契約社員、パート、アルバイトなど、元々正社員などで働いていたわけではなく、非正規など不安定な働き方をしていた方が圧倒的に多い、ということがあります。

また、請負やフリーランス、業務委託など、いわゆる個人事業主として働いていた方からの相談も多いです。

年代も20代、30代の方も多く、中高年の方からの相談もあります。いわゆる「稼働年齢層」の全般から相談がある印象です。

リーマンショック後(2008年秋以降)は、単身男性からの相談が圧倒的に多かったのが特徴的でしたが、今回は女性の相談も多く、非正規の方全般に多くの影響が及んでいることを示唆しています。

業種も、飲食店で働いていた、ホテルの仕事をしていた、日雇いで建築関係の仕事をしていた、など多岐にわたります。そして、いずれも月収20万円前後は稼いでいた、という方が多いように思います。

これまで、フルタイムで働いていて、自分一人分の生活費は何とかまかなえていた。そんなある意味「ふつう」の人が、景気の悪化とともに生活が苦しくなっている、そういった実情があります。

■自分がこうなると思ってもいなかった

相談に訪れる方の多くが、「はじめて相談会にきた」「今まで支援を利用したことがない」「仕事さえあれば何とかなるのに」と、話します。

ほんの数か月前までは、普通に働いて、決して裕福ではなかったかもしれないけれども、たまには友人とご飯を食べたり、旅行に行ったり。

非正規で稼ぎは多くはないなかで慎ましくも実直に日々を過ごしていた方が、急な失業や収入減で途方に暮れてしまっている。そんな状況がじわじわと拡がっています。

4月の緊急事態宣言中に、「自分がこうなると思ってもいなかった」と話していたのはまだ20代前半の若者でした。

■コロナの影響は平等ではない

新型コロナウイルスの影響により、日本全体で多くの人が、働き方や生活様式の変更を余儀なくされました。

いつまでこの生活が続くのか先が読めないなかで、心身のストレスなど、さまざまな負荷がかかっていることと思います。

こういった状況下で、失業や収入の減少に見舞われることの心労は、想像を絶するものがあります。

非正規で働いている、低所得である、頼れる家族がいない、など、元々、社会的に弱い立場にいる人や、支えを持たない、支えがうすい状況の人が、より大きなダメージを受けています。DVや虐待など、家庭に居場所がない人の状況も深刻です。

そして、そういった人たちへの支援は決して十分とは言えないのが実情です。

■多くの方が「貸付」を利用している

生活困窮者への公的支援としては「生活保護」などのさまざまな施策がありますが、コロナ禍で最も利用されているのは「貸付」の制度です。

緊急小口資金貸付と総合支援資金貸付は、ともに生活困窮者向けの貸付制度ですが、コロナ禍での特例措置としての要件緩和等もあり、多くの方が利用しています。

厚労省によれば、両特例貸付の新規申請件数は、3/25~12/19までで、全国での累計支給件数は1,406,499件にのぼり、累計支給決定額は5,434.1億円に達します。

東日本大震災がおこった2011年度が1年間で約7万件の支給件数であったことを考えるとこの数字の異常さがわかると思います。

4月~6月のこの「貸付」のデータ等については下記にまとめましたが、「貸付」の利用は緊急事態宣言が出された4月に急増し、12月に入っても1週間に14,000件ほどの新規申請がある状態が続いています。

コロナ禍で生活困窮者への家賃補助と現金貸付が急増:独自入手した厚生労働省データを用いた検証|

この「貸付」は多くの方を支えている、と言えますが、しかし、あくまで「貸付」です。

返還免除等の規定はありますが、基本的には生活再建した場合には「返済」することが求められます。

コロナによる不況が長引くなか、生活再建が進まない方も多くなるでしょうし、仮に生活再建したとしても、最長10年間、毎月返済をし続けるというのは中長期的に多くの方の生活を圧迫します。

■生活保護に抵抗を示す方も多い 生活保護は権利です

これらの「貸付」の利用件数が多いことの背景には、「生活保護」の申請や利用を望まない方が多いこともあると思います。

生活保護は「権利」であり、収入や資産が生活保護基準を下回れば利用できる制度です。

しかし、相談現場などでも、「生活保護はちょっと……」と申請を戸惑われる方も多いのが実情です。

制度自体の誤解や偏見もまだまだ多いですが、厚労省も「生活保護は権利です」と積極的に広報しています。

厚労省HPより

厚労省HP:生活保護を申請したい方へ

ためらわずに申請をしてもらいたいと思っています。

■年末年始は生活に困りやすい

また、年末年始は、もともと、日雇いや週払いなどの仕事が減少し、収入を失ってしまう人がうまれてしまう、という状況があります。

また、「閉庁」と言って、生活保護の申請受付や支援の給付等をおこなう公的窓口が閉じてしまい、公的な支援を利用しにくくなってしまう、ということがあります。

ですので、ホームレス支援等の現場では、「越年越冬」などと言って、連日、炊き出しや夜回り、相談会や宿泊場所の提供などの支援をおこなってきました。

特に今年は新型コロナウイルスの影響で生活が苦しくなった方が多くいらっしゃることもあり、そういった支援の必要性は高まっています。

もっとも、今年の年末年始に関しては、公的機関の窓口も「閉庁」せずに臨時的に窓口を開けるところもあると言われています。民間の相談会等の支援活動も都市部などでは例年より多くおこなわれる予定です。

私の所属する〈もやい〉でも、12月29日に事務所での相談会、1月2日には新宿都庁下にて食料品配布と相談会、それ以外の日には、オンラインのフォームでの相談受付をおこなう予定です。

必要な方へ宿泊費や生活費の援助、食料品や生活用品の配布等をおこないます。現在、クラウドファンディングもおこなっています。

【お知らせ】〈もやい〉年末年始の相談会(12/29~1/3)

【新型コロナ】住まいや収入を失った人を支えたい!年末年始の緊急支援プロジェクト - クラウドファンディングCAMPFIRE

年末年始の公的機関の臨時開所の状況や民間の取り組みについてまだ情報をまとめられていないのですが、一人でも多くの方に支援が届くようにと思っています。

■2021年はどんな1年になるのか

新型コロナウイルスの感染終息の見込みが立たないなか、今後の経済状況も不透明です。

景気が悪い状態が続くと、当然ながら、失業したり収入が減少した方の生活再建へのハードルは高くなります。

一人でも多くの方の生活を支えるための支援や施策がまだまだ必要です。

原状の各支援制度の申請をオンライン化するなど、より利用しやすくするための仕組みづくりや、有期の制度(住居確保給付金など)の無期化求職者支援制度の拡充など、セーフティネットを厚くしていくことも求められています。

2020年は、新型コロナウイルスの影響もあって、ご紹介したように、公的・民間の窓口ともに、生活困窮者からの相談が多く寄せられています。

しかし、2021年は、一人でも多くの方が支援につながったり、生活が安定するための、新しい「日常」を作っていかなければならないと思います。

以上